2012年1月 6日 (金)

第1局 2月5日(日)新潟県新潟市「新潟グランドホテル」
第2局 2月25日(土)石川県金沢市「北國新聞会館」
第3局 3月4日(日)静岡県焼津市「焼津グランドホテル」
第4局 3月17日(土)栃木県宇都宮市「宇都宮グランドホテル」
第5局 3月30日(金)大阪府大阪市「関西将棋会館」

形勢が後手に傾いてからは指し手が速く進み、最後は慌ただしい終局になった。広瀬七段が投了したとわかると、カメラを携えた報道陣が対局室へと向かった。

166

180
―― 14年ぶりに棋王への挑戦権を得られましたが、きょうの一局を振り返っていかがでしたか。
郷田 序盤から難しい将棋でした。
―― 途中で長考された場面がありましたが。
郷田 どう指せばいいか、方針がちょっとわからなかったですね。
―― 優勢を意識された局面は。
郷田 飛車を成ったところはよくなったと思いました。

209
―― 残念な結果になってしまいましたが、きょうの対局はいかがでしたか。
広瀬 未知の局面になって、方針がわからなくなってしまって……。本譜と代わる手もわからなかったので。歩が足りなかったですね。ずっと歩がなくて。ちょっとずつ無理をしていたかな、と思います。
―― 最後のところはどうでしたか。
広瀬 もうちょっといい粘り方があったかもしれません。たたいた(▲5三歩)のは軽率でしたかね。(後手の)と金が大きかったですね。

191

(文)

20120106_5918時10分頃、広瀬七段は▲4五歩(図)と動く。以下△4五同歩▲5二歩成△同金上▲7三桂成△同桂▲4四歩△7七と(下図)までパタパタと進んだ。先手は歩切れで手が作りにくいのが何よりの泣きどころ。手順中の▲7三桂成はその歩を手に入れるための非常手段だ。


20120106_66▲4四歩そのものは厳しい攻めなのだが、やはり歩切れであることが響いている。左図では先手に歩さえあれば、▲4三歩成△同金右▲4四歩の攻めが厳しく、また▲8四歩で飛車先を止めることもできる。しかし駒台にはその歩がない。形勢は後手に傾いてきたようだ。


(文)

20120106_54図は郷田九段が△4二金寄とたたきをかわした局面。ここから▲7五銀△同角▲同金△8七歩成(下図)と進んだ。持ち時間が少なくなってきていることもあり、スローペースだった進行が速くなってきている。先手は角銀交換の駒得になったが、9六の角の働きがいまひとつ。後手のと金攻めはゆっくりだが確実で、ここでうまい手がないと苦しくなりそうだ。


20120106_58検討陣の話では、「▲9六角の時点では先手が指せそうに見えたが、△8四飛~△8二飛と指されて動きにくくなった」とのこと。左図では次の△7七と~△8八飛成を見せられているので、先手は動かなければいけない。しかしうまい手段がすぐには見つからないようだ。現状の評価は「後手持ち」とされている。広瀬七段はここで時間を使っている。時折首をかしげる仕草がカメラに映る。


164
(検討中の中村太地五段=左)

(文)

20120106_49図は17時20分頃の局面。広瀬七段は▲9六角と打ち、△8七歩成を受けつつ飛車に狙いをつけた。先手の駒が前進し、後手の飛角に迫っている。駒の活用度では先手がまさるが、それがそのまま形勢に結びつくかどうかは難しいところ。現局面ではどちらに形勢が傾いているとも言えないようだ。


162
(中村女流二段=左、本田小百合女流二段=右)

(文)

20120106_45広瀬七段は▲7四歩(図)と突き捨てを入れ、以下△7四同飛▲7七金と進んだ。わざと金当たりにさせて、金を押し上げて飛車を圧迫する、という順だ。徐々に局面がほぐれてきたこともあり、検討が活発になってきている。控室には棋士の数が増えてにぎやかになってきた。継ぎ盤には寄せ合いの激しい変化が現れる場面も。


156

158
(森けい二九段=左、宮田敦史六段=右)

159
(藤田綾女流初段)

160
(伊藤四段=左、上野裕和五段=右)

161

(文)

今度は広瀬七段が考慮に沈んでいる。控室には中村真梨花女流二段、伊藤四段、先崎学八段が姿を見せ、継ぎ盤を囲んでいる。現状は指し手が難しく見通しの立てにくい局面なのだろう、「1手も見えない」というぼやきが聞こえてきた。一手一手が重い時間帯だ。この一局の勝敗がタイトル挑戦の明暗を分けるだけあって、対局者にかかる重圧も大きいはず。

154
(中村女流二段。伊藤四段と継ぎ盤を挟む)

155
(先崎八段が検討の様子を眺める)

(文)

20120106_4415時40分頃、郷田九段の手が動いた。1時間53分の長考で、じっと△8四飛(図)と飛車の位置を変えた。▲8七歩や▲7七角の当たりを未然に避ける効果はあるが、それよりは手を渡した様子見の意味合いが強いだろうか。注目は広瀬七段の次の手で、▲4五歩を決行すれば本格的な戦いになりそうだ。


(文)