2022年12月23日 (金)

序盤の駆け引き

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本局は先手番を得た里見女流王座が中飛車に構え、加藤女流三段は居飛車で対抗形に進んでいます。今シリーズはすべて先手番が勝っているため、対局開始前の控室では菅井八段が「振り駒、めちゃくちゃ大きいですよ」と話していました。里見女流王座に追い風が吹く状況で加藤女流三段の対策が注目されますが、△5四歩(10手目)と位を保つ指し方を選びました。先手も5筋の位を取るタイミングはあったため、里見女流王座の様子見に加藤女流三段が決断した形といえます。

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菅井八段は▲5九飛(15手目)に「相当に珍しい」と注目しています。よくあるのは▲3八玉~▲2八玉~▲3八銀と囲ってから攻撃陣に手をかける指し方。本譜は「形を決めすぎという見方もある」というのが菅井八段の見解です。ここからしばらく進んで△2四歩(30手目)まで進むと主張が見えてきます。

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よくある▲6六銀ではなく、▲4六銀と玉側に銀を使っているのが振り飛車の主張です。状況次第では△3五歩と玉頭に圧力をかける形が嫌になりますが、そうした玉頭戦の変化に備えている意味があります。加藤女流三段もよく見るバランス型の△6四銀ではなく、△4四銀から左美濃に構えて堅さ重視にしたところが珍しい選択。猛スピードで進んだ序盤でしたが、興味深い駆け引きがありました。