2016年2月10日 (水)

前夜祭(4)

【決意表明】

Img_7658挑戦者・佐藤天彦八段。

「このような盛大な前夜祭を催していただき、ありがとうございます。共同通信社さま、愛媛新聞社さまに厚く御礼申し上げたいと思います。
今日は松山が初めてで、愛媛も初めて、四国も初めてなんです。私が愛媛で連想したのが、道後温泉とみかんです。空港から来るときに、松山城が見えたんですね。丘の上にあったので、見上げるような形になったのですが、渡辺さんを連想しまして。渡辺さんは、お互い10代のころから親しくさせていただいて。渡辺さんは私が奨励会員のころはプロ棋士。私がプロ棋士になったころには、すでにタイトルを獲得していました。私も松山城を見上げるように、渡辺さんを見上げてきました。それを一歩、一歩近づけてというか、こういったタイトル戦で戦えるようになったので、そういう意味で、明日は今までの積み重ねを大事にしながら、いい将棋を指せればと思います。今日はみなさん、どうもありがとうございました」

Img_7671渡辺明棋王。

「本日はこのような盛大な前夜祭を催していただきまして、大勢のみなさまにお越しいただき、ありがとうございます。地元の愛媛新聞社さま、関係各位のみなさまには、厚く御礼申し上げます。
こちらには、以前、1度だけ来たことがあります。10年ほど前ですが、別のタイトル戦で来まして、そのときはまだタイトル戦にも慣れていなかったので、あまり町並みを楽しむ余裕はありませんでした。なので、あまり覚えていなかったのですが、今日、来てみて、こんなんだったっけという感じです。それから10年経ちまして、大舞台にも立たせてもらって、それなりに周りを見渡す余裕も出てきました。
今回の棋王戦は、私にとっては4連覇を目指す戦いになるのですが、挑戦者に佐藤天彦くんを迎えまして、彼とは付き合いも長いですが、このような大舞台で技を競い合えるということに感謝しながら、五番勝負を戦いたいと思います。親しい間柄の棋士とタイトル戦で戦うというのは、あまり経験がありません。いままで戦ってきた人が、あまり親しくないとか、そういうわけではないのですが(笑)。特別、普段から遊ぶような仲の人とタイトル戦を戦うというのは初めてなのですが。もちろん、今までとは違う気持ちもありますし、勝負はどちらかが負けますので、そういったやりにくさはあるのですが、将棋の世界は八百長がありません。すべてが真剣勝負です。いくら仲がよくても、大きなタイトル戦の舞台で、お互い潰しあうような気持ちで割り切って、今回は戦いたいと思います。それで将棋が熱戦になり、みなさんに楽しんでいただければと思っています。
明日は祝日ということもあり、大盤解説会も満員と聞いております。松山では10年ぶりの棋王戦ということで、みなさんに満足していただけるような内容の将棋を目指して頑張りたいと思います」

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【対局展望談義】

Img_7689立会人・久保利明九段。

Img_7703大盤解説会解説者・山崎隆之八段。

Img_7712大盤解説会聞き手・室田伊緒女流二段。

室田 よろしくお願いします。振り駒もまだ行われていませんので、先後も分かりませんが戦型予想からお願いします。

久保 挑戦者の佐藤さんが先手だと角換わりかなと。棋王の渡辺さんが先手なら横歩取りになると思います。

山崎 さきほど、こどもの「得意戦法は何ですか」という質問に佐藤さんは素直に「横歩取りです」と答えていました。なので渡辺棋王が先手なら、横歩取りですね。まず振り駒を見てみないと分からないというところはありますね。

室田 愛媛のほうは、お2人は何回くらい、いらしてますか。

久保 4~5回くらいですね。すごく良くしていただけるかたが、たくさんいらっしゃるので。私にとってはすごくいい場所かなと。
室田 お仕事ですか。

久保 そうですね。仕事でも来ましたし、プライベートでも。坊っちゃんスタジアムで野球をやらせてもらいました。そのときはピッチャーでした。すごくいい思い出です。

山崎 私も何度か来ています。ただ道後温泉の近くに止まらせていただくのは今回が初めてです。松山城は丘の上にあるというのは、初めて知りました。佐藤さんはよく見ていて、松山城を渡辺さんに例えて、一歩一歩近づいているという、自信のコメントで。落ち着いているなと思いました。

室田 明日の見どころを山崎先生からお願いします。

山崎 タイトルの実績といえば渡辺さんで、棋王が勝つといっていれば無難だったのですが、この2年の佐藤さんの強さというか、トップレベルでいうと異常な勝ちっぷりです。タイトル戦というと渡辺さんにノリたい気持ちもありながら、この1~2年の活躍ぶりと対戦成績がほぼ互角ということ考えれば、勝敗が読めません。
また2人が素敵だなと思うのは、初対戦が8年前の棋王戦の本戦だったんですね。8年掛けて、頂点のタイトル戦でめぐり合えるのは、2人の関係が少しうらやましいです。そういった中で、どういう感情で戦うのか、トップになるってどういう感情なんだろうと。それは僕では分からないので久保先生に。

久保 親しい仲で、タイトルを戦うというのは、本当にないんですよ。私も渡辺さんとタイトル戦を戦ったことがありますが、親しい仲かというと、そうでもないんですよ。先輩、後輩でもありますからね。私も普段からよく遊ぶ仲間とタイトル戦をやったことはありませんし。そういった関係の2人が、どう五番勝負を始まって終わるのか、非常に興味があります。佐藤さんはすごく勝っていますし、渡辺さんはタイトル戦に照準を合わせてきているでしょうし。本当に明日からの五番勝負は見どころが多い戦いになりそうです。



【閉会挨拶】

Img_7718今井俊朗・愛媛新聞社取締役。

対局は11日(木・祝)、9時開始です。
明日もお楽しみに。

(書き起こし=吟)
(八雲)