伊藤七段は1時間14分の考慮で、▲9二竜と9一にいた竜を引きました。残り時間は▲伊藤1時間13分、△藤井1時間49分です。これまで1時間越えの長考を伊藤七段が2回、藤井棋王は1回しましたが、残り時間が少なくなってきたので、そろそろペースが上がっていくと予想されます。
(紋蛇)
2024年2月
午後のおやつ
午後のおやつは伊藤七段が「フルーツ盛り合わせ、レーズンサンド、紅茶」、藤井棋王が「フルーツ盛り合わせ、レーズンサンド、アップルジュース」です。
レーズンサンドは「金沢ニューグランドホテル」の一押しのスイーツで、両対局者はスタッフに勧められて注文していました。おやつを選ぶ様子は、『顔合わせ会』の記事をご覧ください。
尾山神社(2)
尾山神社(1)
石川県金沢市は江戸時代に加賀藩の城下町として栄え、風情ある街並みを求めて海外からも観光客が訪れます。金沢城や兼六園、ひがし茶屋街だけでなく、現代アートを中心にした「金沢21世紀美術館」も人気スポットのひとつです。いまの旬はブリなどの海産物で、冬の味覚を求めて飲食店が多くの人でにぎわいます。1月1日に能登半島地震が起き、被害が比較的軽かった金沢市からも観光客が遠のきました。しかし、地震発生から2カ月ほど経ち、少しずつ人出が戻りつつあります。
今回は対局場の北國新聞会館に近い、尾山神社を散策しました。尾山神社は加賀藩祖・前田利家を祀る神社として、明治6年(1873年)に創建されました。金沢城公園や兼六園、繁華街の香林坊は徒歩圏内とあって、観光ルートのひとつになっています。
(尾山神社神門。1875年に建築された。当時は前例のない、和漢洋折衷が特徴である)
谷川浩司十七世名人の見解
控室に谷川浩司十七世名人が来訪しました。14時30分ごろ、ひとりで盤に向かって検討しています。
(谷川十七世名人が考えていた局面。やがて、△5五角が指された)
「少し前の△8六歩、そして▲9一飛成とするところでは、双方が分岐点を迎えていました。ほかの手も十分に考えられたところで、現在は攻め合いに進んでいます。先手が▲9一飛成ではなく▲2一飛成と桂を取るような展開だと、後手が△3一銀と受けていたでしょう。それに比べれば、本局はもっと激しい順です。
△5五角は攻防手で、▲8二竜△7二金に▲6四香といった攻めを消しながら、△8六歩のたたきを含みにしています。しかし、後手陣もスキができました。8筋から6筋までズラッと歩が並んだ形が、△8六歩と攻めの手を指したことで崩れて、逆に▲8五桂と打たれる筋が生じています。先手は▲8五桂や竜引きの王手をどう組み合わせて攻めるか。非常に難しく、伊藤七段も考えそうです」(谷川十七世名人)
(紋蛇)
攻め合いを見据えた△8六歩
図は昼食休憩を挟む長考で、△8六歩としたところ。相居飛車で味をつける手筋ながら、先手に歩切れを解消させるの決断の一着です。
△8六歩は寄せ合いになったときに効果を発揮する手で、▲同歩は△8七歩、▲同銀は△7六桂や△8八歩▲同玉△7六桂が生じます。伊藤七段は先の先を見据えて、先手玉の安全度を視野に入れながら対応したいところでしょう。歩を取らずに▲9一飛成もありそうなので、今度は伊藤七段が長考に沈みそうです。
(紋蛇)
対局再開
昼食休憩時の対局室
対局者の昼食
昼食休憩
12時、図の局面で藤井棋王が1時間23分使って、昼食休憩に入りました。消費時間は☗伊藤25分、☖藤井1時間51分(持ち時間は各4時間)。昼食は「加賀懐石弁当」です。対局は13時に再開されます。
(紋蛇)