第1局 2月2日(日)高知県高知市「文化プラザかるぽーと」
第2局 2月22日(土)石川県金沢市「北國新聞会館」
第3局 3月2日(日)新潟県新潟市「新潟グランドホテル」
第4局 3月16日(日)栃木県日光市「日光きぬ川スパホテル三日月」
第5局 3月26日(水)長野県長野市「長野ホテル犀北館」
以上で本局の中継を終わります。
ご観戦誠にありがとうございました。
(八雲)
2024年12月
囲み取材
感想戦終了後、挑戦者に決まった増田康宏八段に囲み取材がありました。
【増田八段の囲み取材の談話】
――タイトル初挑戦が決まりました。感想戦も終わって、いまのお気持ちを聞かせてください。
「ずっと目標としていたことなので凄く嬉しいですね。あと一勝がなかなか遠いと思っていたので。一局負ける余裕があったとはいえ、もし負けてしまったら、流れも悪くなると思ったので。今日決められたらいいなと思っていたんですけど。凄く集中して対局できたので、いまは安心と嬉しさが両方あります」
――藤井棋王との五番勝負になります。どのように挑まれますか。
「いろんな棋士の方がいろんな対策で藤井棋王に挑まれているのを見て、いろんな戦い方があると思うんですけど。自分は、今日の将棋を見てもわかると思うのですけど。あんまりAIの序盤といった形にはならないので。かなり自分の感覚を信じた将棋で勝負をしようかなと思っています」
――開幕まで、どのように準備をして過ごされますか。
「今年の5月ぐらいからトレーニング法を変えたんですけど。それがここまで、凄くいい影響が出ているかなと思うので。そういったものを継続しつつ、藤井棋王に対する対策といったところもしっかり準備していきたいと思います」
――トレーニング法を変えたというのは、言える範囲で結構ですので教えていただけますか。
「自分はAIをあんまり使わないんですけど。だから、昔ながらの勉強法ですね。棋譜並べとか。詰将棋とかもたまにはやってるので」
――それは、以前もそうされてきたけど、多少ちょっとチェンジされたということですか。
「そうですね。だんだん、やっぱりAI研究とか取り入れたほうがいいのかなと思ったりして。比重が下がっていったんですけど。最近は、昔やっていたことのほうが比重が多くなっているという感じです」
――タイトル初挑戦ということですけど。いま27歳で、この歳での挑戦というのは、ご自身ではどんなふうに思っていらっしゃいますか。
「森下師匠からは、おそらくもっと早く挑戦できた、みたいなことは言われると思うのですけど。自分の中では、ちょうどプロになって10年経ったんですけど、そういった中でいろいろ試行錯誤をしながらやってきて、努力してきたことが実を結んで、いま挑戦できたのかなと思っているので。10年目で挑戦できたことは、自分的にはしっかり実力をつけて臨めたかなと思っています」
――これまでタイトル戦で唯一、藤井さんに土をつけたのが伊藤匠叡王ですけども。五番勝負というところも似ているところがあると思うのですが。何か参考にされたりはしますか。
「そうですね。伊藤叡王とは研究会もやっていますし。永瀬九段や、そういった方々ともやっているので。特に伊藤叡王の戦い方は凄く参考になったので。叡王戦を見ていても中終盤は凄く我慢して指していたので。それはなかなか、対藤井さんにできる人はいなかったので。その辺りは参考にしたいなと思っています」
――開幕まであと一カ月半ぐらいですが、そこまでにどんなところを上積みして臨みたいと思っていますか。
「やっぱり中終盤ですよね。後半のほうの強さというところをさらに磨きたいなと思っています。伊藤叡王がタイトルを奪取できたのも、そこが凄くあったと思うので。そこはしっかり伸ばしたいなと思っています」
――先ほどのトレーニング法を変えたという中で、AIよりも昔ながらの勉強を増やしたということでしたけども。どちらかといえば、いまはAIの比重を増やす人が多いですが、その逆にしたというのは、どういった理由だったのでしょうか。
「AI研究をして序盤戦を凄く、AIのように指せるというのはアドバンテージにはなると思うんですけど。自分はそのやり方が合わなかったというか。中終盤のほうで凄くミスが出てしまうことが多かったので。なかなかその部分は両立できないのかなと感じたので。それでちょっとAI研究はあまりしていなくて、どちらかというと中終盤を磨くような感じでやってます」
――詰将棋の勉強も増やしているということでしたが。それは何かきっかけがあったのでしょうか。
「やっぱり伊藤叡王とかが詰将棋を解かれているので。藤井棋王とかもたぶんそうだと思うんですけど。強い人がそうやっていてうまくいっているのを見ていたら、自分もそれを取り入れてみようと思ったのがきっかけですね」
――詰将棋を取り入れてみて、何か効果は感じましたか。
「集中力だったりとか。玉を詰ますという意味では、そんなに効果があるとは思わないんですけど。集中力や読みといった点では、かなり効果があったかなと。中終盤のミスが、詰将棋をやり始めてから出なくなった気がするので。そういったところはかなり効果があるかなと思っています」
――五番勝負では藤井棋王の隙や弱点をついていきたいということでしたが。どういったところに弱点があると思われますか。
「いや、もうないんですけど(笑)。ただ、持ち時間がなくなってくると、ちょっと動揺される部分があるのかなと思うので。時間責めではないんですけど、藤井棋王がなるべく苦しむような展開に持っていければいいなと。で、時間を使わせて、という感じが理想かなと思っています」
――ファンに向けてメッセージをお願いします。
「実力差は藤井棋王とあると思うんですけど、そういった中でなんとか自分なりに工夫して、接戦というか、最後まで見ていて面白い将棋にしたいと思っていますので。是非、応援してくれる方々にもそこを期待して欲しいなと思っています」
(八雲)
感想戦の様子
終局直後
【増田八段の談話】
――序盤から工夫されていましたが、午前中の辺りはどのように思われていましたか。
「ちょっと出だしとしては、かなり珍しい将棋だったと思うんですけど。横歩取りの展開が自信がなくて、こういった力戦調の将棋にしたのですが。午前中のところは、難しい勝負というか。一手一手考えながら指す勝負になって、自分の思い通りの展開にできたかなと思っていました」
――午後に入って、どの辺りで模様がよくなったと思われましたか。
「△4四金(64手目)と出られた手に対して▲4六銀と上がったときに、何かあったらまずいんですけど。そこで相手の手が難しいのかなと思って。その辺りで少しよくなったのかなという気がしました」
―― 一局を通してのご感想をお願いします。
「ずっと難しくて。よくなってからも、ミスをしたらすぐに逆転してしまう将棋だと思ったので。ただ、そこでしっかり時間を使って、個人的にはミスなく指せたと思うので。その内容については凄く満足しています」
――タイトル初挑戦が決まりました。お気持ちはいかがですか。
「今日はでもそういったことを考えずに凄く集中できていたと思うので。いままでだったら、そういったことが頭に浮かんで、内容が悪くなってしまったりといったことがあったと思うんですけど。その辺りが、だいぶ成長できたかなという感じがします。タイトル戦はまだどうなるかわからないですけど、今回の棋王戦は凄く内容がよかったので、そういったものを継続して指せればいいかなと思っています」
――今期の棋王戦トーナメントを振り返っていかがですか。
「振り駒でかなり先手番が多かったというのが、運がよかったところもあると思うんですけど。全体的に中盤戦でのミスが少なかったかなという気がするので。その辺りが勝ちぬけられた理由かなと思っています」
――藤井棋王との五番勝負になりますが、抱負を聞かせてください。
「藤井棋王はほとんどのタイトル戦で勝たれていますし、実績もまったく違うので。とても厳しく、つらい勝負になると思うんですけど。ただ、勝負事は絶対負けるということはあり得ないと思うので。その辺り、少しの相手の隙というか、弱点をついて指せればいいかなと思っています」
【斎藤五段の談話】
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
「出だしから想定していない形になったんですけど。途中で、想定していた形と少し似たような形になったんですけど、ちょっと1筋の関係が判断が微妙なところで。先手の得にもなるような変化が多くて。その辺りで序盤から時間を使い過ぎてしまって。中盤の▲5五歩(37手目)から▲5七銀が見えていなかったので。その辺りも、増田さんの構想のうまさが――そこからちょっと少しずつ苦しくなってしまったのかなと思いました」
――昼休前後にだいぶ長考されていましたが。あの辺りはどのような。
「△6三銀(24手目)は怖い手でもあるかなと思ったので。先手が望めば激しい変化にもなるので。その辺りのことを慎重に考えてはいたんですけど。ちょっと考えすぎてしまったような気がします」
――今回、初挑戦まであと一歩というところでした。今期の棋王戦を振り返っていかがでしたか。
「かなり厳しい戦いが常に続いていたんですけど。その中でもいろいろと工夫しながら戦えて。自分なりには手応えのある将棋も多かったので。せっかくなら、増田さんと2局指したかったといのが、非常に残念です」
――ご自身の成長などは感じられましたか。
「そうですね、いままでならここまで来れることは、客観的に見てあんまりなかったと思うので。ここまで来れたのは少し成長できた点ではあるんですけど。やはり、トップの方々との差がまだまだあるなというのが、今日一日通して見て、とても実感しました」
(八雲)
増田康八段が挑戦権を得る
117手まで、増田八段が斎藤五段をくだしました。終局時刻は19時47分。消費時間は▲増田3時間59分、△斎藤3時間59分(持ち時間は各4時間)。挑戦者決定二番勝負は増田八段が制して、藤井聡太棋王への挑戦権を得ました。五番勝負は2月2日(日)高知県高知市「文化プラザかるぽーと」で開幕します。
(胡桃)
先手が寄せに出る
図は18時45分頃の局面。ここまでの消費時間は▲増田3時間44分、△斎藤3時間41分。
後手の攻めを一通り受けたところで、増田八段が待望の反撃に出ました。2筋からの後手玉を直撃する攻めで、すでに寄せに出ている感じの厳しい攻めになっています。
(八雲)