2015年12月

2015年12月21日 (月)

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時計の針は15時30分を回っています。
佐藤(天)八段は18分の考慮で▲2四歩と突き、△同歩にじっと▲7八金と上がりました(上図)。▲2四飛と手拍子で歩を取りたくなりますが、取れる歩をあえて取らずに、▲2三歩や▲2五歩の含みを残したほうが攻めの選択肢が広い、ということのようです。森下九段は「へえー。こう指すものですか。いや、さすがですね、これは。思いつきません」と感心することしきりです。
対する佐藤(康)九段は△3三角と強気に応じました(下図)。歩を取られないようにした手ですが、▲2五歩や▲4五歩から桂を跳ねられると角当たりになってしまうだけに、思いきった一手です。先手は銀矢倉が完成し、駒組みはほぼ完成形。▲5六歩から攻勢に出ると見られています。

<消費時間>
▲佐藤(天) 1時間38分
△佐藤(康) 2時間49分

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183(森下九段)

(若葉)

控室を森下卓九段が来訪しました。関係者に挨拶をして早速、永瀬六段に声をかけます。

「永瀬くんならどうですか、あらかた優劣はついているんじゃないですか」(森下九段)
「いやいや……」(苦笑いの永瀬六段)

逆に形勢を問われた森下九段は先手持ちの見解。先手は指し手がわかりやすく、楽な感じがするとのことです。永瀬六段も、後手を持って指し方がわからない、とのこと。一例として、43手目▲8八玉から△5五歩▲6七銀△5四銀▲7八金△6四歩▲5六歩△同歩▲同銀△5五歩▲4七銀(C図)の変化は先手が十分のようです。
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171(棋譜に目を通す森下九段)

172(森下九段の差し入れ、東京・浅草「舟和」の「あんこ玉」)

(若葉)

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15時、まだ駒組みが続くかと思われた局面で後手が仕掛けていきました。△7二飛から△7五歩と突いて、歩の交換を目指します。持ち駒に1歩があれば、△3五歩の桂頭攻めが狙い筋になります。

161(控室では永瀬拓矢六段が本局を検討している。「まさかやらないですよね」と△4一玉を示す永瀬六段。「この瞬間は耐えられるイメージがないのですが」)

(若葉)

将棋会館のある千駄ヶ谷は大都会の中心に位置しながら閑静な住宅の立ち並ぶ文教地区で、周辺には新宿御苑や明治神宮外苑といった公園や、東京体育館、能楽堂のような文化施設が見られます。
ここではそのうちのいくつかを写真でご紹介します。

151(暖かい日が続いているためか、葉は落ちきっていない。イチョウの木々もまだ秋の装いだ)

152(JR千駄ヶ谷駅から西に進むと、見えてくるのが国立能楽堂。能楽の保存と普及を図ることを目的として、1983年9月に開場した。能舞台の床材には木曽の樹齢400年の尾州檜が、柱やその他の部分には台湾の大雪山系から取り寄せた樹齢2000年の檜が使用されている)

153(JR千駄ヶ谷駅の北側に広がる新宿御苑。明治39年(1906年)、信州高遠藩主の内藤氏の屋敷跡に皇室の庭園として作られ、戦後に一般開放された。広さは58.3ヘクタール。周囲は3.5kmに及ぶ。園内では日本庭園、イギリス風景式庭園、フランス式整形庭園といろいろな様式が楽しめる)

154(月曜はあいにくの定休日だった。年末年始は12月28日から1月4日までがお休みになるそうだ。12月下旬はビワとカンツバキが見ごろを迎えている)

155(御苑の雑木林から、新宿の摩天楼を望む)

(若葉)

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佐藤(康)九段の長考を皮切りに、午後に入ってからは指し手のペースがゆっくりになっています。再開からの1時間で、指されたのはたったの2手。▲4五歩の仕掛けを念頭に置きながら、互いに自陣に手を入れています。
佐藤(康)九段の△2二角から△3三銀が驚きの構想。矢倉に組み替えて▲4五歩に備えたものと考えられますが、瞬間的に角が壁形になり、働きのよくない駒になってしまいました。中盤以降、どのようにまとめていくかが注目されます。

142(佐藤(天)八段)

(若葉)

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13時、対局が再開されました。再開後もさらに6分考えて指されたのは、角を引く△2二角でした。

132(険しい表情で盤をにらむ佐藤(康)九段。「いやあ、わからん」とぼやきが漏れることも)

(若葉)

昼食の注文は佐藤(康)九段がなし、佐藤(天)八段が山菜うどん(ほそ島や)でした。

121(佐藤(天)八段が注文したものと同じ山菜うどん)

(若葉)

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図の局面で佐藤(康)九段の手がぴたりと止まりました。10分、20分……と時間が過ぎていきます。佐藤(康)九段は1時間13分考え、結局そのまま昼食休憩に入りました。消費時間は▲佐藤(天)14分、△佐藤(康)1時間41分。対局は13時に再開されます。

101(佐藤(康)九段)

(若葉)

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時刻は11時を回りました。
後手は振り飛車を含みにして駒組みを進めていましたが、13手目▲6八玉を見て△5二金右(A図)と上がりました。本譜は相居飛車の将棋になりそうです。準決勝では先手が▲7八金と形を早く決めていたので、後手も飛車を振りやすい意味がありました。本局では、先手は振り飛車を警戒して、金の位置を保留しています。「棋は対話なり」で、先手の指し手に応じた方針変更といえそうです。
佐藤(天)八段は玉を6八に保留したまま、▲4八飛(B図)と右四間飛車に構えました。玉の囲いはそこそこに、攻撃態勢を着々と整えています。

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(若葉)