【増田八段の談話】
――序盤から工夫されていましたが、午前中の辺りはどのように思われていましたか。
「ちょっと出だしとしては、かなり珍しい将棋だったと思うんですけど。横歩取りの展開が自信がなくて、こういった力戦調の将棋にしたのですが。午前中のところは、難しい勝負というか。一手一手考えながら指す勝負になって、自分の思い通りの展開にできたかなと思っていました」
――午後に入って、どの辺りで模様がよくなったと思われましたか。
「△4四金(64手目)と出られた手に対して▲4六銀と上がったときに、何かあったらまずいんですけど。そこで相手の手が難しいのかなと思って。その辺りで少しよくなったのかなという気がしました」
―― 一局を通してのご感想をお願いします。
「ずっと難しくて。よくなってからも、ミスをしたらすぐに逆転してしまう将棋だと思ったので。ただ、そこでしっかり時間を使って、個人的にはミスなく指せたと思うので。その内容については凄く満足しています」
――タイトル初挑戦が決まりました。お気持ちはいかがですか。
「今日はでもそういったことを考えずに凄く集中できていたと思うので。いままでだったら、そういったことが頭に浮かんで、内容が悪くなってしまったりといったことがあったと思うんですけど。その辺りが、だいぶ成長できたかなという感じがします。タイトル戦はまだどうなるかわからないですけど、今回の棋王戦は凄く内容がよかったので、そういったものを継続して指せればいいかなと思っています」
――今期の棋王戦トーナメントを振り返っていかがですか。
「振り駒でかなり先手番が多かったというのが、運がよかったところもあると思うんですけど。全体的に中盤戦でのミスが少なかったかなという気がするので。その辺りが勝ちぬけられた理由かなと思っています」
――藤井棋王との五番勝負になりますが、抱負を聞かせてください。
「藤井棋王はほとんどのタイトル戦で勝たれていますし、実績もまったく違うので。とても厳しく、つらい勝負になると思うんですけど。ただ、勝負事は絶対負けるということはあり得ないと思うので。その辺り、少しの相手の隙というか、弱点をついて指せればいいかなと思っています」
【斎藤五段の談話】
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
「出だしから想定していない形になったんですけど。途中で、想定していた形と少し似たような形になったんですけど、ちょっと1筋の関係が判断が微妙なところで。先手の得にもなるような変化が多くて。その辺りで序盤から時間を使い過ぎてしまって。中盤の▲5五歩(37手目)から▲5七銀が見えていなかったので。その辺りも、増田さんの構想のうまさが――そこからちょっと少しずつ苦しくなってしまったのかなと思いました」
――昼休前後にだいぶ長考されていましたが。あの辺りはどのような。
「△6三銀(24手目)は怖い手でもあるかなと思ったので。先手が望めば激しい変化にもなるので。その辺りのことを慎重に考えてはいたんですけど。ちょっと考えすぎてしまったような気がします」
――今回、初挑戦まであと一歩というところでした。今期の棋王戦を振り返っていかがでしたか。
「かなり厳しい戦いが常に続いていたんですけど。その中でもいろいろと工夫しながら戦えて。自分なりには手応えのある将棋も多かったので。せっかくなら、増田さんと2局指したかったといのが、非常に残念です」
――ご自身の成長などは感じられましたか。
「そうですね、いままでならここまで来れることは、客観的に見てあんまりなかったと思うので。ここまで来れたのは少し成長できた点ではあるんですけど。やはり、トップの方々との差がまだまだあるなというのが、今日一日通して見て、とても実感しました」
(八雲)