2024年3月

2024年3月17日 (日)

感想戦後に記者会見がありました。
以上で今期五番勝負の中継を終わります。
ご観戦いただきましてありがとうございました。

Dsc_7409 (花束贈呈)

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――あらためまして棋王を防衛した現在のお気持ちは?

「今期の棋王戦は第1局の持将棋から始まって、本当にどの将棋も難しかったので、その中で結果を出すことができてうれしく思っています」

――タイトル戦の連続獲得記録が21となり、ご自身の記録を超えました。

「記録自体を意識していたわけではないですけれども、最近は特にタイトル戦の対局ではいいコンディションで臨めているのかなとは感じています」

――本局で今年度の対局が終了しました。4月から名人戦七番勝負が始まります。抱負をお願いします。

「私自身はこれで今年度内の対局が終わって、4月からの名人戦と叡王戦になるので、そちらに向けてもしっかり準備をしていきたいと思います」

――今年度は本局の勝利で勝率1位(46勝8敗、勝率0.852)が確定しました。

「そのことも意識はしていなかったのですけれども、年度で見ると私自身ではこれまででいちばん高い勝率ということになります。逆転勝ちという将棋も少なからずあったので幸運というところもあったのかなと思うのですけれども、自分としても充実感のある1年間だったのかなと思っております」

――日光市での対局は昨年、タイトルを奪い、今年は防衛しました。昨年との違いや重なる部分があれば教えてください。

「今年も昨年と同様に対局環境を整えていただいて、集中して対局することができたかなと感じています。前夜祭にも多くの方に来ていただき、盛り上がりを実感するところはありました。2年連続、栃木でタイトルの獲得と防衛という結果を出すことができて、私自身にとって印象深い対局場になったのかなと感じています」

――前夜祭では面白い将棋を見せたいと語っていました。本局は序盤から珍しい展開になりました。あらためて面白い将棋とはどんな内容ですか。また、ご自身では満足のいく内容ですか。

「公式戦では初めて指す形だったので、なかなか急所がつかみにくいところがあったのですが、そういった中でなんとかバランスを崩さずに指すことができたかなと思いますし、その点は手応えというか収穫のある将棋だったかなと感じております」

――同学年をはじめ若い世代で対局が盛り上がっていると思います。今後、どういった具合に盛り上げていきたいですか。

「伊藤七段とは竜王戦と棋王戦で続けてのタイトル戦になりました。今後も自分と同世代であったり自分よりも若い世代との対戦が増えていくと思うので、こちらもより力をつけてしっかり戦っていけるようにしたいと思っております」

Dsc_7509(豊島流村田システムの質問には笑顔になった)

――八冠を取ってなお自己最高勝率を挙げられました。さらに力を増しているという実感はありますか。

「今期は特に長い持ち時間の対局で、手ごたえのある内容のものもいくつか指すことができました。成長できた一年だったと思います」

――(藤井棋王が以前、後手番の指し方が課題と話していた点を踏まえて)本局の作戦は後手番対策のひとつでしょうか。

「後手番のときにどう戦うかという課題は最近、より顕著になっている印象は持っています。戦型の主導権は、基本的に先手にあります。本局は若干無理気味ではあるかもしれませんが、少し変化して戦ってみました。作戦自体がどうかというのは何ともいえませんが、指してみて手ごたえを感じるところもあったので、今後も序盤で自分から何か工夫するというのも選択肢のひとつとして考えていければと思います」

――名人戦の第1局(4月10日)まで23日間とかなり空きます。これはご自身にとってメリットでしょうか。それとも長すぎると感じますか。(後日追記:この数日後、叡王戦第1局が4月7日に開催と発表された)

「今年度もそれ以上に対局期間が空いたこともあったと思いますし、直接的なデメリットはないと思っています。ただ、公式戦以外で実戦の機会を確保したり、感覚が鈍らないように調整していく必要はあるのかなと思います」

――自己最高勝率(0.852)を達成した要因について考えられることはありますか。

「特に2日制のタイトル戦では、これまでよりも安定した内容の将棋を指すことができたと感じています。その点はこれまでと比較して手ごたえのあったところだと思っています」

――名人戦では豊島将之九段と戦います。意気込みをお願いします。

「名人戦に向けてしっかり準備したいと思います。豊島九段とは5回目のタイトル戦になります。豊島九段は最近、いろいろな戦型を指されている印象があるので、これまでとは違ったシリーズになるのかなと思います」

――本局の作戦についてうかがいます。村田顕弘六段に「本局の後手番の作戦は村田システムに似ていませんか」と聞いたところ、とても喜んでおられまして、横歩を取らせる形は「豊島流村田システムという形です」と話されていました。

「戦法の定義自体は、正直あまり詳しくは知らないのですけど、豊島九段や村田六段が指されていて、私自身も指すにあたって参考にしたところもありました」

――中原誠十六世名人の歴代1位記録(勝率0.8545、47勝8敗)についてはどのように感じられていますか。

「本当に何十年も更新されていない、偉大な記録です。その記録に近づけただけでも、できすぎな結果だと思っています。もし記録を更新しようとすると、いまより実力を一段二段と上げていかないといけないと思います。そこを意識して今後も取り組んでいきたいと思います」

(牛蒡)

Dsc_7210(藤井棋王は初防衛を達成。タイトル通算21期)

――△6二銀(8手目)から力戦形になったのは予定通りか。

藤井 作戦ではありましたが、本譜のように進むと1歩損の形なので、悪くならないようにできるかどうか、きわどいところだと思っていました。

――△1三角から△5五歩(48手目)のあたりは。

藤井 こちらの玉形が薄いので、激しい展開にならないようにして、厚みを主張できるような展開になるかどうかと考えていました。

――よくなったと感じた局面。

藤井 飛車と角銀を取り合ったあたりで(85手目▲7六同金)。いや、よくなっているかどうかはわからなかったですけど、こちらの玉が堅い形で攻めていけそうなので、展開としては割といい感じなのかなと思いました。

――本局全体の感想。

藤井 あまり公式戦では指したことのない形で、こちらが常に歩損ではあったので、どういうふうに進めればバランスを取れるか、苦心するところが多かったと思います。

――シリーズ全体の感想。

藤井 どの将棋も中盤が難しくてミスが出てしまったところもありました。そこは課題が残ったかなと思います。一方で前期の五番勝負は、早い段階で時間がなくなってしまうことが多かったのですが、今期はそういうことは比較的少なかった。そこは改善できたところかなと思います。持ち時間が各4時間の将棋だと時間配分も大事だと思うので意識しました。

――初防衛を決めた。

藤井 終わったばかりで実感はないのですが、大変なシリーズだったので防衛できたのはうれしく思っています。

――昨年の王座戦第2局からタイトル戦では14連勝している。これは歴代2位の記録。(1位は大山康晴十五世名人の17連勝)

藤井 五番勝負、七番勝負でセットと考えているので、その記録は意識していません。

――これで本年度の公式戦を終えた。

藤井 逆転勝ちが多く、課題が残る部分もありましたが、自分が思っていたよりもよい結果を残せたかなと思っています。

Dsc_7195(敗れた伊藤七段)

――序盤の形は予想していたか。

伊藤 予想はしていなくて、あまり考えたことのない展開になりました。棒銀から1歩得になったあとは、一手一手、手探りで指していました。

――控室では▲2六銀(47手目)に代えて▲3四銀も検討されていた。

伊藤 ▲3四銀には△3五銀から押さえ込まれる展開になると思って、あまり考えませんでした。ただ、▲2六銀も抵抗のある形で、不満のわかれなのかなと感じていました。

――本局全体について。

伊藤 こちらが歩得ではあるのですが、かなり陣形差があって、まとめるのに苦心した展開でした。中盤でバランスを崩してしまったのかなという印象です。

――シリーズ全体について。

伊藤 中盤でバランスを崩してしまう展開が多く、そこは前期の竜王戦七番勝負から課題ではあったのですが、なかなか修正できなかったのかなという印象です。

――本年度全体について。

伊藤 多くの経験をさせていただいた一年でしたが、力不足も痛感しました。

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(牛蒡)

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▲伊藤匠-△藤井聡戦は114手で藤井棋王が勝ちました。終局時刻は19時7分。消費時間は▲伊藤3時間59分、△藤井3時間55分。勝った藤井棋王は3勝0敗1持将棋で棋王初防衛を果たすとともに、タイトル戦の連勝記録を自己記録更新となる21に伸ばしました。

(琵琶)

240317_081s▲7四と(1図)に角を逃げると(どこに逃げても)▲6四と△同角▲7二飛成がありました。そこで藤井棋王は図から△6五銀と踏み込みます。以下▲6四と△7六銀▲同金に△7一飛(2図)。先手の歩切れを突いており、依然として後手優勢とみられています。

240317_086sしかし、伊藤七段も勝負手を放ちました。2図で▲7四と!のタダ捨てです。
このと金を取るべきか、取らざるべきか。藤井棋王は残り32分。最後の難所かもしれません。

Dsc_6871(初防衛を目指す藤井棋王)

(牛蒡)

240317_071後手が中盤の難所を乗り越え、視界が開けてきました。1図で△7七桂成が好判断。以下▲8四歩には△7六歩で攻めがつながります。後手は飛車を渡しても矢倉の堅陣で耐えられます。実戦は▲7七同金△8五飛▲8六歩△8一飛と進んで2図。

240317_0762図で▲7四とや▲7六飛は△4二角で後手よしの評判です。たとえば▲7四と△4二角▲6六飛は△7一飛で先手は歩切れが痛く(歩があれば▲7三歩で何事もない)、以下▲4六桂△6五桂は後手の攻め合い勝ちが濃厚です。2図で「先手の指し手が難しい」といわれています。2八角を押さえ込まれている点も先手苦戦の理由のひとつです。

Dsc_6826(2図で手を止めた伊藤七段。苦しい情勢とみられている)

(牛蒡)

240317_063少し前までは△6四角が後手の狙い筋でした。後手のほうが手持ちの角を有効に使えそうだったからです。しかし、伊藤七段が7筋で動きを見せたことで、にわかに状況が変化しました。図から△6四角▲同角△同歩は先手の手番。▲7三歩成△同桂▲7四歩を絡めて、先手が攻めていけそうです。後手としては、もはや△6四角は指しづらく、△5五歩が予想されています。

ただ、△5五歩だけで事が収まるものでもなく、その後も難しそうです。「一手一手に分岐があり、間違いは許されない。中盤の難所です」と広瀬九段。藤井棋王は長考に入りました。伊藤七段は残り49分。藤井棋王は1時間28分を残していましたが、この長考で残り1時間を切りそうです。

Dsc_7175_2(広瀬九段が大盤で解説中)

Dsc_7176(聞き手は北尾女流二段)

(牛蒡)

現地では指導対局も続いています。

Dsc_7151(鈴木九段は「いいね、その手は最高!」とほめて指導)

Dsc_7123(佐々木勇八段は攻めることの大切さを伝えていた)

Dsc_7115(小高女流初段は子どもに飛車落ち定跡を伝授)

(牛蒡)

240317_059控室では棋士数人が継ぎ盤を囲み、図の局面を検討していました。後手持ちの声が多かったように思います。

「先手は▲8七歩を打たずに▲7九玉(図)と頑張りました。ということは(1)△6四角には▲同角△同歩▲8三歩△同飛▲7二角△8二飛▲6一角成のように対応するのだろうと思います。後手としてもリスクのある順です。危ないと思えば(2)△3一玉も有力です」(広瀬九段)

広瀬九段は△3一玉が第1候補と話していました。

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Dsc_6974(継ぎ盤の前に片上七段、奥に鈴木九段)

Dsc_6996(長谷部五段が駒を動かす。奥に広瀬九段)

(牛蒡)