2024年3月17日 (日)

240317_063少し前までは△6四角が後手の狙い筋でした。後手のほうが手持ちの角を有効に使えそうだったからです。しかし、伊藤七段が7筋で動きを見せたことで、にわかに状況が変化しました。図から△6四角▲同角△同歩は先手の手番。▲7三歩成△同桂▲7四歩を絡めて、先手が攻めていけそうです。後手としては、もはや△6四角は指しづらく、△5五歩が予想されています。

ただ、△5五歩だけで事が収まるものでもなく、その後も難しそうです。「一手一手に分岐があり、間違いは許されない。中盤の難所です」と広瀬九段。藤井棋王は長考に入りました。伊藤七段は残り49分。藤井棋王は1時間28分を残していましたが、この長考で残り1時間を切りそうです。

Dsc_7175_2(広瀬九段が大盤で解説中)

Dsc_7176(聞き手は北尾女流二段)

(牛蒡)

現地では指導対局も続いています。

Dsc_7151(鈴木九段は「いいね、その手は最高!」とほめて指導)

Dsc_7123(佐々木勇八段は攻めることの大切さを伝えていた)

Dsc_7115(小高女流初段は子どもに飛車落ち定跡を伝授)

(牛蒡)

240317_059控室では棋士数人が継ぎ盤を囲み、図の局面を検討していました。後手持ちの声が多かったように思います。

「先手は▲8七歩を打たずに▲7九玉(図)と頑張りました。ということは(1)△6四角には▲同角△同歩▲8三歩△同飛▲7二角△8二飛▲6一角成のように対応するのだろうと思います。後手としてもリスクのある順です。危ないと思えば(2)△3一玉も有力です」(広瀬九段)

広瀬九段は△3一玉が第1候補と話していました。

Dsc_6973 

Dsc_6974(継ぎ盤の前に片上七段、奥に鈴木九段)

Dsc_6996(長谷部五段が駒を動かす。奥に広瀬九段)

(牛蒡)

340317_050

現地では現在、島九段と長谷部五段が大盤解説を務めています。後手の2歩損と歩切れ、先手陣の形の悪さ(2六銀・3五歩・3六飛)などをポイントに解説していました。

図の局面。後手は次に△8六歩▲同歩△同角で歩切れ解消を狙っています。以下▲8七歩△6四角▲同角△同歩と進むと、互いに角の打ち込み(▲6三角と△2七角)が生じますが、△2七角のほうが大きな手になりそうです。たとえば△2七角に▲3九飛は△4九角成▲同飛△3八金▲5九飛△4八金で飛車が詰みます。2六銀・3六飛の形の悪さがたたっています。

したがって先手は図で△8六歩を防ぎたいのですが、味のよい受けがあまり見当たりません。最も自然な▲7七銀は△5二飛▲4六角△4五歩が気になります。

先手は3五歩の形もあまりよくありません。歩がひとつ伸びて3四歩型であれば、▲2五歩△1三銀▲3五銀で一気に先手が好形になるのですが……。「▲3四歩の1手が足りていないから(後手は2歩損でも)均衡が保たれているのですね」と島九段。図で▲3四歩はもちろん△8六歩です。

Dsc_6886(大盤で解説する島九段)

(牛蒡)

240317_044昼食休憩の局面で長谷部五段に見解を聞きました。

「藤井棋王が序盤で角換わりを拒否しました。嬉野流になるかと思いましたが、21手目▲2七銀に△4四銀ではなく△4四歩でしたね。これで実戦例の少ない形になりましたが、△4四歩自体は有力とされています」

「上図で後手は銀を手放したので、ゆっくりした展開になりそうです。6五の銀は一見すると不安定ですが、△5五歩と突けば生還できます。先手は△3五銀から△7六銀をどう防ぐか。図から▲3六飛△1三角に▲2六銀は自然ながら、この銀は少し打ちにくいです。ほかに△3五銀を防ぐ手段があるのかどうか。個人的にはそこに注目しています」

Dsc_6426(指導対局中の長谷部五段)

(牛蒡)