2015年2月

2015年2月21日 (土)

Dsc_2879 (主催者挨拶 砂塚隆広 北國新聞社常務取締役 )

毎年ここで前夜祭のごあいさつをさせていただいておりますが、今年は例年にもまして出席者が多いように思います。新幹線開業まで1カ月を切りまして、来月の20日から4日間、「平成中村座」という中村勘九郎・七之助兄弟の歌舞伎を開催いたします。これが私どもの今年の最初の柱だと思っていましたら、実は今日が最初の柱だったなと改めて思っております。当社の社長とも「素晴らしい顔ぶれで役者がそろったね」という話をして会場にまいりました。
これは例年のことですが、渡辺棋王に「前夜というのは緊張しませんか」とうかがうと「いや、平常とあまり変わらないですけど」とおっしゃるんですね。今から55年前、昭和35年3月、栃若時代という大相撲の時代がありました。栃錦と若乃花が全勝で千秋楽をぶつかるということがありまして、若乃花が勝ちました。私はご本人にインタビューしたことがありまして、「全勝優勝をかけた前夜はどのような心境でしたか。新聞などを読みますと『平常心だ』と書かれていることが多いですが本当ですか」と聞きましたところ、「いや、実はなかなか寝れなくて、前夜は映画館に行った。しばらくして館内で目が慣れてきたら、前に相撲取りの後ろ姿が見えた。よく見たら明日の対戦相手の栃錦だった。あいつも寝れないんだなと思った。新聞に書いてあることと本心というのは、微妙に違っていたんじゃないですか」というお話をされました。ただ、今、お二人の表情を見ていますと、やはり平常心なのかなとも思っております。

明日はいよいよ第2局が始まります。私どもの新聞には「金沢で第2局 決断の渡辺か 粘りの羽生か」とあります。これはひっくり返しても当てはまるのではないかと思います。棋史刻む名勝負ということで、書き手も興奮しながら書いたような気がします。

明日は13時半から北國新聞会館の20階で大盤解説があります。明後日はちびっ子たちを対象にいたしまして「北陸ジュニア棋王戦」という大会を開きます。こちらも例年以上の参加者に来ていただけるのではないかと思っております。

最後になりましたが、棋王戦第2局の開催にあたりまして、日本将棋連盟ならびに石川県支部連合会のみなさま、関係者のみなさまには大変お世話になりました。本日はようこそお越しいただきました。ありがとうございました。

Dsc_2889 (主催者挨拶 島朗 日本将棋連盟常務理事)

本日はお忙しい中、かくも多数のみなさまにお集まりいただきまして、本当に感謝申し上げます。この歴史ある棋王戦を毎年のように開催いただいております北國新聞社のみなさま、また、地元の方々のご協力のおかげで、毎年素晴らしい勝負が展開されています。ファンのみなさまにも喜んでいただいているものと思います。

渡辺さんと羽生さんの対戦は、将棋ファンが今いちばん見たいカードだと思います。将棋界ではどの時代も若者が強いといわれるのですが、私の棋士生活を振り返ってみても、20代の棋士がこれだけ大きな壁を持つ時代というのはなかったと思います。この二人が棋王戦で戦うのは本当にうれしく、明日の対局を興味深く思っております。熱戦を展開していただけると思います。みなさまも明日の対局を楽しみにしてください。

また、こちらでは北陸ジュニア棋王戦を毎年開催していただいておりまして、本当にうれしく思っております。私は棋士のなかでいちばん地方に行っている棋士だと思いますが、どこに行っても子どもの将棋ファンが増えていると感じます。これは将棋文化を高めようという地元のみなさま、そして北國新聞社様のご理解があってのことだと思います。将棋大会の準備・運営は、日本将棋連盟や棋士の力ではなく、地元のみなさまの活動が大きいと思っています。先ほど砂塚常務のお話にもありましたが、石川県支部連合会のみなさまに心より感謝申し上げます。子どもたちが将棋を指すのは強くなりたいからだと思いますが、保護者のみなさまにとっては、将棋に付随する礼儀、あるいは日本が保ち続けてきた美しいもの、それを子どもたちに伝えたいという思いからではないでしょうか。渡辺さんと羽生さんの対局を見ていただいて、内容だけでなく所作や振る舞いから子どもたちが何かを感じてくれる、そのような棋王戦・北陸ジュニア棋王戦になることを願っております。本日はありがとうございました。

Dsc_2902 (乾杯の音頭は、田谷陽司 北陸放送事業担当局長)

(写真=紋蛇、書き起こし=牛蒡)

(紋蛇)

2015年2月20日 (金)

17時前、対局場である北國新聞会館で検分が行われました。例年使用しているため、温度や照明に問題はありませんでした。

Dsc_2764_3 (駒は3種類の盛上駒が用意された)

Dsc_2825

(宮松影水作。巻菱湖書)

Dsc_2828 (平田雅峰作。書体は水無瀬書)

Dsc_2834_2 (吉岡由進作。淇洲書)

Dsc_2776 (どれが好みに合うか、実際に並べて確かめてみる)

Dsc_2777

Dsc_2779

対局者は「どれでもいいです」と答えたため、石田和九段が選びました。選んだのは、吉岡由進作の盛上駒。「盤との色合い、駒の大きさがちょうど良いから」とのことでした。

Dsc_2839 (駒袋には風神と雷神)

Dsc_2831

(紋蛇)

Dsc_2728 (関係者一行は宿泊先の金沢ニューグランドホテルに到着。関西組もホテルで合流した)

Dsc_2730 (連絡事項を伝えられたあとに出てきたのは、ケーキ)

Dsc_2732 (今日のおやつ……ではなく、明日に注文するものを対局者が選ぶ。いわゆる、おやつの検分である。出されたスイーツは、すべて金沢ニューグランドホテルのカフェレストラン 「トレド」で作られた)

Dsc_2741(新しいプリンの登場に羽生名人はオーダー変更)

Dsc_2747 (渡辺棋王も選び直した)

Dsc_2749 (こちらが出されたおやつのケーキ)

Dsc_2752

Dsc_2754 (プリンは2種類。右はかぼちゃのプリン)

(紋蛇)

第40期棋王戦五番勝負第2局は、2月21日(土)に石川県金沢市「北國新聞会館」で行われます。立会人は石田和雄九段、記録係は西山晴大初段(中田功七段門下)です。

第1局は渡辺明棋王が制しました。第2局は羽生善治名人の先手番です。渡辺棋王が連勝で防衛に王手をかけるのか、それとも羽生名人がタイに持ち込むのか。注目の一番は朝9時に開始されます。

本局は棋譜コメントを牛蒡、中継ブログを紋蛇が担当いたします。よろしくお願いいたします。

Dsc_2699 (対局者・関東の関係者は羽田空港から小松空港を目指した)

Dsc_2727 (長野県上空。北上するにつれて雪景色が増えていく)

(紋蛇)

2015年2月11日 (水)

Img_2070

松尾 両対局者、お疲れさまでした。まず感想をお聞かせいただきたいと思います。まずは渡辺棋王から、本局のだいたいの流れとか、感想とか。
渡辺 そうですね。中盤の手がとにかく難しい将棋だったんですけどね。飛車が行ったり来たりしている辺りは、直接的にいっちゃうとすぐ負けになっちゃいそうだったので、すぐ崩れない手を指していたんですけども。わかんないことが多い将棋でしたね。▲6八玉(63手目)とかも近づいているような感じでしたしね。
松尾 羽生名人はいかがでしたか。
羽生 ちょっと仕掛けていって、成果が出ないまま収まってしまったので、ちょっとずつ苦しい展開かなと思っていましたね。端詰められて受けるのでは何をやっているのかよくわからないんで。そのあとは確かにちょっと、形勢もそうですし何をやっていいかよくわからない将棋でしたね。
松尾 大内九段は近くでご覧になっていかがでしたか。
大内 近くで拝見したり、控室でみんなと研究したりしていたんですけど、我々の力量不足なのかもしれませんけど、控室では羽生先生のが少し優勢なんじゃないかという声が高かったですよね。その変化はどこでしたかね、羽生先生が△3四銀と上がられた手で……。
松尾 この場面ですかね。

20150211h_2

大内 この場面です。ここで△5四歩と打つと相当面白いのではないかという下馬評だったんですが。羽生先生いかがでしょうか。
羽生 あ、でもこれ銀引かれて……。4六に。
大内 桂打つんだったかな。角取りに。
羽生 あっ、そっちですか。

(上図から△5四歩以下、▲4六銀△6四桂▲4五角△4七馬▲3五銀△3八歩成▲3三歩で難しいという結論に)

羽生 でも△5四歩のほうがよかったような気がします。△3四銀は▲7六桂打たれてはっきり悪いような気がしたので。ただ、銀を引かれたときに桂を打ってもあまり成果がないんじゃないかと思ってしまったんですけど、この順をやるしかなかったですかね。そんなに自信があるわけではないですが。こうやって飛車が入れば詰む形にしておいて、というほうが実戦的には面白かったですか。

Img_2092

Img_2094

松尾 あと解説会では△5四歩ではなくて△2七桂ではどうかということをやっていたんですが。これは変ですか。

20150211k

羽生 これは▲3三歩だと。
松尾 あ、▲3三歩は全然やっていませんでした。
羽生 飛車と金両方取れればいいですけど(笑)、さすがに取らせてくれないと思いました。

(参考図以下、▲3三歩△同金▲2三成香△1九香成▲3三成香△3九桂成▲7八玉で後手大変)

羽生 これは▲3三歩が入っちゃうとさすがに。
渡辺 そうですね。これ(成香)がここ(二段目)だと全然違うんですけど。寄せにこういう手(▲4四桂)もあるので。このタイミングでの桂打ちは読んでなかったです。
松尾 では△5四歩と打ってどうかということでしたか。
羽生 まあ本譜よりはましという程度で、あまりいいとは思わなかったです。でも確かに打ったほうがよかったような気がします。やっぱり真ん中に銀がいるのは大きいので。

Img_2097

(文)