2011年3月

2011年3月 6日 (日)

17時、大盤解説会では「後手が困っているのでは」と解説されている。観客はどことなく「中飛車持ち」のムードだ。

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(青野九段。「いつの間にか先手ペースになってますね」)

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(近藤六段。「少なくとも後手勝ちやすいから後手勝ちにくいに変わってますよ。竜王、焦ってますよね。これは」)

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(矢内女流四段。「前に近藤先生が『竜王が焦る展開になる!』って言ってたんですけど、その通りになりましたね」)

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(17時頃の対局室の様子)

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図は16時50分頃の局面。検討を進めるうち、控室では先手持ちの声が高くなってきた。深浦九段は次のように話す。「先手は▲7六金や▲2八玉など、指したい手がいっぱいあります。久保棋王は指せば指すほど楽になっていくんですね。渡辺竜王は金銀4枚の囲いができているので斬り合いたいんですが、相手が応じてくれないと難しそうです。うーん、▲5四銀成~▲6四成銀は見事なクリンチワークでしたね」

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16時10分頃、久保棋王は▲6三銀(上図)とこちらに銀を打った。▲4三銀は直接的に攻める手だが、この▲6三銀は▲5四銀成からもたれて指す狙い。相手の手に対応しながら展開を探るような手だ。渡辺竜王は△8二飛と逃げ、以下▲5四銀成△5三歩▲6四成銀(下図)と進んだ。
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控室の深浦九段は「△8六歩は▲7四成銀。そこで角を引くようでは……うーん。△8二飛ではなく△7三飛の方がよかった気がします」と話す。控室では、上図のときに飛車の逃げ場所は△7三飛で検討されていた。後手の指し方が難しいようだ。久保棋王が一気に攻める順を見送ったため、流れは緩やかになった。だが局面は複雑になっている。この成銀で後手の大駒を押さえ込めれば、4筋・3筋で圧力をかけている歩がものを言ってきそうだ。

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(継ぎ盤で検討中の青野九段(左)、深浦九段(右))

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図は15時45分頃の局面。ここで久保棋王は▲3五歩と突いた。△同銀は▲3六歩で銀が取れるので△2三銀引(下図)と引く。気持ちのいい利かしのようだが、プロの見解は違うようだ。「△2三銀引と引く感触が非常にいいので、▲3五歩は先手そうとうやりずらいです」とは、棋譜解説チャットの佐藤六段の言。
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次に▲4三銀という狙いが見えている。佐藤六段は「(▲3五歩は)仕方なかったのでしょう。久保棋王は▲4三銀で体を預けたときに、うまく指されて負けたらしょうがないという心境だと思います」と分析する。▲4三銀から金を取れば▲8三金という狙いがあるが、銀を渡すと後手にも△5八銀が生じる。攻めるべきかひと呼吸置くべきか、悩ましい局面のようだ。

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(15時30分頃の解説会場。立ち見が増えている)

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(後ろの方には急遽席が設けられた)

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(スクリーンに映る対局室の様子)

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(大盤解説は新潟大学将棋部のOB・OGペアに交替)

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(早川俊さん。新潟のアマ強豪だ)

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(新潟市制作企画部の鴨井理紗さん)

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14時30分、控室では大盤解説を担当する近藤六段と矢内女流四段が休憩中。近藤六段のまわりでは自然と相好がくずれるのか、控室では笑いが絶えない。

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(休憩中の二人。近藤六段のトークのおもしろさに、「ステージを降りて観客席で聞こうかと思いました」と、矢内女流四段)

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(本対局協賛の株式会社ブルボンから、控室に差し入れ)

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図は14時頃の局面。2八にいた金を3八へ寄ったところだ。桂を跳ねた形が安定していないので、銀冠に構えて形を整えた。ただし穴熊から銀冠への組み換えは手損。予定変更の非常手段という印象だ。なんとか4筋の位を生かして攻めようとする、久保棋王の苦心が垣間見える手順。いっぽうの渡辺竜王はがっちりと穴熊に囲って万全の迎撃態勢。先手が動いてきたところで「うまくパンチを合わせられれば優勢、というのが後手の考え方」とは佐藤紳哉六段の言だ。

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(手順に工夫を凝らす久保棋王。写真は対局再開時の様子)

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