2024年12月17日 (火)

囲み取材

感想戦終了後、挑戦者に決まった増田康宏八段に囲み取材がありました。

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【増田八段の囲み取材の談話】
――タイトル初挑戦が決まりました。感想戦も終わって、いまのお気持ちを聞かせてください。
「ずっと目標としていたことなので凄く嬉しいですね。あと一勝がなかなか遠いと思っていたので。一局負ける余裕があったとはいえ、もし負けてしまったら、流れも悪くなると思ったので。今日決められたらいいなと思っていたんですけど。凄く集中して対局できたので、いまは安心と嬉しさが両方あります」

――藤井棋王との五番勝負になります。どのように挑まれますか。
「いろんな棋士の方がいろんな対策で藤井棋王に挑まれているのを見て、いろんな戦い方があると思うんですけど。自分は、今日の将棋を見てもわかると思うのですけど。あんまりAIの序盤といった形にはならないので。かなり自分の感覚を信じた将棋で勝負をしようかなと思っています」

――開幕まで、どのように準備をして過ごされますか。
「今年の5月ぐらいからトレーニング法を変えたんですけど。それがここまで、凄くいい影響が出ているかなと思うので。そういったものを継続しつつ、藤井棋王に対する対策といったところもしっかり準備していきたいと思います」

――トレーニング法を変えたというのは、言える範囲で結構ですので教えていただけますか。
「自分はAIをあんまり使わないんですけど。だから、昔ながらの勉強法ですね。棋譜並べとか。詰将棋とかもたまにはやってるので」

――それは、以前もそうされてきたけど、多少ちょっとチェンジされたということですか。
「そうですね。だんだん、やっぱりAI研究とか取り入れたほうがいいのかなと思ったりして。比重が下がっていったんですけど。最近は、昔やっていたことのほうが比重が多くなっているという感じです」

――タイトル初挑戦ということですけど。いま27歳で、この歳での挑戦というのは、ご自身ではどんなふうに思っていらっしゃいますか。
「森下師匠からは、おそらくもっと早く挑戦できた、みたいなことは言われると思うのですけど。自分の中では、ちょうどプロになって10年経ったんですけど、そういった中でいろいろ試行錯誤をしながらやってきて、努力してきたことが実を結んで、いま挑戦できたのかなと思っているので。10年目で挑戦できたことは、自分的にはしっかり実力をつけて臨めたかなと思っています」

――これまでタイトル戦で唯一、藤井さんに土をつけたのが伊藤匠叡王ですけども。五番勝負というところも似ているところがあると思うのですが。何か参考にされたりはしますか。
「そうですね。伊藤叡王とは研究会もやっていますし。永瀬九段や、そういった方々ともやっているので。特に伊藤叡王の戦い方は凄く参考になったので。叡王戦を見ていても中終盤は凄く我慢して指していたので。それはなかなか、対藤井さんにできる人はいなかったので。その辺りは参考にしたいなと思っています」

――開幕まであと一カ月半ぐらいですが、そこまでにどんなところを上積みして臨みたいと思っていますか。
「やっぱり中終盤ですよね。後半のほうの強さというところをさらに磨きたいなと思っています。伊藤叡王がタイトルを奪取できたのも、そこが凄くあったと思うので。そこはしっかり伸ばしたいなと思っています」

――先ほどのトレーニング法を変えたという中で、AIよりも昔ながらの勉強を増やしたということでしたけども。どちらかといえば、いまはAIの比重を増やす人が多いですが、その逆にしたというのは、どういった理由だったのでしょうか。
「AI研究をして序盤戦を凄く、AIのように指せるというのはアドバンテージにはなると思うんですけど。自分はそのやり方が合わなかったというか。中終盤のほうで凄くミスが出てしまうことが多かったので。なかなかその部分は両立できないのかなと感じたので。それでちょっとAI研究はあまりしていなくて、どちらかというと中終盤を磨くような感じでやってます」

――詰将棋の勉強も増やしているということでしたが。それは何かきっかけがあったのでしょうか。
「やっぱり伊藤叡王とかが詰将棋を解かれているので。藤井棋王とかもたぶんそうだと思うんですけど。強い人がそうやっていてうまくいっているのを見ていたら、自分もそれを取り入れてみようと思ったのがきっかけですね」

――詰将棋を取り入れてみて、何か効果は感じましたか。
「集中力だったりとか。玉を詰ますという意味では、そんなに効果があるとは思わないんですけど。集中力や読みといった点では、かなり効果があったかなと。中終盤のミスが、詰将棋をやり始めてから出なくなった気がするので。そういったところはかなり効果があるかなと思っています」

――五番勝負では藤井棋王の隙や弱点をついていきたいということでしたが。どういったところに弱点があると思われますか。
「いや、もうないんですけど(笑)。ただ、持ち時間がなくなってくると、ちょっと動揺される部分があるのかなと思うので。時間責めではないんですけど、藤井棋王がなるべく苦しむような展開に持っていければいいなと。で、時間を使わせて、という感じが理想かなと思っています」

――ファンに向けてメッセージをお願いします。
「実力差は藤井棋王とあると思うんですけど、そういった中でなんとか自分なりに工夫して、接戦というか、最後まで見ていて面白い将棋にしたいと思っていますので。是非、応援してくれる方々にもそこを期待して欲しいなと思っています」

(八雲)