【勝った糸谷八段の談話】
ーー本局を振り返っていかがでしたか。
糸谷 ▲7五角が工夫というか変化した手なんですが、どうだったかわからないんですけど、▲8五金から何とか飛車と馬を押さえ込むのに成功してちょっとよくなったかなと。
ーー優勢を意識したのはどの辺りですか。
糸谷 ▲4八玉と上がったところは少し指しやすいのかと思いました。
ーー棋王戦本戦を振り返って印象深い対局はありましたか。
糸谷 対局という形ではないんですけど、最後のほうは角換わり早繰り銀を採用してある程度結果が出せたので、ちょうどよくこの戦法がなじんできてよく指せたのではないかと思います。
ーー棋王戦は初めての挑戦になります。
糸谷 そうですね、タイトル戦自体が久しぶりなので、またタイトル戦の舞台に出られることに感謝ですね。時間も短いので、普段と変わらないような心持ちでやれればと思います。
ーー渡辺明棋王の印象は。
糸谷 ますます充実されているイメージです。前回のタイトル戦(竜王戦)でも1勝4敗で負かされた先生ですので、渡辺明棋王の強さは骨身に染みてわかっているほうだと思います。挑戦者として堂々とやっていければと思います。
ーー残念な結果となりましたが、一局を振り返っていかがでしたか。
広瀬 激しい将棋になって難しいと思ったのですが、▲7五角は△6七歩が入るので危ないのかなと思っていたんですけど、大長考してもいい変化が見つからなかったです。タイミングを誤って組み合わせの中でいちばん悪いものを選んでしまったかもしれないです。
ーー1時間45分の長考がありましたが、相当難しかったですか。
広瀬 何かあると思って調べていたんですが、あの局面になってみると発見できなかった。もうちょっと難しい順はあったかもしれません。






17時10分の局面です。糸谷八段の玉は上部に抜け出せる格好となり、広瀬八段は駒不足の感が否めません。また、次に▲6三歩△6一金▲6二金と平凡に迫る手が厳しく、形勢は糸谷八段が勝勢です。
糸谷八段に、これぞまさに攻防手という角打ちが出ました。▲8五角は自陣に利かしながら▲5二桂成を厳しくした一着。後手玉が詰めろかは難しいですが、△7九飛には▲5二桂成△同飛▲3七金として先手が勝ちそうです。どこかで▲7四角打と力を足す手もまた攻防手で魅力的ですね。
16時を回ってパタパタと手が進みました。この▲6四桂が厳しい一着です。先手玉は妙に広く、後手玉は狭さが目立ちます。玉の安全度は先手がまさっているでしょう。形勢は糸谷八段がリードしたと見られています。
中盤戦の揉み合いが続いています。上図△6三桂の両取りに対し、糸谷八段は「両取り逃げるべからず」と▲8四金と指しました。力強い進軍です。

上図の局面。ここではまず△6三桂の両取りと△6五桂が考えられます。どちらも有力そうに見えます。(1)△6三桂は▲6四歩△7五桂▲6三歩成△同金▲同飛成△7三馬の進行でどうか。(2)△6五桂は▲6七飛と払われたときに厳しい手があるかどうか。第三の手として(3)△8四歩もあるようです。この歩を取るのは駒損になるので▲8六金ですが、△7四馬と圧をかけていきます。どれもありそうです。中盤の勝負どころを迎えています。