2013年7月11日 (木)

115室岡七段「流石、清水さんも百戦錬磨。この▲6八角が勝負の粘りでしたね。後手が攻めを急かされ、またおかしな流れになってきているのでは」

しかし、渡辺女流1級も踏みこんで勝負に出る。△8七桂と打ち込んで先手の穴熊を崩し、先手玉の守りを薄くしておくことで、先手の攻めに制限をかけたのだ。

125吉田五段「自玉が薄いと、反動が大きいですからね。怖いところです。先手の穴熊を崩したことで、後手は形勢だけではなく、気持ちの面でも楽になったのではないでしょうか」

(対局が行われている東京・将棋会館「香雲」の入口。対局室のあるフロアは、静寂に包まれている)

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112(16時50分頃の局面。残り時間は▲清水48分、△渡辺15分)

終盤戦に入り、残り時間が迫ってきたこともあり、お互いの指し手が早くなってきた。

そんな中、室岡七段から「現局面、後手のほうがよくなったのでは?先手は、やはり攻めが細すぎた印象があります」との意見が。

室岡七段「例えば、次に△6二玉~△5三玉と逃げられると、先手は後手玉を捕まえられないのでは。1六馬も、守りによく利いています。先手玉の囲いも、少し前と比較したら弱体化していますしね」


これは、ついに後手が逆転したのだろうか?

飯塚祐紀七段は、中継室を訪れるとスマートフォンで本譜の進行を確認しながら現在の局面について見解を述べてくれた。

Photo_33飯塚七段「駒得の後手が指せていると思います。しかし先手が穴熊なので、食いつかれたら負けになります。ここから後手は全部正確に指さなくてはなりません。清水さんが追い込めるかどうかですね」

Ssssずっと難しい勝負だとは言われてきたが、ここに来て後手持ちではないかという意見が出た。しかし、「ミスが許されない状況で、正確に指し切らなくてはいけない」という条件付き。やはり、実戦的には難しい勝負ということのようだ。

後手の渡辺女流1級は、残り時間が19分と少ないのが痛いところ。どうなるだろうか。

16時頃、中継室を訪れる棋士からは「先手有利」といった声が多く聞かれるようになってきたが、室岡七段は同意しながらも「まだ難しい勝負では」と付け加えた。

15_3(真剣な面持ちで検討をする室岡七段)


室岡七段「先手玉は堅いですが、攻めが少し細いように感じます。まだ大変な勝負だと思います」

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確かに、もし先手がゆっくりしているようならば、後手には△2七歩成から4五桂も活躍させていくような攻め手がある。

今日1日を通して、様々な棋士から「形勢は先手がいいと思われるが、実際にどうやってよくしていくかは難しい」といった言葉が聞かれる。決してまだ簡単な勝負ではないようだ。

Idou(棋譜用紙を見て、進行を確認する井道女流初段)

62(図の現局面について)
井道女流初段「先手の穴熊が堅く、対する後手玉が薄いことが気になります。玉が薄いと、何かと反動が大きいですし。ほかには、攻撃の権利として先手だけ5筋の歩が切れている点も大きいかもしれません。後手は5筋に歩を垂らせたら随分と状況が違うのですが……」

Idou_2吉田五段「難しい局面ですが、後手は勝ちにいく手が難しいです。先手有利だと思います」

Photo_31東京・将棋会館では、普段から2階の道場で様々なイベントが開催されている。
今日は、15時から藤森哲也四段による指導対局が行われていた。

皆さんも、機会があれば是非とも将棋会館でのイベントにお越しください。

Photo_32(一度に3人を相手にして、次々に指し手を進めていく藤森四段。終局後は、簡単に感想戦が行われる)

Photo_29(対局再開時の清水女流六段)

45室岡七段が「先手の方が指しやすいとは思うが、実際にどうよくしていくかは難しい」と語っていたところ、清水女流六段は決戦を急がず銀冠穴熊への組み替えを目指しました。

48対する渡辺女流1級。「△5七角と打ち込まれるような筋があるので、▲8八金~▲7八金右と固い穴熊は目指せないのでは」(吉田五段)といった意見も聞かれていたところでしたが、ただ先手の構想を許すのでは面白くないと判断。△7一玉~△9二香として4六角の角道を緩和した上で、△7四歩と反発しました。

50この△7四歩を▲同銀と取るのは、△5六角と打たれて銀が助かりません。【参考図】
これは、明らかに後手が有利な展開。

実戦は▲6六銀△7三銀と進み、後手も懸念材料だった上部の守りが固くなってきました。

41本日、東京・将棋会館で行われる対局の立会人を務める室岡克彦七段が中継室を来訪。

本局の記録用紙を手に取ると、「モニターを見るのではなく、実際に盤に並べてみましょう。やっぱり、3Dじゃないとね」と室岡七段。
棋士によってスタイルは様々だが、室岡七段は普段からパソコンで棋譜を見ることは少なく、実際に駒を並べることが多いようだ。

現在の局面【図】について、感想をうかがった。

室岡七段「桂先の角ですか。後手にさばかせないつもりです。これで後手の動きが難しいという判断ですね。たしかに後手は美濃囲いが完成しているので、玉側の駒が動かしづらい状況です。たとえば△7四歩は▲5四歩がすぐ王手になります。3五歩を守るなら△3四銀ですが、この銀は次の狙いがありません。△3四銀~△2五歩とはいけないでしょう」

Photo_27(実際に駒を並べる室岡七段と、その検討を興味深げに見つける吉田五段)

「後手はここまで来る前に仕掛けたかったのですが、そのタイミングも難しかったと思います。清水さんの作戦が巧妙だったということです」(室岡七段)

Photo_28(室岡七段は、先手持ちという判断)

Photo_22(13時になり、対局が再開。渡辺女流1級は清水女流六段が対局室に戻ってくると、△2一飛と着手した)

Photo_23(△2一飛を受けて清水女流六段が考え込む姿勢になると、渡辺女流1級は席を外した)

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(考え込む清水女流六段)

37(【図】の局面で後手が14分考え、昼食休憩の時間になりました。ここまでの消費時間は▲清水女流六段41分、△渡辺女流1級1時間10分)

Photo_19(後手側から見た実際の盤面。やはり、玉頭に迫っている8五歩が気になるところだ)

Photo_20(ここまでの棋譜用紙。お互い、細かく時間を使いながら進めている)

Photo_21(昼食休憩中、両者が席を外している対局室の光景)

※この記事の写真はPENTAX K-30で撮影しました。