棋王初獲得、六冠達成の記者会見をご紹介します。
【藤井聡太新棋王インタビュー】
――棋王を獲得して史上2人目、最年少の六冠になった。いまのお気持ちは。
対局が終わったばかりでまだ獲得できた実感はそれほどあるわけではないんですが、棋王戦ではいままであまりよい成績が残せていなかったので、今期五番勝負に出場することができて、本当に大変な将棋ばかりでしたが、結果を残すことができたのは非常にうれしく思っています。
――棋王を初めて獲得した。
前期まで挑戦のチャンスをつくることが難しい状況が続いていたので、今期は挑戦ができただけでも自分としてはうれしい結果だったんですけど、五番勝負でもよい結果につなげられて、少し驚きというところもありますけど、うれしく思っています。
――10連覇中の渡辺棋王に挑戦した。シリーズを振り返って。
シリーズ通して角換わりの定跡形で序盤から中盤にかけてテンポよく進む将棋が多かったんですけど、中終盤はどれも非常に難しくて、適切な判断ができなかった局面も多かったと思うので、そういった難しい局面をより多く考えられたという意味では収穫の多いシリーズだったと感じています。
――これでまた八冠に前進した。
直接そこを目指す意識はありませんし、実力的にもまだまだ足りないところが多いと思いますので、まずは引き続き実力を少しでも高めていけるように取り組んでいければと思います。
――栃木県、日光という場所について。
道中も楽しく来ることができましたし、対局場も素晴らしいところで集中して対局に臨めたと感じています。大盤解説会も遅くまで多くの方にご来場いただいて、栃木県の将棋ファンの方の熱気を感じることができたかなと思います。
――今回の対局には多くのファンが集った。
今回は対局だけでなくとちぎ将棋まつりも開催していただいて、多くの方に将棋を楽しんでいただいた一日になったのかなと思いますし、自分自身もファンの方の熱気を直に感じることができて励みになりました。
――王将戦の祝勝会が大田原市で行われる。
大田原市で祝勝会を開催していただくということでうれしく思っています。ファンの方と楽しいひとときを過ごせればと思っています。
――第3局は終盤で悔しい敗局になったかと思う。本局に向けて学びになったか。
中盤から自玉が思っていた以上に不安定な形になってしまって、まとめることが難しかったところがあると思うので、本局は自玉の安全とうまくバランスをとって指していければと思ったんですけど、途中で攻め合いに出るタイミングをいくつか逃してしまったと思うので、そのあたりのバランスというか調整が必要なのかなと思います。
――マスクのない対局は久しぶりだったと思う。違いはあったか。
対局規定で着用が任意になって、ある程度それに合わせてと思っていたんですけど、いままでと比べて違うかどうかは一概にはいえないと思いますが、集中して臨むことはできたかなと思います。
――タイトル獲得数が通算13期となり、森内俊之九段の記録を抜いて歴代7位になった。
森内九段は自分が将棋を始めた頃に名人戦を中心に活躍されていて目標とする方の一人だったので、タイトル数だけで比較できることはないと思うんですけど、一つ一つ積み上げられてきたことはよかったかなと思いますし、実績のある棋士の存在を見ると自分はまだまだ未熟なところが多いのかなと感じています。
――以前は一分将棋に入る印象が多かったが、今日は時間を残していた。意識を変えたところはあったか。
基本的には残り時間よりも局面のほうが重要なので、判断が難しい局面になれば時間を使って納得いくまで考えたいと以前から思っているんですけど、早い段階で使いすぎてしまうと、一局を通して見たときにかえって納得いくまで考えることが難しくなってしまうと思うので、一局を通してなるべく実現できる時間配分ができれば一番いいのかなと考えています。
――本日放送のNHK杯で優勝を決め、年度内の一般棋戦を全制覇した。実力的に少し足りないというのはどういうところか。
早指し棋戦ではいままであまり結果が出せていなかったんですけど、今期はいままでより決断よく指そうと意識して結果を残すことができたのでうれしく思っています。最近の佐々木さん(勇気八段)との将棋は非常に難解な局面を迎えることが多くて、考えてもうまく判断できない局面が増えている印象があるので、そうした難しい局面でも的確に判断できる力が必要になるのかなと思っています。
――タイトル初挑戦を新幹線の名古屋駅とすると、東京を終点として六冠達成はどのあたりになるか。
うーん、初挑戦したときからタイトルを増やすことはできているんですけど、内容は大変なところが多いので、あまり近づいている感覚はそれほどないのかなと思います。なので、どれくらい……(笑)。静岡くらいということでお願いします。
――最後にファンの方にメッセージを。
本局は中盤以降踏み込む機会を逃してしまったところもあったんですけど、一局を通して粘り強く戦うことができたのかなと感じています。棋王戦シリーズ全体を振り返っても難しい将棋が多かったと思うので、しっかり振り返ってそれを生かせるように頑張りたいと思います。また4月から名人戦と叡王戦の2つのタイトル戦が始まりますので、そちらもしっかりいい状態で迎えて、よい将棋にできるように頑張っていきたいと思います。