1図で▲5五同馬かと思いきや、藤井玉は▲5五同玉と前進しました。△5八馬(▲同金は△6五金で詰み)には▲5三桂不成△同銀▲5八金とするようです。4五が空くので△6五金では詰まなくなります。
これだけでも驚きのしのぎですが、▲5五同玉以下、△7八馬に▲6四玉(2図)が実戦の進行。どうやら藤井竜王は自玉を土台にして敵玉を寄せるつもり。恐ろしい発想です。
(牛蒡)
2022年12月19日 (月)
正確な見切り
図の局面、先手が耐えていそうです。59手目▲5五角が好手でした。△6六歩や△6四飛に備えています。
上図から△8七馬▲同銀△同飛成▲5八玉△6七歩▲同金△6九銀▲同玉△6七竜▲6八歩△7八金▲5九玉△6八金▲4九玉△6五桂は▲5六銀(参考図)がピッタリ。以下△7八竜や△8七竜は▲9六角の王手竜取りがあります。
これ以外にも後手の攻め筋はありますが、先手玉がつかまる順は発見されていません。危なそうな形でも藤井竜王の見切りは正確でした。
(牛蒡)
先手も怖い局面だが
残り1時間を切る
藤井竜王の選択
長考で決断
意表の手筋
先ほどの記事(リンク)から▲4六歩△2六歩と進みました。▲4六歩は2五飛型を生かした手で、次に▲4七銀と組むつもりです。2六飛型で▲4六歩を指すと△8八角成▲同銀△4四角がありました。これは納得の手です。
△2六歩には意表を突かれます。一般的に歩の手筋とは、飛車の前に打つものがほとんどです。たとえば2九飛型に△2八歩▲同飛として3九に隙を作ったり、同じく2九飛型に△2六歩として飛車を止めつつ、▲同飛なら角交換から△4四角を狙ったりといった具合です。それとは違い、本譜は飛車の背後に打っています。もし先手の飛車が3五にいれば、▲2五飛と歩の裏側に回り込みたくなるようなところ。新しい感覚の手筋といえます。
後手の狙いは△8八角成▲同銀△2八角でしょうか。また、▲2六同歩なら角交換から△4四角です。どこかで△2七歩成▲同銀と形を乱すこともできそうです。関係者控室では、△2八角や△4四角を消す意味で▲6六歩が候補に挙げられています。角交換を封じられてから▲2六飛と歩を取られてはいけないので、後手は何らかの手段で動いていくでしょう。先手はその順も読まなければいけません。
図で先手玉は、かなり怖い形をしています。囲いから露出していますし、8筋は壁、5八に移動すると△3六角が王手角取り、△7五歩とすれば△6四飛も生じます。しかし、藤井井竜王は、これで耐えていると読み、本譜を選んだはず。実際に先手玉を寄せるとなると大変そうです。佐藤九段は長考に入りました。後手にうまい順があるかどうか。
図の局面で、残り時間は▲藤井43分、△佐藤58分。両者とも残り1時間を切りました。先手は3筋から銀を繰り出し、後手は△6五歩から△6六歩と取り込みました。3筋と6筋はどちらも敵玉に近い戦場です。激しい終盤戦になりそうです。
先手にとって図は大きな分岐点になりました。藤井竜王が指したのは▲3五歩。△3六歩や角交換後の△3六角が生じますが、先手にも▲3四歩がありますし、あとで▲2六飛も手厚そうです。戦う意思を感じる手です。
36手目△2六歩に対し、藤井竜王は1時間22分の長考で▲6六歩としました。候補に挙がっていた手ですが、自ら角道を止めて攻撃力を落とす手でもあり、指しづらいとの意見もありました。後手が暴れてきた場合の対策を立てる必要もあり、長考になったと思われます。残り時間は▲藤井1時間5分、△佐藤2時間31分と差がついています。

