2012年12月26日 (水)

_8215時30分過ぎの局面。渡辺竜王は△2七角(図)と飛車に当てて切り返した。しかし(1)▲2四歩と銀を取って以下△3八角成▲2三歩成と進めると、これは後手玉が寄り筋に入ってしまいそうだ。また図で(2)▲6八飛と回っても、6筋の突き捨てを生かして調子がよさそうに見える。この角打ちの真意はどこにあるのだろうか。

(1)▲2四歩にひとつ考えられるのは、△4五角成▲2三歩成△6九銀の攻め合い。飛車ではなく守りの金を狙うのが終盤の心得だ。
(2)▲6八飛には△6四桂▲2四歩△4五角成でどうか。ただ、「桂を打つのではつらそう」という意見も出ている。
変化によっては詰む、詰まないをきっちり読み切らなければいけないものある。すでに終盤戦だ。
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(15時30分頃、渡辺竜王が△2七角を着手した直後の様子。険しい表情が見て取れる)

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_80_2先手が角損の猛攻をかけている。先手玉は相当に耐久力があり、金を1枚はがされても詰まない形を維持できる可能性がある。となると攻めがつながるかどうかが問題だ。
(1)▲5三金や(2)▲2五歩など、さまざまな攻め筋が見えるだけに悩むところ。(2)▲2五歩は利けば大きいが、△7五歩と強く攻め合われる手も考慮しなければならない。後手からの最も早い反撃は7筋攻めなのだ。
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(1階販売コーナーの扇子。両対局者と郷田棋王の扇子だ)

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_70渡辺竜王は△3三歩(図)と受けて先手の攻めを催促した。銀損の先手は手を止めることはできない。ただ、ここで単に▲4二桂成は△同飛で△4七飛成を狙われて困りそう。どうやって後手陣に迫るかが問題だ。有力なのは▲7一角。これを入れてから▲4二桂成と取れば、今度は△同飛とは取れない(▲5三角成がある)。想定される変化の一例は▲7一角△7二飛▲4二桂成△同金▲5三角成△同金▲4五桂。先手は銀損から角損になりさらに駒損になるが、局面の焦点は先手の攻めが続くかどうかにある。攻めが続けば駒損はあまり問題ではなくなる。先手の玉は堅いので、攻めが続く形になれば優勢になるだろう。
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_63時刻はまもなく14時。羽生三冠の▲6四歩(図)を見た渡辺竜王が長考している。控室には早咲誠和アマが訪れ、関係者と談笑していた。
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(対局室の様子。渡辺竜王が考え込んでいるように見える)
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(他棋戦を対局中の早咲アマ。今年のアマチュア名人だ。全日本アマチュア名人戦は共同通信社が協賛している)

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先に対局室に戻ったのは渡辺竜王。定刻前には関係者と談笑する姿も。後に入室した羽生三冠は険しい表情。前傾姿勢で上体を揺らしながら盤面を凝視していた。

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_6212時10分、図の局面で昼食休憩に入った。消費時間は▲羽生57分、△渡辺33分。対局は13時から再開される。
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(羽生三冠の玉将。「玉龍」は駒師)
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(渡辺竜王の王将。「錦旗」は駒の書体)
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_54戦いが始まって図の局面。よく見ると先手の銀の行き場がないが、決して見落としではない。ここから▲3四銀△同金と捨てるのが定跡の進行だ。先手銀損だが、後手陣にキズを与え、攻めやすくする下地を作って互角の取り引きである。「駒損でも攻めが続けばよし」という矢倉の大局観がよくわかる流れだ。今年10月に二人の間で行われた、王座戦五番勝負第4局の千日手指し直し局もこの形だった。左図から▲3四銀△同金▲5五歩△4四金▲3五歩△5五金▲3四桂と進んで下図。
_61桂を使った王手。自然な手に見えるが、公式戦で指されたのは初めてだ。以前はすべて▲3四歩を選んでいたので、ここから違う展開になる。新しい手を指された渡辺竜王、おそらく長考に入るだろう。
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(11時45分頃の対局室の様子。渡辺竜王が身を乗り出して盤に向かっている)

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