2022年12月23日 (金)

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後手玉を少し薄くした里見女流王座、▲7九金(59手目)と引きました。と金が残るのでつらい手ですが、飛車を打たせないようにした辛抱です。以下△7七と▲同角△9三桂▲7三馬△7一飛が菅井八段の予想した一例で、自陣飛車で駒得を生かす方針を考えていました。加藤女流三段が指したのは△7七と▲同角に△8七桂! 異筋の桂です。

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狙いは▲6八金上に△9九桂成で香の価値が高いというわけですが、駒台の桂を使って僻地の香を取りにいくのは筋悪の見本のような手で、神谷八段は「やっちゃいけない手と教わったよ」と驚きます。しかし検討してみると△9九桂成にあまり思わしい手がないようで、しばらく盤を見つめていた菅井八段は「意外といい手に見えてきました」と意外そうな表情。これでリードにつなげられれば△8七桂は妙手といえそうです。

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金銀4枚の要塞をどう攻略するか。里見女流王座は▲5三歩(49手目)で応手を尋ねました。金銀の連結を重視するなら△4二金寄ですが、加藤女流三段は△4三金を選択。以下▲6三馬に△4二飛と、飛車を逃げるスペースを用意しました。

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検討陣の第一感は「後手よし」。ところが、▲5二銀と食いつかれると意外にすっきりしません。手堅く受けるなら△5一歩ですが、▲4一銀成△同銀▲8七金△8九飛▲8二歩△8七飛成▲8一歩成△8八竜▲4九金(A図)は「大変だ」と神谷八段。菅井八段は「むしろ自信ないかもしれない」と首をかしげます。

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戻って、▲5二銀には△3一金とかわしてどうか。いずれにせよ、振り飛車にも楽しみのある形で、頑張りがいのある展開になってきたといえます。里見女流王座、さすがの手腕です。

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14時に予定されていたおやつは両対局者の要望で早めに出されました。ケーキは2人とも「パリパリチョコミルクレープ~アーモンド風味~」。飲み物は里見女流王座がアイスロイヤルミルクティー、青森県産りんごストレートジュース、アイスココア。加藤女流三段は京都府産一番茶使用アイス贅沢抹茶ラテ(氷少なめ)を注文しています。

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里見女流王座、昼食休憩を挟む48分の長考で▲7一角(43手目)と打ちました。すんなり相手の主張を通しては面白くないという強い手で、菅井八段は「勝負手ですね」とうなずきます。以下△7二飛に▲6六角と進みました。

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打ったばかりの角が逃げ場所をなくしましたが、▲6六角(45手目)が狙いの継続手。角を取る△7一飛には▲4三銀成の開き王手があります。ただ、△4四歩▲同角引成△3三銀打で駒の損得はなく、後手玉は金銀4枚の鉄壁。馬を逃げれば△8七歩成▲同金と形を乱されるため、やはり先手が苦しいと見られています。

対局室には加藤女流三段、里見女流王座の順に戻りました。13時になって和田あき女流初段が再開を告げても、里見女流王座は険しい表情ですぐには指しません。控室では先手側に座る菅井八段が「辛抱ですね。辛抱するか」とつぶやきながら継ぎ盤の駒を動かしています。里見女流王座は難局を迎えているようです。

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12時、里見女流王座が26分使って昼食休憩に入りました。消費時間は▲里見女流王座51分、△加藤女流三段56分。昼食の注文は里見女流王座がなべ焼きうどん(ほそ島や)、加藤女流三段がうな重セット(ふじもと)。うな重セットは肝吸いか赤だしが選べ、加藤女流三段は肝吸いを頼んでいます。飲み物は里見女流王座がホットロイヤルミルクティー、加藤女流三段がホット宇治抹茶豆乳ラテを注文しました。対局は13時に再開されます。

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里見女流王座が中央から動いて決戦に突入しました。銀をさばく▲5五同銀(35手目)に△5八歩▲同飛△6九角が手筋の反撃です。以下▲4四銀△5八角成▲同金△4四歩▲7一角△8四飛▲6六角(A図)と自然に進むと振り飛車ペースになることが予想されました。

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左美濃なので▲7一角~▲4四角成の筋が急所を捉えています。仮によく見る舟囲い系の囲いであれば、▲7一角の筋にも対応しやすい面がありました(B図が参考図)。

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もう一度A図を見ると、8筋の突き捨てが入っていれば▲7一角に△8六飛と走れるため後手の得になることがわかります。そこで、控室では神谷八段が△4四歩と銀を取り返すところで△8六歩はどうかと検討していました。理にかなっているのですが、取れる銀を無視するのは抵抗のある順です。果たして、加藤女流三段は熟考して△8六歩(42手目)を指しました。

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YouTubeの映像を見ていた神谷八段は「あっ、指したよ!」とうれしそう。前提として▲8六同歩は△4四歩▲7一角△8六飛で後手不満なし。先手とするとこの歩は悔しくて取れないところです。よって▲5五銀△8七歩成▲8三歩△同飛▲8四歩△同飛▲6六角△7八と▲8四角△7七とと銀得を主張する順を菅井八段は予想していますが、「振り飛車が粘りにいっている感じがします。居飛車に工夫の余地が多いですね」との見解。「午前中は加藤さんがうまくやりました」とここまでの戦いを総括しました。

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本局は先手番を得た里見女流王座が中飛車に構え、加藤女流三段は居飛車で対抗形に進んでいます。今シリーズはすべて先手番が勝っているため、対局開始前の控室では菅井八段が「振り駒、めちゃくちゃ大きいですよ」と話していました。里見女流王座に追い風が吹く状況で加藤女流三段の対策が注目されますが、△5四歩(10手目)と位を保つ指し方を選びました。先手も5筋の位を取るタイミングはあったため、里見女流王座の様子見に加藤女流三段が決断した形といえます。

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菅井八段は▲5九飛(15手目)に「相当に珍しい」と注目しています。よくあるのは▲3八玉~▲2八玉~▲3八銀と囲ってから攻撃陣に手をかける指し方。本譜は「形を決めすぎという見方もある」というのが菅井八段の見解です。ここからしばらく進んで△2四歩(30手目)まで進むと主張が見えてきます。

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よくある▲6六銀ではなく、▲4六銀と玉側に銀を使っているのが振り飛車の主張です。状況次第では△3五歩と玉頭に圧力をかける形が嫌になりますが、そうした玉頭戦の変化に備えている意味があります。加藤女流三段もよく見るバランス型の△6四銀ではなく、△4四銀から左美濃に構えて堅さ重視にしたところが珍しい選択。猛スピードで進んだ序盤でしたが、興味深い駆け引きがありました。

本局の観戦記は日本経済新聞に掲載されます。観戦記者は池田将之さん、新聞解説は菅井竜也八段です。控室では立会人の神谷八段と菅井八段が継ぎ盤を使って検討していました。

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定刻の10時、神谷八段が開始を告げて対局が始まりました。本局はストップウォッチ使用のため消費時間は1分未満切り捨てで計測されますが、両対局者は早いペースで指し進めていました。準備、気合ともに十分といった様子です。

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