2016年3月 6日 (日)

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定刻9時に対局が始まりました。ふたりとも1手ごとに時間を使って指し進め、渡辺棋王は4手目△5四歩から図の△5二飛とゴキゲン中飛車を採用しました。居飛車党の渡辺棋王としては意外な戦型。棋王戦では第39期五番勝負第2局以来の採用です。
(銀杏)

おはようございます。本日の新潟市は晴れ。予想最高気温は19度と暖かいです。

Dsc_8788(ホテルの目の前には信濃川が流れている) 

本日のスケジュールは下記の通りです。

09:00 対局開始
10:00 おやつ
11:00 現地大盤解説会開始
12:00~13:00 昼食休憩
15:00 おやつ

(紋蛇)

【現地大盤解説会】
日時:3月6日(日)11時開始
場所:新潟グランドホテル3階「悠久の間」
解説:田中寅彦九段
聞き手:藤田綾女流初段
参加費:無料
HP:http://www.niigata-nippo.co.jp/life/event/other/20160222237184.html

【関西将棋会館・大盤解説会】
日時:3月6日(日)17時30分開始
解説:浦野真彦八段
聞き手:北村桂香女流初段
参加費:1500円(道場利用者・支部会員・学生・女性には割引あり)
HP:http://www.shogi.or.jp/kansai/club/kaisetsukai.html

【ニコニコ生放送】
日時:3月6日(日)9時開始
解説:阿久津主税八段
聞き手:飯野愛女流1級
 HP:http://live.nicovideo.jp/watch/lv248251923

(紋蛇)

Dsc_8764 (最後は見どころ紹介。司会は藤田女流初段が務めた)

田中「明日は立会人だけでなく解説もさせていただきます。どちらが勝つかは将棋界の今後を占う勝負ではないかと思います。ふたりは仲がいいだけでなく、人間ができていますね。非の打ちどころがない決意表明でした」

青野「若い人が挑戦者にならないといけません。それで先輩が後輩に負けてなるものかという構図がいいんですね。結構有名な話ですが、羽生さんと渡辺さんの最初のタイトル戦で、羽生さんが勝ちになったときに手がブルブル震えたんですね。後輩にタイトルを持っていかれるのは嫌なんです。後輩に負かされるとタイトルが回ってこないかもしれないという危機感があるんですね。渡辺棋王は自身よりも若い人のタイトル挑戦を受けるのは初めてです。なので、今回のタイトル戦はこれまでと全然違うと思いますよ」

田中「ふたりは仲がいいといわれていますけど、盤上は壮絶な戦いになると思います」

青野「佐藤八段が若い若いといいますが、渡辺さんは20歳でタイトル取りました。ですので、佐藤さんがいまタイトルを取ってもなんら不思議ではない年齢なんですね」

田中「私は佐藤八段と同じ年齢でA級八段になったんです。それで彼はタイトル戦に出て、私はA級から1年で落ちてしまった。うらやましい気持ちもあります。彼は非常にまじめで、将棋に向かうためにいろいろとコントロールができています」

青野「佐藤八段はここ最近ですごく伸びました。将棋は相手にどれだけ威圧感を与えられるかが大事です。あいつはすごい、あいつに負けるなら仕方ないと思わせることですね。羽生さんはそういう感じで勝ってきましたからね。
例えば、不利な局面で夕食の注文がきたときに、相手が弱いと思えばカツ丼やうな重を食べて夜も頑張ろうと思うこともできます。でも逆に、相手が強いから粘っても勝てないと感じて、軽めなものを食べようと考えるのでは全然違います。将棋はどこかで失速するとたいしたことがないと思われてしまいがちですが、佐藤八段は誰もかなわないというくらいに勝ちまくっています」

田中「半年に3回も棋戦挑戦はとんでもないこと。いまいちばん強い棋士といってもいいかもしれません。タイトルホルダーはいまではなく去年強かった棋士という考え方もできます。そういう意味でタイトル戦は、挑戦者のほうが有利なことが多いんです」

青野「渡辺さんは相手の得意戦法でどうぞというタイプです。佐藤八段はおそらく第1局の負け方は納得いかなかったと思います。そういうときはもう1回同じこと指すことは考えられますね。棋士はそういう考え方をすることが多いと思います」

(写真=紋蛇、書き起こし=銀杏)

決意表明は渡辺棋王・佐藤八段の順に行われました。

Dsc_8698(渡辺棋王の決意表明)
本日は前夜祭にお越しくださり、ありがとうございました。
新潟県は私にとっても縁が深いところです。新潟市はもちろん、柏崎や上越、中学生のときにホームステイで糸魚川に行きましたし、湯沢のほうで対局したこともあります。
おそらくいったことがないのは新潟競馬場くらいかなと(笑)。新潟県は大体のところにいっています。タイトル戦でかなりの対局を新潟県で戦っています。残念ながらすべて勝っているわけではありませんが、勝った数は結構多くて大変相性のいいところです。

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今回の五番勝負は早いもので第3局です。五番勝負は始まるとあっという間にどんどん過ぎていく感覚があります。後輩の佐藤天彦くんを挑戦者に迎えました。彼とは親しくしていまして、家で遊んだり、ゲームをしたりした間柄です。いまこうして五番勝負で争うことは、当時のことを思うと感慨深いです。

天彦くんはこの1、2年でもっとも伸びた棋士で、春からの名人戦の挑戦者になりました。いつかは必ずタイトルを取ると思うんですけど、それは次の機会にしていただいて、今回の棋王戦は遠慮してもらえれば(笑)。

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それは冗談としましても、昔から知っている仲の棋士と大きな舞台を用意してくださり、技を競い合えることはうれしく、やりがいがあります。
その中で、互いに将棋がますます高まっていけると思います。いい機会を与えてくださったので頑張りたいです。

明日は年に1回の新潟対局を楽しみにしてくださっているファンの方が多く観戦にこられると思いますので、期待を裏切らないように力いっぱい指したいと思います。短い滞在ですが、どうぞよろしくお願いします。

Dsc_8734(佐藤八段の決意表明)
僕にとって棋王戦は第1局の松山と第2局の金沢は初めてでした。新潟は別のタイトル戦できたことがあって、2回目になります。そのときはあまり見て回れなかったのですが、おいしいお米をいただいたことが印象に残っています。

私は出身が福岡。そこから千葉に出てきて、そのあとに東京で一人暮らしという感じです。雪とは縁の薄いところに住んでいました。前回のタイトル戦で新潟を訪れたときは冬ではなかったので、今回は新潟の雪景色に期待と不安があったのですが、きてみたら暖かかったのは驚きました。雪を見るのはまたの機会に持ち越されましたが、寒いよりは暖かいほうが対局する側としてはありがたいので、そちらに合わせてもらったのかなと思います。

Dsc_8735五番勝負は第3局を迎えまして、渡辺さんもおっしゃっていましたが、10代のころからの友人です。渡辺さんはタイトルを持つなどの活躍していて、僕としても目標としてきた存在です。その形からすると、ふたりでタイトル戦を戦うなら、自分が挑戦していくしかないと思っていました。こうして実現できて、夢のようというと大げさかもしれませんが、仲のいいふたりでタイトル戦を戦えるということで、照れくさいですが、絆が深まるところがあるかもしれません。また、当たり前ですけど、あらためて手ごわさを感じることもあります。

今回の対局は、勝ったほうがタイトルにあと1勝になる一局です。
先ほど、渡辺さんが新潟は相性がいいとおっしゃっていましたが、第2局の金沢のときも相性がいいといわれてプレッシャーをかけられました。さすがにそんなことはもうないだろうと思ったのですが、まさか2局連続で同じようなことをいわれるとは思いませんでした(笑)。明日も金沢のときと同じようにジンクスを破れるように頑張りたいと思います。

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Dsc_8762 (健闘を誓い合って握手。ここで対局者は退場した)

(写真=紋蛇、書き起こし=銀杏)

Dsc_8603 (北窓隆子・新潟県副知事のあいさつ)

新潟は将棋に縁が深いところです。日本将棋連盟会長を務めた原田泰夫九段をはじめ、現役棋士では土佐浩司八段や近藤正和六段を輩出しました。
また、駒作りでは山形県の天童市がよく知られていますが、新潟県にも著名な駒師である大竹竹風さんがいまして、竹風さんの駒が明日の対局で使用されます。明日の対局が名局になるよう祈念しております。
新潟にお越しの将棋ファンの方には将棋とともに、新潟のおいしいお米やお酒などを味わっていただければと思います。

Dsc_8527_2 (少しして、お楽しみ抽選会が行われました)

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Dsc_8665 (王道。新発売された佐藤八段の扇子にも揮毫されている言葉です)

Dsc_8668 (「大望は、初めて竜王を獲ったときに書いた言葉です。これだけで満足しないで、さらに頑張ろうという意味を込めました」と渡辺棋王)

Dsc_8677 (新潟県在住の駒師、大竹氏(竹風)からは駒が贈られた。当選したファンは感動のあまり、しばらく大竹氏の手を握りしめていた)

Dsc_8688 (最後はサプライズで『将棋の渡辺くん』(伊奈めぐみ著・講談社)の第1巻。渡辺棋王の夫人が棋王の日常を描いた一冊で、佐藤八段も登場している。渡辺棋王は「ええ、これは自分のことが書いてあります」と照れくさそうに紹介した)

(写真=紋蛇、書き起こし=銀杏)