2012年12月

2012年12月26日 (水)

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羽生三冠が117手で制し決着は第2局に持ち越された。終局は19時39分、消費時間は▲羽生3時間49分、△渡辺3時間47分。挑戦者決定戦第2局は1月7日(月)東京・将棋会館で行われる。

_108図は19時頃の局面。形勢は先手優勢と見られている。ここから▲5五金上と竜の利きを通す手が厳しい。次に▲4四金寄から馬を責める手も見ているため、攻めの厚みが途方もないのだ。
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(19時過ぎの対局室の様子。両者とも前傾姿勢)

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(継ぎ盤の駒はほとんど動きがない)

(文)

_100時刻は18時過ぎ、手数は100手を超えた。盤上を見れば、羽生三冠の金銀によって占拠されている。さらに自陣の竜が「鉄壁のゴールキーパー」(片上六段)で、先手玉の寄りが見えない。後手としては攻め合いが望みにくい状況になっているわけで、先手から一方的に攻められる展開が見え、苦しい状況だ。形勢は先手ペース。
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(継ぎ盤を囲む輪が大きくなっている。北島忠雄六段の姿も)
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(香川愛生女流初段も検討の様子を見ている)
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(長いこと継ぎ盤の後手側に座っていた片上六段が控室を出ると、そのままそこは空席になった。「何時間もこっち(後手側)に座っていたらつらいですよね」という声が聞こえた)

(文)

遠巻きに検討を聞いていると、心なしか棋士たちの口数が少ないことに気づく。それはこの対局のカードの重みからくるものだろうか。

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(村山慈明六段=左も検討に参加している)
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(佐藤天彦七段=右も控室に。後ろには戸辺誠六段の姿も見える)

(文)

_90△6七歩(図)のたたきに対し、羽生三冠は▲同金上(下図)と応じた。
_91形は▲同金寄と取りそうなものだ。しかしこの取り方には恐るべき狙いが秘められている。仮に図で△2五銀なら、▲5六金!が必殺の一手。△同馬なら▲6一竜と入って王手飛車取り。以下△4一歩▲7二竜(図)と飛車を取ったとき、先手玉は馬のラインから金を逃しているため詰まない。
B7八ではなく7七に金が残っているから可能になる変化だ。検討では、先手玉に詰み筋があるかどうかがポイントになっている。棋士たちの口から符号が飛び交う。
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(文)

_84目がくらむ手順が続いている。羽生三冠が▲6八飛と回ると、渡辺竜王は飛車成りを受けずに△4五角成(左図)! そして▲6三飛成にはすぐに△6九銀(下図)と切り返した。なんという手順か。
_86▲7二竜と飛車を取るのは△7八銀成▲同金△同馬▲同玉△6六桂以下詰み。▲6九同竜なら△6八歩▲同竜△6七歩と連打で止めて、攻めが遅くなるというわけだ。予想外の手の連続に、控室でも驚きの声が上がっている。
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(控室に中村太地六段=左から2番目、佐々木勇気四段=左から3番目、が来訪。検討に加わった)

(文)

_83羽生三冠は55分の長考で▲6八飛(図)と回った。次の飛車成りを見て調子がいいが、控室の検討では△6四桂で「意外に難しいのでは」と言われていた。以下▲5三金△同金▲同桂成△4四角▲2四歩△7六桂▲9八玉△6八桂成▲2三歩成△9七銀▲同桂△8九銀(参考図)と進むと、なんとこれは先手玉が詰んでしまう。
A先手は上から押さえる自然な寄せを目指したが、後手の反撃が急所をついた。この変化を見ると、△6四桂が受け一方の手ではなく、角のラインと組み合わせて厳しい攻めになることがわかる。手順中△9七銀が鋭い手で、▲同玉は△5三角で要の成桂を抜かれてしまう。参考図以下は▲8九同玉△7八成桂▲同金△8八金から詰みがある。

羽生三冠は△6四桂と受けられたとき、どう攻めるのだろう。
(文)