【藤井棋王のインタビュー】
――本局は角換わり腰掛け銀になりました。序盤は早いペースで進みましたが、分かれはいかがでしたか。
藤井「途中から攻め込まれて受ける展開になって、基本的に玉が薄いので自信がないかなとは思ったんですけど、頑張れるかどうかという将棋かなと思っていました」
――昼食休憩のところで長考されていましたが、どういったところを比較されていたんでしょうか。
藤井「手が広い局面かなと思ったんですけど、どこが急所かは考えてもわからなかったかなという気がしています」
――そういう状況で、△8六歩を選ばれたのは?
「▲4一飛の局面は、玉形の差がやっぱりかなり大きいので、少し縮められればという意図はあったんですけど。ただ、実戦的すぎたところはあったかもしれません」
――△6三桂で大分、自陣が固くなったと思いましたが、あの辺りの形勢はどうですか。
藤井「ちょっと竜を押さえ込んで、こちらが多少、受けが利く形になったので、少し前の局面と比べると流れはいいのかなとは思っていました」
――勝ちになったかなと思ったのは、どのあたりでしょう。
藤井「△7六歩から△8七銀と打って、先手玉に迫っていける形ができたので、1手勝てそうかなと考えていました」
――全体を振り返っていかがだったでしょう。
藤井「玉形をどう見るのかが、やはりわからないところが多かった一局だったかなと思います」
――今回、使用していただいた駒は珠洲市の塩井さんという被災された方のものです。自宅からようやく見つけ出した駒でして、使った感想をお願いします。
藤井「少し珍しい書体かなとは思いますが、対局してみると本当にすごくスッと局面に入り込める感じがありました。倒壊された家の中から見つかった特別な駒だと思うので、指していて、いい将棋にしたいという気持ちは強くありました」
――第3局は新潟です。それに向けての抱負をお願いします。
藤井「第3局まで1週間と少しで、それほど期間があるわけではないので、 まずはしっかり状態を整えて望めればと思います」
【伊藤七段のインタビュー】
――▲4一飛を打つまで早く指していましたが、あの辺りはいかがでしたか。
伊藤「▲7三歩成から▲8二銀まで踏み込んでいった手が、結構まずかったかなと思っていて。ちょっと軽率な一手かもしれないと思っていました」
――昼食休憩後に連続した長考になったんですけど、この辺りはどうでしたか。
伊藤「後手の手駒がかなり多いので、自信がない展開かなと思っていました」
――一局通しての感想をお願いします。
伊藤「午前中からちょっと誤算があって、苦しい将棋でした」
――誤算はどの辺りですか。
伊藤「▲7三歩成から▲8二銀に代えて、▲5六歩とかのほうがよかったかなと思ってます」
――被災された方から提供された駒の感想をお願いいたします。
伊藤「非常に集中して対局に臨むことができましたし、特別な駒で、指させていただいて、非常によかったと思います」
――第3局に向けて、抱負をお願いします。
伊藤「本日は、ちょっと内容がよくなかったので、気持ちを切り替えて臨みたいと思います」
(紋蛇)



▲伊藤匠-△藤井聡戦は18時28分、94手で藤井棋王が勝ち、シリーズ成績を1勝0敗1持将棋としました。消費時間は、▲伊藤3時間47分、△藤井3時間41分(持ち時間は各4時間)。第3局は3月3日(日)に新潟県新潟市「新潟グランドホテル」で指されます。
▲8六金に、実戦は△8三角と竜を取りにいきました。以下▲同竜△同銀▲7五歩△5五角▲5六香△7六歩と進んでいます。
角取りを手抜き、藤井棋王が初めて先手玉の襲いかかりました。▲5五香なら△7七歩成▲同桂△5五桂でわかりやすくなります。以下▲4一角は詰めろになっていないので△6七桂成で後手勝ち、▲7八金は△6六歩▲同歩△6七銀で寄せが続きます。





▲7六歩は△同歩なら▲同金か▲同銀で、頭の丸い角を攻める見込みがついて方針がわかりやすくなります。藤井棋王は7筋を取らずに△6三桂と打ち、▲7五歩に△同桂からの反撃を用意しました。現在の焦点は7筋です。双方の玉頭なので、ここの勢力争いが勝負に直結してもおかしくありません。伊藤七段がは手を止めています。




伊藤七段は1時間14分の考慮で、▲9二竜と9一にいた竜を引きました。残り時間は▲伊藤1時間13分、△藤井1時間49分です。これまで1時間越えの長考を伊藤七段が2回、藤井棋王は1回しましたが、残り時間が少なくなってきたので、そろそろペースが上がっていくと予想されます。