10時現在、27手目▲8六歩まで進みました。
谷川九段に、ここまでの進行について話を聞きました。
「久保さんは▲6六歩を止めた石田流なら十分と思っているのではないでしょうか。この将棋のように、△8四歩~△8五歩から角交換型を選択されたときが懸案だと思います。収まると千日手になりやすいですので。
久保さんは▲8六歩に命運をかけたといえばオーバーですが、この形で打開しようということですね。▲8六歩で▲6六銀と上がる形の将棋もありますが、手詰まりが現実的になります。9筋を事前に突き合ったのは間合いを計ったということです。どこで仕掛けるかを考えて指されたのだと思います」
(銀杏)
対局開始まで
対局開始
久保棋王が石田流を目指す
7手目▲7六飛まで進みました。この手は前期五番勝負第1局で久保棋王が指した手です(久保勝ち)。
カド番で相性のいい形を選択しました。
郷田九段は△8八角成▲同銀△3二銀と進めます。これは最新形。先手が急戦を仕掛けるかどうかがここ数手のポイントになります。
(銀杏)
棋王戦第4局は本日9時開始
前夜祭(3)
吉田将棋碁盤店・三代目、吉田寅義氏より、本局で使用される将棋盤が贈呈されました。
吉田将棋碁盤店・三代目、吉田寅義氏
「宮崎県日向産の本かやの7寸盤(天地柾)。これは35年前に師匠が購入した材を盤にしたもの。昨年、とちぎ将棋まつりや宇都宮将棋フェスタで盤作りの実演依頼があり、関係者の将棋道普及に傾ける情熱に感銘を受けました。その活動に心打たれ、何か私にも一つくらいできるものはないかと考え、将棋盤を寄贈しようと思い将棋盤を作成しました。栃木県での対局に使用していただけるとのことで、仕事冥利に尽きます。末永くご愛用ください」
如水委員長の御礼の言葉
「昨年、吉田さんがこちらにお越しいただいたときに、このような話をいただいたときには、まさか本当に作っていただけるとは思っていなくて、本当にありがとうございます。目がきれいな盤です。これだけ素晴らしい盤はなかなかありません。これから栃木で行われる対局で大切に使わせていただきたいと思います。ありがとうございます」
続いて両対局者から、明日の対局に臨む決意表明。
久保棋王
「去年は餃子をお腹いっぱいになるほど食べて、食べ物がおいしい街だなと思います。前日には体を休めて、準備したものをぶつけたい。明日からの第4局、昨年と違うのは第4局と第1局ということで、勝負の度合いは違いますが、明日からの対局も将棋の一局には変わりありませんので、明日は全力を傾けたい。棋士は素晴らしい棋譜を残すことですので、それを約束して明日の対局を望みたい。将棋のイベントもありますので、楽しんでもらえるとうれしい」
郷田九段
「栃木県はプライベートで日光に行ったり、対局で佐野市で対局したことがあります。私たちプロ棋士は盤上で、将棋の面白さ楽しさを対局を一生懸命することで示すが務めです。自分なりに精いっぱい頑張ります」
最後に立会人の加藤九段から対局のみどころが、およそ20分熱く語られました。
加藤一二三九段
「去年の将棋まつりは楽しくすごしました。えっと、話が長くなるかもしれません。
思うんですけど、去年は米長さんとの席上対局で負けたんですけど、今年の1月2日に巨匠対決というNHKの番組が企画されたんですけど、それは将棋まつりの往年のライバル対決にヒントを得たのかなと思います。米長さんが私の矢倉に、いわゆる勝ちを目指す指し方をされて、負けたんです。巨匠対局は振り駒の結果、後手になったんです。先手になったら、将棋まつりのときの指し方が来ると思ったんです。率直にいうと、米長さんの矢倉対策にはっきりいって困惑していたんです。
しっかりと作戦勝ちできる自信がなかった。
でも、振り駒の結果、後手になった。後手番になった途端『今日の将棋は勝てる』と思ったんです。
面白いのは、普通棋士は先手番を希望するんです。戦いやすいですから。
後手番になったときに勝てると自信を持ったのは初めての経験で、実は私の予感は的中いたしました。
引退した米長さんが先手の矢倉で、羽生さんやバリバリの若手が指す本格的な矢倉を指してきたんです。おかしいなと思うのは、その矢倉は公式戦で私が何度も何度も勝ってきた作戦なんですよ。
正攻法で来たから勝てたということもあります」
「本論にいきまして、前3局を久保さんが後手のときはゴキゲン中飛車、先手のときは石田流でした。僕、思いますけど、明日は久保さんが先手でしょ。久保さんが先手ですから▲7六歩△3四歩▲7五歩なら石田流なんだけども、▲7六歩△3四歩▲6六歩はどうかと思ったんですよ。
というのは、いろんな将棋を見ているんですけど、かつて昭和46年に大山-升田の名人戦があって、初めて石田流が大きな勝負で出たのがその名人戦なんです。
升田さんが負けたんですけど、いまの若手は石田流を指しこなしますが、升田さんは3勝2敗とリードしながら石田流を使って負けてしまいました。対局もほとんどいいところがなかったと思います。
久保さんが▲6六歩なら郷田さんはどうやるんだろうと思いますね。石田流で互角ならいいんですけど、調子が悪いなら、顔を洗って出直すくらいがいいんじゃないかなと思っています。石田流で指した第2局は内容的にいいところがなかったですから」
「(▲6六歩にはどこに飛車を振るのでしょうかの質問に)私は久保さんが六段くらいのときに四間飛車で負けています。なので、四間飛車にされるんじゃないでしょうか。郷田さんが棒銀に来ても戦えるはずですので。石田流は大きな舞台で続くとは思わないので、ここは発想の転換です。
また、話が変わりますが、かつて大山名人と中原挑戦者の名人戦、昭和47年の名人戦、居飛車の中原、振り飛車の大山の戦いで中原さんが2勝3敗で負け越していたんです。そこで中原さんが何をしたかというと、飛車を振って作戦を切り替えて勝ったんです。一生懸命やっても勝てなければ作戦を変えなければいけません」
「棋王戦ですよ棋王戦。私、第2期棋王戦では幸い3連勝できてタイトルを取りました。大内さん(大内延介九段)に3連勝だったけども、スレスレの勝負でしてね。
2連勝したときに、次に負けて1勝2敗になったら大内さんの調子が非常にいいので危ないと思って指しました。第3期は中原さんの挑戦を3連勝で負かしました」
「名人になったのは42歳です。気持ちの上では、当時よりもいまの方が努力しているんですよ。努力しているから即勝てるかといえばそうではないんですけど。
私は1300勝して、中原さんが2・3勝上で歴代2位の記録を持っていますが、それを抜くかどうかなんて論外で。論外というのは全然僕は何の関心もないということです。
こういうと若手の棋士がものすごく闘志を燃やしてくると思うんですけど、はっきり言って勝ち星の記録の更新は興味も関心もない。
これからは何か一つ優勝したい。タイトルを目指したいと思っています。そういう気持ちでいます」
※文章書き起こし=銀杏記者
(八雲)
前夜祭(2)
関係者紹介。
(立会人・加藤一二三九段、記録係・上村亘三段、観戦記者・大矢順正氏)
来賓棋士挨拶。
谷川浩司専務理事
「当時の丸山名人に挑戦した名人戦第5局で来たことがありまして、検分のときに対局室から庭園を見て、その当時を思い出しました。今日は役員として来ましたが、明日とあさっては棋士として、将棋まつりに出演します。久しぶりに加藤一二三九段と対局できるのを楽しみにしています」
西村一義九段
「栃木には、30年ほど前から宇都宮にご縁があります。今年で3年連続将棋まつりに出演させていただきます。知っている方も多く、明日、あさってと将棋まつり頑張ります」
片上大輔六段
「栃木県では栃木県中支部の師範を務めています。なじみの方も多いです。明日は将棋まつりで広瀬さんと対局します。たぶん広瀬さんの穴熊じゃないかと思います。で、僕は××で対抗するんじゃないかと思います。ここだけの話ですけどね」
※「××」の部分は対局前につき伏字といたします
前夜祭(1)
続いて主催者の挨拶。
棋王戦宇都宮対局実行委員会委員長 如水和也氏
「この宇都宮で棋王戦が開催されるということは、我々栃木の将棋関係者にとって本当に光栄の至りと考えております。今シリーズは、プロもアマチュアも皆さんがお手本にする振り飛車党の久保棋王と、居飛車党が皆憧れる本格派の郷田九段の対決ということで、大変楽しみにしております」
下野新聞社代表取締役社長 観堂義憲氏
「久保棋王と郷田九段、両者の対戦成績は久保棋王17勝、郷田九段17勝とピッタリ並んでおります。久保棋王は本当にハードスケジュールで、そのためだと思いますが、少し調子を崩されているのは明らかです。しかし、世の中の久保ファンは、持ち前の華麗な駒捌きでなんとか棋王位を死守して欲しいと、そう願っていると思います。一方の郷田九段は、14年振りの棋王位挑戦となります。そしてなんと、明日は郷田九段41歳の誕生日です。一気にここで勝負を決めたい、そう思っていることでしょう。日本中の将棋ファンを沸かせる名勝負を期待します」
続いて来賓祝辞。
宇都宮市市長 佐藤栄一様
「棋王戦の番勝負が第4局と佳境を迎えています。七大タイトルの棋王戦が宇都宮で行われることに感謝したい。昨年の東日本大震災でも、日本人の人間力が評価されましたが、将棋も人間力を高める大きな役割を持っています。先を読む力、我慢強い忍耐。日本が決して忘れてはいけない、そして後世に伝えるもの。人を高める教育に将棋は役立つと思います」
作新学院院長 船田元様
「明日は久保棋王、郷田九段の2人の対戦、われわれも注目しています。よい戦いぶりを見せていただきたいと思います。日本古来からの重要な文化。これは現代に生きるものだと思います。最近はコンピュータとの対戦が話題になっており、以前は人間が勝っていました。コンピュータでは把握できない、人間の素晴らしさや機微を大事にしなければならないなと感じます。棋王戦を間近で見られることは幸せと思います」
(八雲)