加藤九段、藤井九段、片上六段が明日の見どころを語った。
加藤 そうですね。えーっとですね。先ほどの両対局者のやり取りを非常に興味深く聞いておりました。司会の方も非常に突っ込みがあってですね、なかなか緊迫したやり取りだったと思うんですけれども、お二人とも素直に、直球で投げ返していましたね。カーブではなくて。非常に感心しました。郷田棋王と渡辺竜王・王将ですけども、郷田棋王とわたくしはひとつ共通点がありまして、何かというと、わたくしも郷田棋王も、長考して、長考したあと一番最初に考えた手を指します。つまり、わかってて考えるところが共通しています。渡辺竜王・王将はですね、少し前まではわたくし、渡辺竜王の強さ、まったくわかりませんでした。渡辺竜王が竜王戦で7期、8期連覇しても、その強さがまったくわからないと答えていたんですけれども、去年ですね、竜王戦の立会で行きまして、渡辺竜王の強さを悟りました。つかみました。以後わたくしは、あっ、ちょっと時間がオーバーするかもしれませんが、ちょっと宣伝です。4月10日に角川書店から加藤一二三九段著、『羽生善治論』が出版されます。そこで渡辺竜王の強さをかなりわたくしが強調して書いています。今回は羽生さんと渡辺竜王と大山名人と、中原さんと、米長さん。で、ほかならぬわたくし。と、長くなりますから、このくらいで。
――(会場拍手)
片上 明日の展望ですか。
藤井 私は立場上公平中立、将棋連盟の一理事として、公平中立に予想して、第5局が見たいと。明日は郷田さんが意地を見せないといけませんね。片上さんはいかがです?
片上 今期の将棋を見てると渡辺さんが少し押してるのかと思ったんですが、順位戦の最終局(▲渡辺明-△郷田戦)のインパクトがありまして。正直言ってあの将棋、郷田さんが勝つとは思わなかったんですよ。あれで見方が変わりましたかね。難しくなったんですが、6-4で竜王かなと思います。
藤井 それでも竜王寄りですか。
片上 郷田さんはとちぎ将棋まつりに来られて、棋王もとって、すごくいいイメージがあると思うんですよね。それがいい将棋につながれば。
藤井 去年は「誕生日にタイトル」と、作ったようないい思い出がありましたからね。
加藤 戦型予想ですか? 郷田さんが先手ですよね。
藤井 竜王が先手です。
加藤 竜王が先手。うーん、あの、竜王が矢倉ですよね。それで郷田さんが受けて立つ。相矢倉ですね。
藤井 加藤先生の一番得意な形ですね。
加藤 相矢倉は私200局か300局くらい指してまして、ひとつ言いますと、先手後手どちらを持っても十分戦えるというのが矢倉なんです。竜王と郷田さんは五分五分だと思います。
藤井 割れましたね。私は6-4で郷田さん、片上さんは6-4で竜王。加藤先生は五分五分。
加藤 私は立会人ですから、まったく公平に。
藤井 (前夜祭の次の予定まで)あと1分? 加藤先生、締めをお願いします。
加藤 郷田さんも渡辺さんも非常に本格的な将棋で、よく読んで指す将棋でですね、あすは重厚な名勝負を展開することを期待しております。わたくしも立会人ですけれども、勉強するつもりで……73歳ですけども、もうちょっと強くなりたいと思っているので、勉強のつもりで立ち会います。
(牛蒡)