(主催者挨拶 砂塚隆広 北國新聞社常務取締役 )
毎年ここで前夜祭のごあいさつをさせていただいておりますが、今年は例年にもまして出席者が多いように思います。新幹線開業まで1カ月を切りまして、来月の20日から4日間、「平成中村座」という中村勘九郎・七之助兄弟の歌舞伎を開催いたします。これが私どもの今年の最初の柱だと思っていましたら、実は今日が最初の柱だったなと改めて思っております。当社の社長とも「素晴らしい顔ぶれで役者がそろったね」という話をして会場にまいりました。
これは例年のことですが、渡辺棋王に「前夜というのは緊張しませんか」とうかがうと「いや、平常とあまり変わらないですけど」とおっしゃるんですね。今から55年前、昭和35年3月、栃若時代という大相撲の時代がありました。栃錦と若乃花が全勝で千秋楽をぶつかるということがありまして、若乃花が勝ちました。私はご本人にインタビューしたことがありまして、「全勝優勝をかけた前夜はどのような心境でしたか。新聞などを読みますと『平常心だ』と書かれていることが多いですが本当ですか」と聞きましたところ、「いや、実はなかなか寝れなくて、前夜は映画館に行った。しばらくして館内で目が慣れてきたら、前に相撲取りの後ろ姿が見えた。よく見たら明日の対戦相手の栃錦だった。あいつも寝れないんだなと思った。新聞に書いてあることと本心というのは、微妙に違っていたんじゃないですか」というお話をされました。ただ、今、お二人の表情を見ていますと、やはり平常心なのかなとも思っております。
明日はいよいよ第2局が始まります。私どもの新聞には「金沢で第2局 決断の渡辺か 粘りの羽生か」とあります。これはひっくり返しても当てはまるのではないかと思います。棋史刻む名勝負ということで、書き手も興奮しながら書いたような気がします。
明日は13時半から北國新聞会館の20階で大盤解説があります。明後日はちびっ子たちを対象にいたしまして「北陸ジュニア棋王戦」という大会を開きます。こちらも例年以上の参加者に来ていただけるのではないかと思っております。
最後になりましたが、棋王戦第2局の開催にあたりまして、日本将棋連盟ならびに石川県支部連合会のみなさま、関係者のみなさまには大変お世話になりました。本日はようこそお越しいただきました。ありがとうございました。
(主催者挨拶 島朗 日本将棋連盟常務理事)
本日はお忙しい中、かくも多数のみなさまにお集まりいただきまして、本当に感謝申し上げます。この歴史ある棋王戦を毎年のように開催いただいております北國新聞社のみなさま、また、地元の方々のご協力のおかげで、毎年素晴らしい勝負が展開されています。ファンのみなさまにも喜んでいただいているものと思います。
渡辺さんと羽生さんの対戦は、将棋ファンが今いちばん見たいカードだと思います。将棋界ではどの時代も若者が強いといわれるのですが、私の棋士生活を振り返ってみても、20代の棋士がこれだけ大きな壁を持つ時代というのはなかったと思います。この二人が棋王戦で戦うのは本当にうれしく、明日の対局を興味深く思っております。熱戦を展開していただけると思います。みなさまも明日の対局を楽しみにしてください。
また、こちらでは北陸ジュニア棋王戦を毎年開催していただいておりまして、本当にうれしく思っております。私は棋士のなかでいちばん地方に行っている棋士だと思いますが、どこに行っても子どもの将棋ファンが増えていると感じます。これは将棋文化を高めようという地元のみなさま、そして北國新聞社様のご理解があってのことだと思います。将棋大会の準備・運営は、日本将棋連盟や棋士の力ではなく、地元のみなさまの活動が大きいと思っています。先ほど砂塚常務のお話にもありましたが、石川県支部連合会のみなさまに心より感謝申し上げます。子どもたちが将棋を指すのは強くなりたいからだと思いますが、保護者のみなさまにとっては、将棋に付随する礼儀、あるいは日本が保ち続けてきた美しいもの、それを子どもたちに伝えたいという思いからではないでしょうか。渡辺さんと羽生さんの対局を見ていただいて、内容だけでなく所作や振る舞いから子どもたちが何かを感じてくれる、そのような棋王戦・北陸ジュニア棋王戦になることを願っております。本日はありがとうございました。
(乾杯の音頭は、田谷陽司 北陸放送事業担当局長)
(写真=紋蛇、書き起こし=牛蒡)
(紋蛇)