(渡辺明棋王が1勝を返した。次局は先手番だ)
――62手目△4二金で前例を離れた。序盤のわかれについて。
あのあたりは定跡かなと。その後は手が広いのでどうなるかと思っていました。
――昼食休憩明けの68手目△7五歩から△8六歩のあたりは。
単に△8六歩との比較が難しかったです。
――88手目△7七とでは△8四飛も検討されていた。
△8四飛は▲7五玉……。その後の変化がわかりませんでした。
――終盤について。
よくなったところもあったのですが、どんどん差を詰められた感じでした。
――148手目△2六桂のあたりは。
いやー、だいぶ追い込まれてしまったので、もう負けになっていても……という感じでやっていました。
――本局全体を振り返って。
よくなってからの指し方があれでは……ということはありましたが、中盤でバランスを取れたのはよかったと思います。
――第4局に向けて。
ひとつ返すことができたので、また次から目の前の一局ということでやっていきたいと思います。
――67手目▲8四歩のあたりは。
判断の難しい形でした。△4三玉から△3三玉と横に逃げ出されてしまうと攻める形が難しくなるかなと思ったので、▲8四歩で△4三玉には▲8三歩成(△同飛は▲6一角が王手飛車取り)を見せて、玉寄りを牽制してどうかなと考えていました。
――73手目▲7七玉では▲7七桂を予想する声もあった。
本譜は8六玉の形で安定させるのが難しいと思ったので、▲7七玉はやりすぎだったかもしれません。▲7七桂は△8七角の筋が残ってしまうので、少し嫌な形ではあるかなと思ったのですが、それでやるべきだったかなと思います。
――77手目▲8六玉のあたりは。
最初は△6五同銀(76手目)に▲6六歩も考えたのですが、それも自信が持てない気がしたので。ただ、本譜は悪くなる順がありそうかなと思いながらやっていました。
――83手目▲7六銀のあたりは。
手が広いと思いましたが、よい組み合わせがわからなくて。本譜は少し誤算があって負けにしていると思いました。
――155手目▲2六飛のあたりは。
終盤はずっと苦しいと思って指していたのですが、最後は一瞬チャンスがありました。▲2六飛のところで▲2五歩と打っていれば。そこは残念ではありますが、全体的には負けの局面が続いていたので仕方ないかなと思います。
――本局全体について。
▲7七玉(73手目)としてからは、ちょっと……。突っ張りすぎたというか、危険な形になってよくなかった感じがします。そのあたりの判断でミスが出てしまったのかなと思います。
――第4局に向けて。
また切り替えて、いい状態で臨めればと思います。




図で▲2五歩から入れば後手玉は詰み。しかし実戦は▲2六飛。これは詰みません。△2五香と打たれたあと、藤井竜王はがっくりとうつむきました。詰みに関して藤井竜王に錯覚があったのか。まさかのことです。


図の前手▲4八金に「先手の手が見えない」と検討陣。渡辺棋王が頭を抱えて△1七金と打つと、控室で悲鳴が上がりました。▲1七同香で逆転ではないか、ということです。着手後に斜め上を見上げる渡辺棋王。
渡辺棋王は一分将棋のなか、冷静な手を積み重ねています。後手優勢は間違いありません。図の△8八金も手堅い選択といえます。あとは先手がどれだけ勝負できるか。
19時2分、渡辺棋王は残り2分。記録係の「50秒……55秒……」の秒読みに渡辺棋王は指すことができず、「これより一分将棋でお願いします」の声に天を仰ぎました。藤井竜王は残り4分。形勢はまだはっきりしません。
図で飛車を逃げるようでは後手がつらい。攻め続けなければいけません。引くに引けない状況になりました。△6五桂は▲同銀△8五飛▲8六歩△8七桂成▲同玉△6五飛なら後手成功ですが、▲8六歩の前に▲5四角が入ります。ではどうすればいいのか。後手もまた追い詰められています。