2012年9月 3日 (月)

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図の局面で里見女流四冠が12分使って昼食休憩に入りました。
消費時間は▲里見1時間27分、△本田29分。対局は13時に再開します。

――昼食休憩の局面を見た泉七段の見解(棋譜コメントより抜粋)――
「早繰り銀に対して△4二飛は、先手の急戦を避ける意味で無難な指し方です。△6二玉からの右玉も自然な駒運び。先手はすでに▲3七桂と跳んでいるので、持久戦にはしない方針と見ます。仕掛けるなら、やや強引ですが、▲6八金~▲3八金~▲2六飛~▲3五歩という順が考えられます。強引ですが。ただ、桂が跳ねてある形でのこの仕掛けは、対四間飛車の急戦策くらいでしか見かけませんね」。先手は▲3八金~▲2六飛でキズを消せば▲3五歩と仕掛けることができるが、それでよくできるかは別問題。あくまで一例ということだろう。
「野獣流」で知られる泉七段、最近大流行の角交換にも一言。「角交換の将棋は、戦端が開かれるまでかなり神経を使い苦労もします。数年前から立会人野獣は、角交換の将棋を見ると面食らい目を背けてしまいます。30年以上前には、筋違い角なんていうのは200局に1局くらいの割合でしかなかったと思いますよ。正直言っておじさん棋士には、ついていくのが大変です。今日は私もたっぷり、皆さんと一緒に勉強するつもりです。再開後が楽しみです」。

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休憩中の特別対局室。

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休憩中の盤面(手前が先手)。

(八雲)

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図は11時40分頃の局面。
現局面は一手損角換わりからの変化ですが、後手が△4二飛で先手の速攻を迎え撃って玉を右に囲ったことで、振り飛車対居飛車の対抗形のような雰囲気になっています。

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結果的に飛車を振ることになった本田女流二段。ここからどんな構想を描いているのだろうか。

(八雲)

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図は11時頃の局面。この局面で里見女流四冠が25分ほど考慮中です。
△4四歩までの消費時間は▲里見16分、△本田9分。

里見女流四冠の考慮中に、控室には本日の対局立会人を務める泉正樹七段が来訪しました。
「野獣流」と呼ばれる泉七段ですが、女流棋士を優しく気遣った話を聞かせてくれました。

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両対局者について語る泉七段。

――泉七段の談話――

里見女流四冠について
「里見さんは奨励会初段で奮闘中ですね。数年前ではとても考えられなかったことです。彼女の姿を見ていると、厳しいことが難なくこなせているようで、楽しくて仕方がないようにも見えます。対局姿はもちろんのこと、廊下を歩く姿も、こちらが見ているだけで緊迫感が伝ってきて、四段も夢ではなく思えました。女流棋士との両立など、体調管理を心配されている方が非常に多いと思います。しかしそういったものを乗り越えてこそ、夢は達成できるものだと、私は思います」

本田小百合女流二段について
「立会人泉と本田は25年くらい前、研修会幹事と生徒の研修生という仲でした。水戸市からお母さんに連れられてとてもかわいかった。その頃は少女がほとんどいませんでした。その後中倉姉妹(彰子女流初段・宏美女流二段)、大庭姉妹(美夏女流1級・美樹女流初段)も入って来ましたが、本田さんはその先駆者とも言えるわけで、これだけ粒ぞろいでかわいい女流棋界に一役買った存在なのです。今でも泉は、本田さんのおつむをなでなでしてあげたいが、怖い先生もいるので、それができないのが残念です。本田さんの将棋は、とても根性があり、少々の苦戦にもめげないので、一年ずつ強くなっている印象があります。コミュニティバスのようではありますが、そろそろ爆発間近、初のタイトル挑戦に期待する野獣でもあります。里見さんファンごめんなさい」

現局面について
「本局は本田さんの注文により、一手損角換わりになりました。里見さんの作戦は一番自然な早繰り銀です。この戦いは、序盤の一手一手がとても重要で、筋違い角を用心しないといきなりピンチになる恐れもお互いに秘めています。それにしても、振り飛車党だった里見さんが、この大一番で普通に居飛車を用いるわけですから、これは日々の鍛練のたまものですね。勉強していないおじさん棋士には、頭が下がる思いです」

(八雲)

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図は10時30分頃の中継画面。
後手の一手損角換わりに里見女流四冠は早繰り銀模様に進めています。
手元のデータベースを調べた限りでは、先後に関わらず里見女流四冠が一手損角換わりを指した前例は見つかりません。

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一手損角換わりに里見女流四冠がどんな戦いを見せるか注目される。

(八雲)

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9時45分、対局室に入ると本田女流二段が着座していた。

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精神統一して相手の到着を待つ。
やや硬い表情を見て「本田さん、少し緊張気味かな」と控室に戻った関係者の声もあった。

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里見女流四冠は50分過ぎに到着。

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里見女流四冠が駒を取り出す。

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記録係の菅野倫太郎初段(22歳、中田功七段門下)が振り駒を行う。
結果は歩が4枚で里見女流四冠の先手に決まった。

(八雲)

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振り駒で先手となった里見女流四冠。初手は予想外の▲2六歩だった。

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本田女流二段もさすがに意外だったのだろう。2手目は少し時間を使って△3四歩を着手した。

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里見女流四冠が3手目を着手したところ。将棋はここから後手の一手損角換わりに進んだ。

(八雲)

加藤桃子女流王座への挑戦権を争う、第2期リコー杯女流王座戦はいよいよ挑戦者決定戦を迎えました。勝ち進んだのは、里見香奈女流四冠と本田小百合女流二段。女流棋界の第一人者で五冠を目指す里見女流四冠に、初のタイトル挑戦を目指す本田女流二段が挑みます。
対局は9月3日(月)東京・将棋会館(特別対局室)にて10時開始。持ち時間は各3時間、昼食休憩は12時10分~13時。先後は振り駒で決定します。

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本局は特別対局室で行われる。

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9時30分頃の特別対局室。対局準備が進められている。

中継は棋譜・コメントを文、ブログを八雲が担当いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。