島「こんばんは。まずは棋王戦の宇都宮開催、おめでとうござ
います。ここまでが本当に大変だったと思います。ありがとうご
ざいます。えー(佐藤九段の方を向き)、A級復帰、当然とはい
えおめでとうございます」。
佐藤(康)以下佐藤、「いえいえ(苦笑)。私のことはいいので」。
島「当たり前なのでうれしくないかと思うんですけどね。ま、あい
さつですから、ええ。さて、どうでしょうか。今回の棋王戦は」。
佐藤「棋王戦といえば、私も昨年は痛い思いをしました(注・昨
年は佐藤九段が久保棋王に挑戦し、フルセットの末敗れている)」。
島「久保さんは王将戦では豊島六段と戦っているんですよね。昨年
は佐藤さんと羽生さん、今年は渡辺竜王と豊島六段。ずいぶん若く
なりましたね」。
佐藤「渡辺竜王は20代という感じがしませんけどね。貫禄が。豊島さ
んは二十歳(はたち)ですか。若いですねー。一回り年が違うと久保さ
んもやりにくいでしょうね。……実は私、豊島さんに負けて挑戦を逃し
ているのでこの話は振りたくなかったんですけど(苦笑)。今回は重量
級で実績充分の二人ですからね。でも新鮮ですね」。
島「明日の見どころはいかがでしょう?」。
佐藤「久保さんは振り飛車党です」。
島「それは誰でもわかるので(笑)」。
佐藤「ま、中飛車か石田流でしょう。振り駒によって変わってくると思い
ますけど」。
島「この二人は振り駒を気にしないでしょうね」。
佐藤「久保さんは戦法を決めてきますよね、それに渡辺竜王がどう対応
するか。そうそう、渡辺竜王は一日制に弱いという説もあります」。
島「佐藤さんは棋聖戦(注・棋王戦と同じく一日制のタイトル戦)で渡辺竜
王に勝ってらっしゃるんですね。3-0か3-1か、ちょっと覚えてないんで
すけども」。
佐藤「3勝1敗でした。ええ。……自慢になっちゃいますね。渡辺竜王は初
めてのタイトル挑戦も王座戦(注・こちらも棋王戦と同じく一日制のタイトル
戦)でしたが、不思議と勝ってないんですよね」。
島「五番勝負で第1局を勝つのはどのくらい大きいんでしょう?」。
佐藤「負け方にもよりますよね。全力を出して負けたなら大丈夫ですけど、
精神的にイヤなところが出てくると大きいですよね。この二人は精神的な
ブレがないと思うので、おもしろいと思います。ところで島先生はどうなん
ですか。さっきから私ばっかりですけど」。
島「渡辺さんは早指しなので、見ていておもしろいと思いますね。明日は
楽しんでいただければと思います」。
(吟)