2022年3月20日 (日)

感想戦後に渡辺棋王への囲み取材が行われました。

Dsc_9066 (10連覇の「10」を両手で作る。なお、撮影用のためにマスクを外しています)

Dsc_9080 (ガッツポーズ)


――10連覇の気持ちをお願いします。

渡辺 10連覇のチャンスはもうないと思うので、意識しているところでした。それが達成できたのはよかったです。

―― 永瀬王座とは昨年は王将戦で対戦しました。今シリーズ戦っての印象はいかがでしたか。

渡辺 昨年に続いてのタイトル戦でした。当時を踏襲してやっていました。序盤作戦の幅が広いですし、考えさせられることが多かったです。

―― 現在はAIを使った研究が進んでいると思いますが、序盤作戦という意味でシリーズはどのような印象でしたか。

渡辺 一局ごとに作戦は考えますが、棋王戦は序盤だけで決まらない将棋が多いので、そちらのほうに意識を置いてやろうと考えていました。

―― 3勝1敗でしたが、シリーズ全体としてはいかがでしたか。

渡辺 第1局を先勝できて、そのあとは理想的な番勝負の運びで進められたと思います。

―― 2021年度を戦い終えました。振り返っていかがでしょうか。

渡辺 いろいろありましたが、最後にこうして目標にしていた大きな結果を出せたので、少し休んで来年度に向かっていければと思います。

―― さっそく名人戦の防衛戦が始まります。

渡辺 年明けからタイトル戦が続いて、やはり疲れたところはあります。新年度まであまり時間はありませんが、ひと息つけてから次に向かいたいとは思います。

―― 新年度の目標はありますか。

渡辺 まずは名人戦からですが、そのあとはあまり考えていないですかね。名人戦の結果次第で過ごし方やスケジュールが変わるので、やってから考える感じです。

―― 気が早いですが、棋王戦は羽生善治九段の持つ12連覇が最高です。それについてはいかがでしょうか。

渡辺 それはあまり考えていませんでした。とりあえず大台に乗せたいと思っていました。
タイトル戦の二けた連覇はやったことが少ない記録なので、そこを意識していました。その先は考えていませんでした。

―― 3勝1敗で防衛を果たしました。その勝因をどういう風に考えていますか。

渡辺 番勝負全体でいえば、第1局で先勝できたので、そのあとのプラン立てをしやすくなったのはあります。一局ずつでいえば、いろいろありましたし、第3局はまずい負け方をしてしまいました。そこからうまく修正できたかなというところです。

―― 先月王将を失冠しましたが、今回棋王を防衛したことについてお聞かせください。

渡辺 ダブルタイトル戦の防衛戦で両方負けるとしんどいので、今日防衛できたのはいろんな意味でよかったですね。

―― 渡辺さんは竜王戦で10連覇をチャレンジして失敗しました。そこから10年して10連覇をできた理由をどのようにお考えでしょうか。

渡辺 五番勝負の短期決戦で大変なところは毎年ありましたが、ここ数年は3勝1敗で勝てています。フルセットではプレッシャーもかかって平常心で指すのはなかなか難しいです。第4局まででうまくとれていることが棋王戦ではうまくいっているのだと思います。

―― 前期棋王戦で防衛してタイトル獲得で歴代4位になったときに、獲得数の上3人(羽生善治九段、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人)とは差があるとおっしゃっていました。中原十六世名人は10連覇をしたことはありませんでした。そうした記録を達成したことについてお聞かせください。

渡辺 中原先生に上回る記録をなかなか持っていません。通算タイトル数を抜くことは難しいので、中原先生がしていないという意味でも、二けた連覇は価値があると思っていました。この記録は年齢的に今後チャンスはないので、今シリーズは意識していました。達成できてうれしく思います。

―― いままで渡辺先生の記録、27歳で逃した記録を30代で達成したことは、強くなったということでしょうか。

渡辺 強さは変わらないです。でも、同じのを10連覇は、その間にいいときも悪いときもありますし、戦術の変化もあります。そうしたものを対応することの難易度は高く、価値があると思います。

―― あと3年ほどで40代になります。40代で目指している記録はどこを予定していますか。

渡辺 考えていた達成できそうなものは、去年9連覇してから10連覇を意識していました。あとはタイトル戦に出ているうちは一つ一つという感じですね。

―― 郷田棋王から奪取して、そうそうたるメンバーに勝って10連覇。ひと言でうれしいとか安心したというレベルではないと思います。

渡辺 20代後半からはいい時期も悪い時期もあるので、いろんなことに対応できたことがいちばん価値としてあると思います。

Dsc_9090 (取材に応じる渡辺棋王)

本局の更新は以上となります。ご観戦くださりありがとうございました。すでに第48期の予選が進行中です。誰が挑戦者になるか、渡辺棋王の連覇記録が更新されるのか、興味の尽きない戦いにご注目ください。

(銀杏)

Dsc_8934 (終局直後の様子)

Dsc_8954 (渡辺棋王)

――序盤から早いペースで進みました。終盤は難しかったと思いますが、一局を振り返っていかがでしたか

渡辺 昼食休憩のときに長考になって、△1五角への対応がわからず、自信がないのかなと思っていました。

――作戦的には予定でしたか。

渡辺 予定でしたが、手の広い将棋になるので、そこから外れたときにどうなるか思っていました。

―― 優勢を意識されたのはどのあたりでしょうか。

渡辺 ▲5二銀と打って、王手竜取りをかけてよくなったと思いました。

――勝ちになったと思ったのはどのあたりでしょうか。

はっきり勝ちになったと思ったのはもう少しあとです。怖いところもありましたので。

――今シリーズは相居飛車戦の最新形が続きました。3勝1敗で防衛となった今シリーズを振り返っていかがでしょうか。

渡辺 やはり終盤まで大変な将棋が多かったですね。

――自己最多の棋戦10連覇を達成されました。

渡辺 もうチャレンジできないと思うので、それはよかったと思います。

――タイトル獲得数も通算30期に伸ばしました。それについてはいかがでしょうか。

渡辺 それはあまり考えていませんでした。10連覇のほうを強く意識していました。

Dsc_8947 (肩を落とす永瀬王座)

――本局ですが、終盤はチャンスがあったと思われますが振り返られていかがですか、

永瀬 一局通して、全体としては苦しいと思いました。難しくなったような気はしましたがチャンスといえるほどとは分かりませんでした。

――シリーズを振り返って。

永瀬 一局一局勉強になることが多かったです。結果はとても残念ですが、自分としては収穫のある対局だったと思います。

――2021年度を振り返っていかがですか。

永瀬 王座3連覇できたこと、棋王挑戦できたことはよかったですが、今期は負け数が多いのでもう少し結果を残したかったと思います。

――来月から新年度です。抱負をお願いいたします。

永瀬 この1年、気づかないことを気づけることは多かったので、それを生かして新年度はいい成績を残したいと思います。

(銀杏)

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渡辺明棋王に永瀬拓矢王座が挑戦する第47期棋王戦五番勝負第4局は、19時8分に115手で渡辺棋王の勝ちとなりました。消費時間はともに3時間59分。
この結果、五番勝負は3勝1敗で渡辺棋王が防衛を決めて、棋王10連覇を果たしました。また、渡辺棋王はタイトル獲得数の記録を計30期に伸ばしました。

(銀杏)

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図は95手目▲5二銀まで。渡辺棋王が再び強打を放ちました。鋭く強烈な攻めで、△5二同金は▲8四角が王手竜取り。△5二同玉は▲4三角△6三玉▲6四歩△7四玉▲6五角成と攻めが続きます。後手玉が6三にくると、▲6四歩で6九で眠っていた飛車が働いてくるのが永瀬王座としてはつらいところです。
図の▲5二銀は87手目▲2三金以上に急所をえぐっており、渡辺棋王が防衛に近づいているとみられています。

(銀杏)

栃木県といえば、いちご。大盤解説会の棋士は竹部女流四段の案内でいちごの食べくらべとしたそうです。
とちぎ将棋まつりに出演されていた北尾まどか女流二段から多くの画像をいただきました。ありがとうございました。
(銀杏)

Image_50436353001 (栃木県のいちごの品種)

Image_50459393 (竹部女流四段と広瀬八段)

Image_67191553 (どれから食べようか悩ましい。スカイベリーから食べたとのこと)

Image_67215873 (大盤解説会の出番もあるので、写真を撮ってしっかり確認)

Image_67233281_2 (いちごを食べつつも、検討を怠らない)

北尾まどか女流二段からさらに画像が届きました。

Image_504069001 (鈴木九段が出題した詰将棋の解説をする)

Image_50404865001 (控室では、広瀬八段と中村太七段が検討。▲2三金に△同玉▲1三角成△3二玉▲4四香△2五桂▲3三歩の変化を調べている)

Image_50438145001(こちらは▲2三金に△4一玉▲3三桂成△2四銀▲3二金△5二玉▲4二成桂△6一玉の変化手順だ。実戦も永瀬王座が△4一玉としたので、このように進みそうだ)

(銀杏)

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図は87手目▲2三金まで。渡辺棋王は42分の長考で金捨ての強打を放ちました。駒のタダ捨てはリスクの高い手なので、先の見通しが立たないと指せません。渡辺棋王の自信が指し手に表れているといえそうです。
△2三同玉に▲1三角成△3二玉▲4四香と再び後手に取られる駒を打つのが好手とみられています。▲4四香は後手玉を狭くして▲2三角からの詰めろ。△4四同銀なら▲5七馬と竜を素抜くことができます。永瀬王座は「長考の半分返し」で21分の考慮の末に△4一玉と逃げました。渡辺棋王としてはパンチが入った格好ですが、永瀬王座は5筋から7筋方面に逃げ越そうとしています。場合によっては7四の銀も受けに利いてきそうです。 (銀杏)

20220320h

Dsc_8368