2021年3月17日 (水)

Dsc_8571 (終局直後の対局室。両対局者はすでに感想を述べ合っていた)

Dsc_85762 (棋王位9連覇を達成し、タイトル獲得期数を歴代単独4位の28期とした渡辺棋王)

Dsc_85783 (糸谷八段。タイトル奪取はかなわなかった)

Dsc_8586 (主催によるインタビューに応じる)

◆渡辺棋王の談話

――本日の対局は中盤からリードする展開だったかと思います。振り返って、いかがですか。

渡辺 攻めがつながるかどうかという展開だったんですけど、4八に角を成れた辺り(64手目△4八角成)で、攻めとしてはつながってるかなと思いました。

――勝利を意識したのはどの辺りですか。

渡辺 △7六飛(74手目)と浮いて、△5六歩(76手目)と打っていった辺りで、間違えなければ勝てるとは思ってたんですけど、入玉とかには気をつけようと思ってました。

――今シリーズを振り返ってください。第1局で敗れて、ちょっと厳しいのかという雰囲気もあったと思いますが、ご本人としてはいかがでしたか。

渡辺 長手数の将棋が多かったので、第2局からは中終盤が長くなったときに競り負けないという意識で戦っていました。

――9連覇という数字についてはいかがですか。

渡辺 長く持たせてもらって、自分の過去の記録(竜王位9連覇)と並ぶところまでこられました。それは意識していたことなので、達成できてよかったです。

――タイトル獲得期数は、谷川浩司九段の27期を上回って、28期になりました。

渡辺 一概に比べられることではないんですけど、小さい頃から目標にしていた谷川先生を上回ることができたというのは、非常に誇らしいです。

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◆糸谷八段の談話

――本局は角換わり戦でした。序盤はいかがでしたか。

糸谷 想定していた形の一つだったんですけども、角を打った(43手目▲8三角)辺りがどうだったかですね。考えないと分からないですけれども、馬を作った位置が悪かったかもしれないです。

――中盤からは苦しい内容でしたか。

糸谷 自信がないということもあるんですけど、どう指すのか分からない展開にしてしまいました。

――シリーズを振り返って、いかがですか。

糸谷 序盤、中盤で悪くした将棋が多かったので、そこが反省点ですね。持ってきた作戦から外れた瞬間に悪くしている将棋が多かったので。

――シリーズを戦っての渡辺棋王についての印象を教えてください。

糸谷 本局もそうなんですけど、全体として堅い将棋というか、非常に玉周りが堅くて、なかなか崩すのが難しかったです。

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(睡蓮)

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渡辺棋王が3勝1敗で防衛。棋王は9連覇、タイトル獲得通算は28期で、歴代単独4位になりました。
終局時刻は17時8分。消費時間は、▲糸谷八段3時間4分、△渡辺棋王3時間16分。

(吟)

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図は16時40分頃の局面。△5六歩が痛打で、後手勝勢といってよい状況になっています。以下(1)▲5六同金は△5九銀▲7九玉△5六飛、(2)▲5六同馬は△同飛▲同金△5九角▲6七玉△4九馬です。先手が粘るなら(3)▲7六馬ですが、△5七歩成▲7七玉△5六とで、後手の攻めが途切れることはありません。

Dsc_8558 (渡辺棋王。9連覇が見えてきた)

(睡蓮)

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図は15時55分頃の局面。7六の飛車を7五に引いたところです。これは△3五飛の転回も視野に入れつつ、△5九銀▲7九玉(▲6七玉は△4九馬)△5五飛という大技を狙った手。△5五飛に▲同馬とすると、△5七馬▲同飛△6八金で後手勝ちになります。先手は現局面からひとまず▲3四歩△4四銀の交換は入れられそうですが、以下▲6五歩で7五飛の横利きを止めようとしても、また△7六飛と浮かれてからかわれてしまいます。渡辺棋王がうまくリードを広げているようです。

Dsc_8550 (渡辺棋王。飛車が存分に働いた)

Dsc_8529 (糸谷八段は苦しい情勢)

Dsc_8568 (控室の塚田九段。先手の指す手が難しいと話している)

(睡蓮)