2025年3月 2日 (日)

若き絶対王者への挑戦

増田八段の師匠、森下九段は第20期と第22期に棋王戦の挑戦者になっています。当時のタイトル保持者は羽生善治棋王で、2回とも3連勝のストレートで防衛を果たし、挑戦者のタイトル獲得はかないませんでした。

新潟日報に掲載された観戦記をひもといてみます。1995年の将棋界は七大タイトル戦時代。六冠を保持する羽生棋王は残る王将位獲得に向けて谷川浩司王将への挑戦を決め、七冠制覇への期待が高まっていました。そうした状況で棋王戦の挑戦者に名乗りを上げたのが森下八段です(肩書は当時)。1995年3月10日の第3局が新潟で行われました。観戦記を執筆した池崎和記さんは、ファンだけでなく棋士の間からも七冠王誕生を望む声が出たとき、「真っ先に不快感を示したのが森下だった」「棋士はこうでなくてはいけないと思う」と記しています。

若き絶対王者に気鋭の棋士が挑戦する構図は、八冠独占を成し遂げ現在も七冠を保持する藤井棋王と増田八段が争う今期の五番勝負と重なります。対局を見守る森下九段も、増田八段に昔の自分を重ねているかもしれません。

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(文)