終局直後
終局後に主催者インタビューがありました。
(第2局に持ち込んだ藤井聡太竜王)
――△2六歩(36手目)に長考して▲6六歩としたあたりはどうでしたか。
藤井 △2六歩は気づいていませんでした。次に△8八角成▲同銀△3三桂▲2六飛△4四角とされると厳しいです。(△2六歩を)打たれてみると思わしい対応がなく、本譜ではあまり自信がないのかなと思ってやっていました。
――終盤はいかがでしたか。
藤井 ▲5五同玉(71手目)は不安定な形で、どうなっているか、わからないところもあったのですが、△5八馬に▲5三桂不成が王手で入るので、何とかしのいでいてくれればと考えていました。
――本局全体の感想。
藤井 こちらが局面を収められるかどうかという展開でしたが、うまく動かれてしまい、あまり自信のない局面が多かった気がします。(勝ちになったと思った局面を問われて)▲6四玉から▲6三歩(75手目)と打って、上部に逃げ出す形が見えてきたのかなと思いました。
――第2局に向けて。
藤井 また集中して対局に臨めればと思います。
(敗れた佐藤天彦九段)
――ポイントはどのあたりだったでしょうか。
佐藤 先に攻勢をかけたのはこちらでした。▲6六歩(37手目)に攻めを継続していかなければいけない気がするのですが具体案がわからず、本譜は飛車を引かされて逆に守勢に陥りました。それで難しいところもあればと思ったのですが、結果的には押し切られてしまった気がします。▲6六歩に攻勢を継続できなかったことが形勢悪化につながった気がします。
――第2局に向けて。
佐藤 今日は残念な結果でした。もちろん結果は求めていきたいのですが、藤井さんともう一局指せることもモチベーションにしながら一生懸命たたかっていけたらなと思います。
(牛蒡)
藤井竜王勝利
この局面で佐藤九段が投了しました。終局時刻は19時10分。消費時間は▲藤井3時間43分、△佐藤3時間59分。渡辺明棋王への挑戦権の行方は、来週27日(火)に東京・将棋会館で行われる挑戦者決定二番勝負第2局で決まることになりました。
(睡蓮)
恐るべき玉さばき
1図で▲5五同馬かと思いきや、藤井玉は▲5五同玉と前進しました。△5八馬(▲同金は△6五金で詰み)には▲5三桂不成△同銀▲5八金とするようです。4五が空くので△6五金では詰まなくなります。
これだけでも驚きのしのぎですが、▲5五同玉以下、△7八馬に▲6四玉(2図)が実戦の進行。どうやら藤井竜王は自玉を土台にして敵玉を寄せるつもり。恐ろしい発想です。
(牛蒡)
正確な見切り
図の局面、先手が耐えていそうです。59手目▲5五角が好手でした。△6六歩や△6四飛に備えています。
上図から△8七馬▲同銀△同飛成▲5八玉△6七歩▲同金△6九銀▲同玉△6七竜▲6八歩△7八金▲5九玉△6八金▲4九玉△6五桂は▲5六銀(参考図)がピッタリ。以下△7八竜や△8七竜は▲9六角の王手竜取りがあります。
これ以外にも後手の攻め筋はありますが、先手玉がつかまる順は発見されていません。危なそうな形でも藤井竜王の見切りは正確でした。
(牛蒡)
先手も怖い局面だが
残り1時間を切る
藤井竜王の選択
長考で決断
意表の手筋
先ほどの記事(リンク)から▲4六歩△2六歩と進みました。▲4六歩は2五飛型を生かした手で、次に▲4七銀と組むつもりです。2六飛型で▲4六歩を指すと△8八角成▲同銀△4四角がありました。これは納得の手です。
△2六歩には意表を突かれます。一般的に歩の手筋とは、飛車の前に打つものがほとんどです。たとえば2九飛型に△2八歩▲同飛として3九に隙を作ったり、同じく2九飛型に△2六歩として飛車を止めつつ、▲同飛なら角交換から△4四角を狙ったりといった具合です。それとは違い、本譜は飛車の背後に打っています。もし先手の飛車が3五にいれば、▲2五飛と歩の裏側に回り込みたくなるようなところ。新しい感覚の手筋といえます。
後手の狙いは△8八角成▲同銀△2八角でしょうか。また、▲2六同歩なら角交換から△4四角です。どこかで△2七歩成▲同銀と形を乱すこともできそうです。関係者控室では、△2八角や△4四角を消す意味で▲6六歩が候補に挙げられています。角交換を封じられてから▲2六飛と歩を取られてはいけないので、後手は何らかの手段で動いていくでしょう。先手はその順も読まなければいけません。