2022年12月19日 (月)

221219_036先ほどの記事(リンク)から▲4六歩△2六歩と進みました。▲4六歩は2五飛型を生かした手で、次に▲4七銀と組むつもりです。2六飛型で▲4六歩を指すと△8八角成▲同銀△4四角がありました。これは納得の手です。

△2六歩には意表を突かれます。一般的に歩の手筋とは、飛車の前に打つものがほとんどです。たとえば2九飛型に△2八歩▲同飛として3九に隙を作ったり、同じく2九飛型に△2六歩として飛車を止めつつ、▲同飛なら角交換から△4四角を狙ったりといった具合です。それとは違い、本譜は飛車の背後に打っています。もし先手の飛車が3五にいれば、▲2五飛と歩の裏側に回り込みたくなるようなところ。新しい感覚の手筋といえます。

後手の狙いは△8八角成▲同銀△2八角でしょうか。また、▲2六同歩なら角交換から△4四角です。どこかで△2七歩成▲同銀と形を乱すこともできそうです。関係者控室では、△2八角や△4四角を消す意味で▲6六歩が候補に挙げられています。角交換を封じられてから▲2六飛と歩を取られてはいけないので、後手は何らかの手段で動いていくでしょう。先手はその順も読まなければいけません。

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(牛蒡)

221219_034対局再開から△8六歩▲同歩△同飛と進みました。前例は、図の局面ではゼロですが、2六飛型にすると70局を超えます。横歩取り△8五飛戦法が流行していた時代によく指されました。佐藤九段が奨励会員や四段だったころの話です。飛車の位置が違うとはいえ、部分的な経験値では20歳の藤井竜王を上回ります。

2六飛型の将棋では、△8六同飛に▲3五歩が受けの形です。その場合は後手の3筋方面が激戦地になり、4一玉に戦火が降りかかる変化もあります。しかし、2六歩型の本譜では▲3五歩がありません(△3六歩と打たれる)。この点は後手のポイントといえます。先手は新しいアイデアが求められます。

Dsc_4178(佐藤九段は6年ぶりに4一玉型の中原囲いを採用した)

(牛蒡)

221219_031図の局面で佐藤九段が14分使って昼食休憩に入りました。休憩時間は12時から40分間。消費時間は▲藤井1時間8分、△佐藤35分(持ち時間は各4時間)。藤井竜王の出前注文は「玉子炒飯」(紫金飯店)、佐藤九段は「豚しょうが焼き弁当」(鳩やぐら)。

Dsc_4100(休憩中の対局室)

Dsc_4103(先手はじっくりと進めそうな雰囲気。後手はどう出るか)

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(牛蒡)

221219_016図の局面で対局者の先後成績を調べました。藤井竜王は先手番で10勝6敗。四段時代にこの形で3連敗があり、藤井竜王としては勝率がやや低く、6割2分5厘です。ただし、直近は6連勝中です。

佐藤天九段は後手番で69勝29敗。勝率は7割超え。2016年末以降の15局は4勝11敗と苦戦していますが、タイトル戦でも何度も指してきた得意戦法です。

▲藤井-△佐藤戦は1局だけあり、18年1月の朝日杯将棋オープン戦の本戦で指されています。結果は藤井勝ち。藤井竜王は当時まだ四段でした。

Dsc_3818(朝の藤井竜王)

(牛蒡)

221219_024図は10時33分の局面。戦型は横歩取りになりました。佐藤九段は11月17日の本棋戦、羽生善治九段戦でも横歩取りを指しています。ただし、当時は△3三桂と受ける形でした。本局はオーソドックスな△3三角です。

藤井竜王は青野流で対抗。佐藤九段は平成時代によく指された中原囲いにしました。青野流が登場したころは、このような形もよく指されました。少し古い形といえます。図で後手陣を4二玉型にしただけの類型も数多くあります。

Dsc_4048(初手▲2六歩)

Dsc_4064(2手目△3四歩)

(牛蒡)

振り駒は藤井竜王の振り歩先で、結果は歩が5枚でした。藤井竜王の先手で対局開始。藤井竜王は▲2六歩、佐藤九段は△3四歩を指しました。

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Dsc_3985(藤井聡太竜王)

Dsc_3946(佐藤天彦九段)

Dsc_3994(振り駒の様子)

Dsc_4023(記録机の背後に上村亘五段。東京の対局立会人を務める)

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(牛蒡)