大盤解説会より
井道「形勢はいかがでしょうか」
山崎「どちらかを持てと言われれば……居飛車ですかね」
井道「では、皆さんにも聞いてみましょう」
山崎「やはり後手を持ちたいという方が多いですね。私も後手の駒得が大きいのではないかと思います」
井道「私は振り飛車党なんですが……」
山崎「が?」
井道「振り飛車なのに飛車がいない……(場内笑)。飛車の魅力が大きいので、郷田先生のほうを持ちたくなっちゃいますね」
山崎「△5五銀ですか。激しくなりそうですね」
井道「攻め合いになりそうですか?」
山崎「久保棋王のほうは、自分だけ攻める展開にしたいんです。攻め合いは飛車・飛車・銀、そして持ち駒の角と攻め駒が多い後手が有利ですね。自分だけ攻める展開にしたいのですが……」
井道「しかし▲6三馬があるのですが、受けずに行きましたね」
山崎「受けにくかったんでしょうか。たとえば△5二金右だと(飛車の横利きが止まるので)▲8二歩から桂香を拾われます」
井道「△5五銀にはどういう狙いがあるのでしょうか」
山崎「次に△4六歩と打つということですね。▲3八銀引に△1五角▲3七桂△3六飛や、△6九角~△4二飛寄と足す攻めもあります。先手は▲6五桂~▲5三桂成を実現したいのですが」
井道「次の手はいかがですか。先ほど▲4五歩△同飛▲6三馬とおっしゃっていましたが」
山崎「でも歩を渡してしまうので、考えますね。▲4六歩は△同銀▲同銀△同飛▲4七歩△6六飛で、▲6三馬と入れなくなります。今日冴えている井道さんはいかがですか。次の一手のあとも当たってばっかりですし」
井道「えーっと……。笑われてもいいのであれば……あ、いやいや」
山崎「いえ、今言おうとしたのを」
井道「▲3七玉」
山崎「……はぁ、うん」
井道「じゃあ、どうやったら負けると思いますか」
山崎「どうやっても負けると思います」
井道「だから言いたくなかったんですよ!」
山崎「すみません。じゃあ、△6四角はどうでしょう」
井道「それは▲2八玉と引いて……あ、引けない。金を取られるんですね」
山崎「そうですね。△6四角▲2八玉は△4六銀▲同銀△同角▲3七銀△同角成▲同桂△4九飛成(参考図)と金を取られます」
井道「と言っている間に▲7六馬でした!」
山崎「あれ? これは大丈夫なのかなぁ。馬取りですが、さっきの△4六歩▲3八銀引△1五角▲3七桂△3六飛で、飛車を逃げながら攻めに使えるので。これは百も承知と言うことなんでしょうが……」
(翔)