2023年3月19日 (日)

棋王初獲得、六冠達成の記者会見をご紹介します。

Dsc_4025(栃木の名産品・イチゴにちなんだ記念撮影)

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【藤井聡太新棋王インタビュー】

――棋王を獲得して史上2人目、最年少の六冠になった。いまのお気持ちは。

対局が終わったばかりでまだ獲得できた実感はそれほどあるわけではないんですが、棋王戦ではいままであまりよい成績が残せていなかったので、今期五番勝負に出場することができて、本当に大変な将棋ばかりでしたが、結果を残すことができたのは非常にうれしく思っています。

――棋王を初めて獲得した。

前期まで挑戦のチャンスをつくることが難しい状況が続いていたので、今期は挑戦ができただけでも自分としてはうれしい結果だったんですけど、五番勝負でもよい結果につなげられて、少し驚きというところもありますけど、うれしく思っています。

――10連覇中の渡辺棋王に挑戦した。シリーズを振り返って。

シリーズ通して角換わりの定跡形で序盤から中盤にかけてテンポよく進む将棋が多かったんですけど、中終盤はどれも非常に難しくて、適切な判断ができなかった局面も多かったと思うので、そういった難しい局面をより多く考えられたという意味では収穫の多いシリーズだったと感じています。

――これでまた八冠に前進した。

直接そこを目指す意識はありませんし、実力的にもまだまだ足りないところが多いと思いますので、まずは引き続き実力を少しでも高めていけるように取り組んでいければと思います。

――栃木県、日光という場所について。

道中も楽しく来ることができましたし、対局場も素晴らしいところで集中して対局に臨めたと感じています。大盤解説会も遅くまで多くの方にご来場いただいて、栃木県の将棋ファンの方の熱気を感じることができたかなと思います。

――今回の対局には多くのファンが集った。

今回は対局だけでなくとちぎ将棋まつりも開催していただいて、多くの方に将棋を楽しんでいただいた一日になったのかなと思いますし、自分自身もファンの方の熱気を直に感じることができて励みになりました。

――王将戦の祝勝会が大田原市で行われる。

大田原市で祝勝会を開催していただくということでうれしく思っています。ファンの方と楽しいひとときを過ごせればと思っています。

――第3局は終盤で悔しい敗局になったかと思う。本局に向けて学びになったか。

中盤から自玉が思っていた以上に不安定な形になってしまって、まとめることが難しかったところがあると思うので、本局は自玉の安全とうまくバランスをとって指していければと思ったんですけど、途中で攻め合いに出るタイミングをいくつか逃してしまったと思うので、そのあたりのバランスというか調整が必要なのかなと思います。

――マスクのない対局は久しぶりだったと思う。違いはあったか。

対局規定で着用が任意になって、ある程度それに合わせてと思っていたんですけど、いままでと比べて違うかどうかは一概にはいえないと思いますが、集中して臨むことはできたかなと思います。

――タイトル獲得数が通算13期となり、森内俊之九段の記録を抜いて歴代7位になった。

森内九段は自分が将棋を始めた頃に名人戦を中心に活躍されていて目標とする方の一人だったので、タイトル数だけで比較できることはないと思うんですけど、一つ一つ積み上げられてきたことはよかったかなと思いますし、実績のある棋士の存在を見ると自分はまだまだ未熟なところが多いのかなと感じています。

――以前は一分将棋に入る印象が多かったが、今日は時間を残していた。意識を変えたところはあったか。

基本的には残り時間よりも局面のほうが重要なので、判断が難しい局面になれば時間を使って納得いくまで考えたいと以前から思っているんですけど、早い段階で使いすぎてしまうと、一局を通して見たときにかえって納得いくまで考えることが難しくなってしまうと思うので、一局を通してなるべく実現できる時間配分ができれば一番いいのかなと考えています。

――本日放送のNHK杯で優勝を決め、年度内の一般棋戦を全制覇した。実力的に少し足りないというのはどういうところか。


早指し棋戦ではいままであまり結果が出せていなかったんですけど、今期はいままでより決断よく指そうと意識して結果を残すことができたのでうれしく思っています。最近の佐々木さん(勇気八段)との将棋は非常に難解な局面を迎えることが多くて、考えてもうまく判断できない局面が増えている印象があるので、そうした難しい局面でも的確に判断できる力が必要になるのかなと思っています。

――タイトル初挑戦を新幹線の名古屋駅とすると、東京を終点として六冠達成はどのあたりになるか。

うーん、初挑戦したときからタイトルを増やすことはできているんですけど、内容は大変なところが多いので、あまり近づいている感覚はそれほどないのかなと思います。なので、どれくらい……(笑)。静岡くらいということでお願いします。

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――最後にファンの方にメッセージを。

本局は中盤以降踏み込む機会を逃してしまったところもあったんですけど、一局を通して粘り強く戦うことができたのかなと感じています。棋王戦シリーズ全体を振り返っても難しい将棋が多かったと思うので、しっかり振り返ってそれを生かせるように頑張りたいと思います。また4月から名人戦と叡王戦の2つのタイトル戦が始まりますので、そちらもしっかりいい状態で迎えて、よい将棋にできるように頑張っていきたいと思います。

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(撮影=紋蛇、書き起こし=文)

終局直後のインタビューを終えて、両対局者は現地大盤解説会で挨拶をしました。大盤を使って少し感想戦も行われ、会場は両雄の言葉に耳を傾けていました。

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(紋蛇)

Dsc_3886(終局直後)

Dsc_3891(藤井竜王は棋王を奪取。史上最年少の六冠を達成した)

Dsc_3918(敗れた渡辺棋王。連覇は10で途絶えた)

【藤井竜王の談話】

――本シリーズで、角換わりは4局目でした。渡辺棋王の▲5六角に△6五歩から△4四角と反撃として中盤戦です。あの辺りはどうでしたか。

藤井 (▲4五桂の仕掛けに)△2二銀と引いて、しばらく壁銀が残ってしまう形なので、うまくバランスがとれるかどうかと思って指していました。

――▲8三桂に長考されました。

藤井 ▲8三桂と打たれて、△6五歩は自然に駒をさばけてしまう感じがあるのであまり指したい手ではなかったんですが、ほかの指し方も難しいのかなと思ってやっていました。

――▲5六香に△5四歩▲同香△5二歩と受けましたが、検討では△5二歩に代えて△4七銀も出ていました。

藤井 △4七銀と打っていくか迷ったところだったんですけど、本譜はそのあと結構攻め続けられて、最終的に角を取られてしまう形になってしまったので、攻め合いにいくタイミングをうまく図れなかったのかなという気がしています。

――終盤はどちらが勝つか分からない大熱戦でした。

藤井 終盤はずっとどうなっているかわからないままやっていました

――勝ちを意識されたのは?

藤井 △7六銀と打って、攻めが続く形になったかと思いました。

――本局の全体の感想をお願いします。

藤井 駒割りや陣形が非対称な将棋で、判断の難しい局面が続いた一局だったかと思います。

――本シリーズを総括してください。

藤井 角換わりの将棋で、非常に難しい将棋ばかりだったと思うので、しっかり振り返って次につなげていけたらと思います。

――棋王位を奪取されました。

藤井 本局は最後までまったくわからないまま指していたんですけど、何とかよい結果を出すことができて、うれしいです。

――羽生九段に続いて2人目、そして史上最年少の六冠となりました。

藤井 まだまだ棋力的に足りないところが多いと思うので、立場にふさわしい将棋を指せるように一層、頑張らないといけないのかなと思います。

――今年度(2022年度は2022年4月~2023年3月)の対局はすべて終了しました。振り返っていかがでしょうか。

藤井 7月以降は対局の多い時期が続いたんですけど、そのなかで勝負強く指すことができたのは収穫だったかなと思います。

――新年度の抱負をお願いします。

藤井 4月から名人戦をはじめに重要な対局が続くので、そのなかで少しでも強くなれるように頑張っていきたいと思います。

【渡辺棋王の談話】

――▲5六角や▲8三桂と工夫したあたりはどうでしたか。

渡辺 そうですね。その局面になったらやるつもりだったんですけど、ちょっと変な手なので、あまり成算はなかったですね。

――本局のポイントはどの辺りですか?

渡辺 分かれが駒損になってしまったので、その分だけずっとつらいのかなと。駒損をなかなか解消できなかったので。

――終盤はいかがでしたか。

渡辺 もうちょっとあった気はするんですけど、もう少し息長く指す手があったかどうかわからないですけど、その辺りの判断が。ちょっと駒損なので、息長く指していいことがあるかどうか、分からなかったですね。

――本シリーズを振り返ってください。

渡辺 負けてしまった将棋があまりチャンスがなかったので、もう少しチャンスがある将棋にしないとなかなか結果はついてこないですね。

――これまでの10連覇を振り返っていかがだったでしょうか。

長い年月(五番勝負に)出場させてもらったので、色々な思いではありますけれども、また出場できるようにやっていきたいと思います。

――4月からの名人戦の抱負をお願いします。

渡辺 あまり間をおかずにという形になるので、今回の棋王戦を振り返りつつ向かっていけばいいかなと思います。

(紋蛇)

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五番勝負第4局は藤井竜王が渡辺棋王に勝ち、3勝1敗で棋王位を奪取しました。終局時刻は19時24分。消費時間は▲渡辺棋王3時間59分、△藤井竜王3時間57分。藤井竜王は初の棋王位獲得とともに六冠達成。20歳8ヵ月での達成は羽生善治九段を抜いて史上最年少の記録です。

(文)