2010年3月

2010年3月 7日 (日)

西尾明五段「佐藤九段の圧勝だと思います。優勢ながらも嫌味の残る局面で、△8四角、△6一飛や△5一銀など強い受けで、全く崩れませんでした。」

藤倉勇樹四段「序盤から久保棋王の意欲的な指し回しが目立ちました。中盤の▲7七桂のあたりは先手も十分かと思ってましたが、実際は難解だったかもしれませんね。▲6三成桂と△8四角の攻防がとても見ごたえありました。さすがトッププロという手順でしたね。△6一飛から△5一銀もすごい順でしたね。」

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第35期棋王戦第3局は、116手まで佐藤九段の勝ちとなりました。消費時間は久保3時間43分、佐藤3時間59分。
投了図以下、▲1七玉は△1六香まで。▲2五玉は△3三桂▲3六玉△4四桂までの即詰みとなります。

勝った佐藤は2勝目を挙げ、棋王復位まであと1勝。第4局は3月19日に「東京・将棋会館」で行われます。

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図の△6一飛に、久保棋王は少考ののち▲6一同飛成と応じた。以下△同金▲5二銀と進行。

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ここで佐藤九段が再び持ち時間を使い、残り10分を切った。記録係による秒読みが始まる。
「30秒……40秒……50秒……55秒……残り9分です」
「残り8分です」
「残り7分です」
佐藤九段はなかなか指さない。対局室のカメラに備えられたマイクが、佐藤九段の「いやあ」という呟きを拾った。何度も頭に手をやりながら、「ふう」と息を吐き、扇子を口元に当てたりとせわしない。
「残り2分です」
そこで佐藤九段の手が動いた。

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△7九と。佐藤九段は攻め合いを選んだ。

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「そっち? これは誰も予想してないよ!」
島九段が驚きの声をあげる。そして「そっぽへ行くねぇ」とポツリ。青野九段らと検討を行うが、はっきりした結論は出ない様子。

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いっぽう解説会場では、新潟県アマチュア名人戦を12連覇中の早川俊さん、新潟市制作企画部の鴨井理紗さんが壇上に上がり、飯島六段と大盤解説を行っていた。早川さん、鴨井さんは新潟大学将棋部のOB・OGなのだそうだ。

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図から本譜は△5一飛。「これだけはない手」と解説していた飯島六段、しばし絶句。図から△5一飛に▲6二飛成△同角▲同成桂となれば5一の飛車が取れるのだが、実はそうなってもまだ後手の駒得(桂香)。飯島六段は「やっぱり居飛車がいいように思えてきました」と感想を述べた。

本譜は図から△5一飛▲同飛成△同金▲7一飛と進行。佐藤九段は長考に沈む。午後5時すぎ、佐藤九段の持ち時間は30分を切った。

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図は久保棋王が7八にいた飛車を浮いた局面。チャット解説では、図から△6二銀▲6一飛△5一金▲6二飛成△同金▲7一飛成の展開は後手も相当怖いとの見解。佐藤九段の考慮が続いていたが、モニタに次の手を指す姿が映った。

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佐藤九段の指し手は△6四角。いわゆる「八方にらみ」の好位置だ。「▲9五飛と逃げてるようでは△6二銀で完封されそうなので」とは西尾五段の見解。本譜も図から飛車を逃げずに▲7三桂成△7五角▲6三成桂!と進行。金を取らずに▲6三成桂は驚きの一手。

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「▲6三成桂は気づきにくい手です」(西尾五段)
「▲6三成桂ですか!一生かかっても指せなそうな手です」(藤倉四段)

と、チャット解説の二人も驚きを隠せない。

「△6四角を消し、次の▲6二飛△4二飛▲5二銀を狙っています」(西尾五段)
「部分的には△6二歩打ちたいですが、▲8五飛が痛いですね」(藤倉四段)
「後手が少し余してそうな気がしますが、後手陣の手の入れ方が難しい」(西尾五段)

この勝負、現在の局面は大きな難所を迎えているようだ。

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対局室に午後のおやつが運ばれた。久保棋王、佐藤九段ともにフルーツの盛り合わせで、久保棋王は飲み物にレモンティーを、佐藤九段は午前中と同じくオレンジジュースとコーヒーを注文した。

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(久保棋王のトレーには、ティーバッグとレモンのスライスが載っている)

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「図の▲9七同香に代えて▲9七同桂は、△7三歩と打たれて次の△9八歩や△9六歩の筋が残り、先手苦しそうです」

本譜は図から△9六歩。

「△9六歩ですか。▲同香△同香▲7一角△同金▲同飛成△8六飛▲8七歩△8四飛(参考図1)といった展開が考えられます」

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「参考図から▲9七歩△3六歩といった攻め合いも考えられます。▲3六同歩は△5五角の王手銀取りがあります。こうなると後手よしです」

(文)

飯島栄治六段が中継室を訪れた。

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「形勢は7対5で佐藤良しと見ます」(飯島六段)
「先生、足して10になるようにお願いします」(記者)
「それなら6対4です」(飯島六段)

飯島六段はこの後、解説会に向かうとのこと。

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