本局は黒沢五段のゴキゲン中飛車に、永瀬七段が居飛車に構えて対抗形になりました。両者とも穴熊に組み、午前中はじっくりした序盤戦が続きました。
展開が動いたのは永瀬七段の△7二飛(32手目)がきっかけでした。このまま△7五歩▲同歩△同飛と歩交換できれば、居飛車が軽い形になります。振り飛車は▲6六角△8二飛▲7七角△7二飛……と進めては千日手模様で失敗ですが、黒沢五段は意外な筋でカウンターを狙いました。実戦はここから▲7八飛△7五歩▲同歩△同飛▲7九歩(37手目)と進行。
飛車のさばきを狙う底歩が意表の一着。こうした底歩は飛車交換になれば成功ですが、押さえ込みを狙われると歩を打った損が残りやすいものです。ところが、ここで△7六歩には▲9五角が離れ駒の銀を狙った返し技。以下△7三銀でも△7三桂でも、▲6六銀△7四飛▲6五銀と飛車を目標にした反撃があります。
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