2011年3月 6日 (日)

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図は19時過ぎの局面。久保棋王は▲7五歩と飛角の焦点に歩を放った。100手目△5七歩のお返しだ。△同飛も△同角も、どちらかの大駒の利きが一瞬消える。ここに来て形勢不明。なんという戦いだろう。手数はまもなく150手に届く。控室では最長手数の対局が話題に。関係者が「300手を超えるものはありましたよね」と口を開くと、「それ、私が記録取りました。▲丸山-△屋敷戦(※)です」と深浦九段が答えた。

この対局もまだまだ終わりそうにない。

※……▲丸山忠久四段-△屋敷伸之棋聖、1990年9月、王座戦予選 (段位・肩書きは当時のもの)

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図は18時55分頃の局面。「形勢不明です」と深浦九段。少し前までは先手がかなり指しやすそうに見えたが、形勢は急接近。「逆転しているのでは」との声も。棋譜解説チャットの佐藤六段は「現在やや後手持ちです。後手玉非常に耐久力あります」とコメントしている。

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18時45分頃の局面。際どい場面が続いている。検討する深浦九段は「うーん、何が何だか……」と苦笑い。押し黙ってしまった。

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(18時40分頃の控室。緊迫した局面を迎え、関係者がモニタを見守る。深浦九段は無言で盤に向かっている)

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18時20分頃の局面。竜王は△2二金と自陣に埋めて▲3二銀を防いだ。深浦九段が「穴熊流の粘り」と評した一手だ。先手は▲4五歩が有力で、局面が収まれば駒得が際立ってくる。お互いとも正念場を迎えている。ここ数手が本局の山場になりそうだ。

■佐藤紳哉六段の棋譜解説チャット
「△2二金は堅いですが、銀得で手番なら先手よさそうです。ただしそのとき後手に望みがないとみるか、穴熊で王手がかからない形なのでまだまだと見るか、難しいところです。しかし竜王はそういった穴熊の感覚には非常に長けた棋士ですからね」

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(風はなおも強い)

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図は18時頃の局面。久保棋王はと金で後手の金を一枚はがしたが、7七の金が遊んでいてすぐさま形勢に結びつけるのは難しい。深浦九段は厳しい表情だ。「いや、難しい。流れは攻め合いですが、相当際どいですね」。現時点で、深浦九段と青野九段の第一感は「先手余してそう」で一致している。後手が何もしなければ、図で▲5五角が決め手。△4七飛成は▲3三角成△2二金▲同馬△同玉▲3二金△2三玉▲2二金打までの詰み。渡辺竜王は何かしら対策を考えないといけないが、局面は一手を争う忙しい場面。ただ受けるだけではなく攻防手を探したい。

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(日が沈み、港には明かりが灯る)

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図は17時20分頃の局面。後手はと金攻めを見せられ、ゆっくりできない。なんとかして手を作る必要がある。渡辺竜王の答えは△5七歩。飛角の焦点に歩を垂らした。と金を作れば、後手も攻め合いが望める。17時30分、控室では見解が先手持ちと後手持ちで割れている。

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(17時40分頃の控室。深浦九段が考えている)

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17時、大盤解説会では「後手が困っているのでは」と解説されている。観客はどことなく「中飛車持ち」のムードだ。

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(青野九段。「いつの間にか先手ペースになってますね」)

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(近藤六段。「少なくとも後手勝ちやすいから後手勝ちにくいに変わってますよ。竜王、焦ってますよね。これは」)

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(矢内女流四段。「前に近藤先生が『竜王が焦る展開になる!』って言ってたんですけど、その通りになりましたね」)

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(17時頃の対局室の様子)

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図は16時50分頃の局面。検討を進めるうち、控室では先手持ちの声が高くなってきた。深浦九段は次のように話す。「先手は▲7六金や▲2八玉など、指したい手がいっぱいあります。久保棋王は指せば指すほど楽になっていくんですね。渡辺竜王は金銀4枚の囲いができているので斬り合いたいんですが、相手が応じてくれないと難しそうです。うーん、▲5四銀成~▲6四成銀は見事なクリンチワークでしたね」

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16時10分頃、久保棋王は▲6三銀(上図)とこちらに銀を打った。▲4三銀は直接的に攻める手だが、この▲6三銀は▲5四銀成からもたれて指す狙い。相手の手に対応しながら展開を探るような手だ。渡辺竜王は△8二飛と逃げ、以下▲5四銀成△5三歩▲6四成銀(下図)と進んだ。
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控室の深浦九段は「△8六歩は▲7四成銀。そこで角を引くようでは……うーん。△8二飛ではなく△7三飛の方がよかった気がします」と話す。控室では、上図のときに飛車の逃げ場所は△7三飛で検討されていた。後手の指し方が難しいようだ。久保棋王が一気に攻める順を見送ったため、流れは緩やかになった。だが局面は複雑になっている。この成銀で後手の大駒を押さえ込めれば、4筋・3筋で圧力をかけている歩がものを言ってきそうだ。

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(継ぎ盤で検討中の青野九段(左)、深浦九段(右))

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図は15時45分頃の局面。ここで久保棋王は▲3五歩と突いた。△同銀は▲3六歩で銀が取れるので△2三銀引(下図)と引く。気持ちのいい利かしのようだが、プロの見解は違うようだ。「△2三銀引と引く感触が非常にいいので、▲3五歩は先手そうとうやりずらいです」とは、棋譜解説チャットの佐藤六段の言。
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次に▲4三銀という狙いが見えている。佐藤六段は「(▲3五歩は)仕方なかったのでしょう。久保棋王は▲4三銀で体を預けたときに、うまく指されて負けたらしょうがないという心境だと思います」と分析する。▲4三銀から金を取れば▲8三金という狙いがあるが、銀を渡すと後手にも△5八銀が生じる。攻めるべきかひと呼吸置くべきか、悩ましい局面のようだ。

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