2024年2月23日 (金)

前夜祭で行われた、対局者のインタビューです。

Q.相手の印象。

藤井「序中盤の研究が非常に深い。指しやすさを形勢のリードに結びつけるセンスのよさを感じます」

伊藤「八冠を持たれていて、とてつもなく将棋が強い。読みが深くて精度が非常に高いという印象です」

Q.金沢の印象と、地震で被災された方々にエールを。

藤井「金沢を訪れるのは、昨年の棋王戦と王将戦、家族旅行で一度来たことがあり、それも合わせると今回が4回目になります。伝統的な街並みが残っていて、海鮮に代表されるように食事もとてもおいしいと思っていますので、そちらも楽しみにしています。能登半島地震で被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。現在でも大変な状況の中で生活を余儀なくされている方も多くいらっしゃると思います。一日も早く復興して、また日常が戻ってくることを祈っています。被災地の方をはじめ、多くの方に楽しんでいただけるような将棋にできるように、自分自身全力を尽くしたいと思っています」

伊藤「地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興を心よりお祈りいたします。多くの方のご協力があって、こうして第2局を開催していただけて心からうれしく思っています。金沢にはプライベートも含めて初めて訪れたのですが、歴史的な風情のある街という印象です。特に兼六園は非常に美しいところだなと、写真などを見て思っていまして、一度訪れてみたいと思っています」

Q.明日に向けて。

藤井「第1局は持将棋になって0勝0敗でこの対局を迎えるという、私にとっても初めての状況になりました。第2局なんですけど、気持ちとしては第1局に近いような、そういう不思議な感じもします。明日からまた新たな戦いが始まるという気持ちで、一局一局を頑張っていきたいと思っています」

伊藤「第1局は勝敗つかずということで、今回の対局が開幕局のような気持ちで臨みたいと思っています。明日は先手番になるわけですけど、自分は先手でも後手でも藤井棋王にまだ勝てていないという現状がありますので、タイトル奪取というよりも、まずは1勝を挙げられるように頑張りたいと思います」

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Dsc_1110(挑戦者が隣にいる状況で司会者から「棋王防衛に向けて」と質問を振られ、思わず笑っていた)

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Dsc_1117(「タイトル奪取に向けて」の質問に対し、伊藤七段は落ち着いた口調で「まずは1勝を挙げられるように頑張りたいと思います」と答えた)

※本日の更新は以上です。ネット環境の都合上、対局検分や前夜祭の詳細は明日に掲載します。ご了承ください。

(紋蛇、書き起こし=牛蒡)

藤井聡太棋王に伊藤匠七段が挑戦する、第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負。開幕局は持将棋の引き分けでした。第2局は2月24日(土)、石川県金沢市「北國新聞会館」で行われます。
第2局の先手番は伊藤七段です。持ち時間は各4時間。対局開始は9時、昼食休憩は12時から13時。立会人は久保利明九段、記録係は松下洸平初段(森安正幸七段門下)、現地大盤解説会の解説は船江恒平六段、聞き手は室田伊緒女流二段が務めます。
本局の中継は、棋譜コメントを牛蒡、ブログを紋蛇が担当します。よろしくお願いします。

【主催:北國新聞社】
https://www.hokkoku.co.jp/

【主催:共同通信社】
https://www.kyodo.co.jp/

【特別協賛:コナミグループ】
https://www.konami.com/ja/

【協賛:Calorie Mate】
https://www.otsuka.co.jp/cmt/

Dsc_0800(金沢駅の象徴、鼓門<つづみもん>)

Dsc_0805(北陸新幹線は、金沢-敦賀間が3月16日に開業する)

(紋蛇)

2024年2月 4日 (日)

終局のインタビューを受けた両対局者は大盤解説会に移動して一局を振り返りました。藤井棋王は「こちらの工夫が足りなくて、結果として伊藤七段の手のひらの上というか、そういう将棋になってしまった」と苦笑い。森内九段は一局を総括して「午前中からお互いの研究がぶつかり合うハイレベルで難解な一局だったと思います。棋王戦は北陸で熱い戦いが続きますので、引き続き応援をよろしくお願いいたします」と話しました。

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■藤井棋王
――角換わり腰掛け銀から早いペースで進みました。ある程度想定内でしたか。
藤井 途中までは考えたことのある変化でした。
――そのあと△3八角(82手目)に考えられていましたが、だいぶ先を考えての長考でしたか。
藤井 どこに逃げるか。7九と5九で迷いましたが、本譜は飛車を押さえ込まれて自信のない展開になってしまいました。5九に転じて、飛車を縦に使う展開を見せたほうがよかったかなと思っています。
――藤井棋王の玉が上部に出て、捕まりにくい形になりました。そのあたりはどのように考えていましたか。
藤井 △3六角(94手目)と打たれて▲5九飛と使う筋を封じられて、そのあたりからむしろこちらが持将棋にできるかどうかという形勢になっていると思いました。
――本局の対局全体を通してどうでしたか。
藤井 こちらの玉が上部に行っているのが主張と思いましたが、本譜は後手に手厚い陣形を作られてしまって、深い認識が必要だったと思っています。
――公式戦で初めての持将棋でしたが。
藤井 そのことはまったく意識していませんでした。
――富山で初めての対局でした。感想をお聞かせください。
藤井 対局を歓迎していただいて、今日の大盤解説会も多くの方が来られていると聞いています。その中で、自分自身も気持ちよくというか集中して対局できたと思います。
――第2局は金沢市で行われます。抱負をお願いします。
藤井 次は後手番になるので、しっかり対局に向けて準備したいと思います。

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■伊藤七段
――本局は角換わり腰掛け銀で進んで、想定の範囲内だったのでしょうか。
伊藤 用意していた作戦ではありました。
――昼食休憩の▲6七金右(85手目)でだいぶ考えられていました。
伊藤 本譜の△3四馬(86手目)だとあまり先手玉を寄せる感じはなくなるんですけど、こちらとしては入玉を目指すのは予定の方針ではありました。
――検討では△8三馬も出ていました。
伊藤 あるかなとは思いましたが、寄せきれないと形勢を損ねてしまうので、かなりリスクがあるのかなと思いました。
――一局を通していかがだったでしょうか。
伊藤 こちらとしては持将棋を目指す展開だったんですけど、こちらの玉のほうが入るのに手数がかかるので、かなり神経を使いながらの展開でした。
――富山は初めてだったのですが、対局はいかがだったでしょうか。
伊藤 地元の方にも歓迎していただいて、対局しやすい環境をつくっていただいて、非常に集中して対局できたと思います。
――金沢市での第2局に向けての抱負をお願いします。
伊藤 次局は先後も決まりますし、少し間隔も空きますので、しっかり準備して臨みたいと思います。

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藤井聡太棋王に伊藤匠七段が挑戦する第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局の▲藤井聡太棋王-△伊藤匠七段戦は、17時35分に129手で持将棋(引き分け)となりました。
相入玉で双方の玉が捕まる見込みはなく、点数も足りています。伊藤七段が藤井棋王に持将棋の提案して、藤井棋王が合意しました。タイトル戦の開幕局での持将棋は、1991年10月の第4期竜王戦七番勝負第1局▲谷川浩司竜王-△森下卓六段(肩書・段位は当時)以来です。異例のスタートとなりました。
タイトル戦での持将棋は一局と見なして完結するため、指し直しはありません。両者、0勝0敗1分で第2局を行います。その第2局は2月24日に金沢市「北國新聞会館」で指されます。(銀杏)

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伊藤七段の△4三馬(104手目)は強い手。竜にぶつけながら銀にも当たっています。控室では森内九段と野原女流初段が師弟で検討を進めました。図から▲6四竜△7六馬▲3三歩△同桂▲3四歩△7五銀▲3三歩成△同金▲6二竜△3二歩は竜が盤上から消えないように頑張った順ですが、先手玉に危険が迫って「嫌ですね」と野原女流初段。実戦は▲4三同竜△同金▲8五銀△3三玉と安全志向で進めました。

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いよいよ後手玉が動き出して相入玉が見えてきました。入玉模様ではまず玉の安全確保が鉄則といわれます。森内九段は「先手玉はすでに安全なので、後手玉を攻める順も考えたいです。先手陣に残っている飛車は▲8八金と開けば逃げられる形なので、点数で負けることはないでしょう。1九の香が取られると後手玉に入られてしまうので、残っているうちに仕事がしたいですね」と話します。点数は先手後手ともに27点で、持将棋の可能性が高くなってきました。

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