(18時頃に終わった感想戦に続き、里見新女流王座は囲み取材に応じました)
――いまの率直な感想。
里見 ほっとしている気持ちはありますけど、対局は続いていきます。ただ、ちょっとゆっくりできるのかなという思いはあります。
――本年度はタイトル戦続きでした。3つ勝ち(女流王位、女流王将、女流王座=獲得・防衛)、1つ負ける(清麗=失冠)という結果でした。
里見 内容には出来不出来がありましたが、短い間隔で対局が続いていくなかで、体調を崩すことなく自分なりに精いっぱい戦うことができたので、年内の対局が終わって落ち着いてから、あらためて振り返りたいと思っています。
――西山さんとのタイトル戦では、これまで勝ちがなかったところ、今年は女流王将、女流王座と連勝しました。
里見 今シリーズでは、お互いにミスもあり、二転三転しましたけど、そのなかでも自分としては気持ちを切らさずに指せたと思います。西山さんは私とは正反対の棋風だと思っていて、対局するたびに新しい発見というか、実戦的な指し回しをされます。それに対応して考えている時間はすごく充実しています。
――清麗を失ったあとに女流王座を獲得し、女流五冠に復帰しました。
里見 タイトルが増えたのは光栄なことですけど、全体を通してミスもありましたし、地力をつけたいなと思います。
――藤井聡太竜王もそのようにコメントされることが多いです。藤井竜王のことは意識されていますか。
里見 藤井さんのコメントは深い意味があると思いますけど、私は以前からタイトル数ではなく自分の納得がいく、手ごたえのようなものを大事にして、将棋を続けていきたいと思っています。少しでも強くなれるように頑張りたいという気持ちが先行しています。
――本局で▲4一飛成から▲3九金とした感触はいかがだったのでしょうか。
里見 いろいろ考えたなかで、いちばん速い攻めは▲4一飛成~▲5四歩~▲4四角のような形だと判断したので、善悪はわかりませんが、自分なりには苦心の順だと思っています。
――以前から「自分だけが指せる将棋を指したい」と語られています。自分の道をいくという意味では、手ごたえはありますか。
里見 対局が続いて、作戦を練る時間がなくて、そのなかでも変化していかなければいけないなと感じています。もっと研究が必要かなと思います。
――4つのタイトル戦が続くのは異例ですが、余裕を持って戦われていたような印象があります。何か要因はあるのでしょうか。
里見 過密な対局日程のなか、自分がどこまでやれるのかなと純粋に気になっていたというか、意外と冷静でいられたかなと思います。全国各地で対局させていただき、いろいろな方々のありがたみを実感して、自然と盤上に集中できていたと思います。
――女流棋界全体の盛り上がりについては、どのように感じていますか。
里見 タイトルも(7から8に)増えて、女流棋界は全体的に棋力が上がっていると感じています。自分自身、強くなることを念頭に、頑張っていかないといけないと思っています。
――今年は清水市代女流七段のタイトル獲得総数を抜きました。今年を振り返ってどう感じていますか。また、来年に向けての抱負をお願いします。
里見 清水さんは自分の尊敬する方ですし、比較はできません。清水さんの人間性に近づきたいと常々思っています。今年を振り返ると、体調を崩さずに、いいコンディションで臨めたのはよかったと思っています。将棋の内容はしっかり反省して、次に生かしたいと思います。年明けからは女流名人戦が始まりますけど、少し時間が空くので、しっかりと準備をして挑みたいと思います。
―― 来年の目標は。
里見 特にはないのですが、自分の納得のいく、手ごたえが感じられるように日々、勉強していけたらと思います。
―― 女流王将戦に続いて、西山さんからタイトルを奪還ということになりました。西山さんと戦う上で対策は。
里見 いちおう、作戦は持っていくのですが、毎回、本局もそうですが、ちょっと違う形になって。その中でも研究が外れてからが勝負ということがあるので。そこのねじり合いは、やっているときは考えられないですが、自分の力が出しきれたときは充実感があります。
―― 2019年に残念ながら、西山さんに2つ取られてしまったわけですが、当時と今では西山さんの印象や距離感は。
里見 特にあまり大きな違いはないのですが、対局する機会は増えたので、毎回、対局前はしっかり準備しないといけないなと思います。
―― あまり結果のことはおっしゃりませんが、これまで西山さんを相手に結果が出ませんでした。今回は競り勝つシリーズとスコア的に圧倒するシリーズになりましたが。手ごたえや自信というものは。
里見 タイトルを取られたときは、一方的な内容が多かったので、そういうことがないように思っていました。対局相手がどなたであれ、自分の力を出しきることが第一だと思っているので。西山さんは強敵で、格上だと思っているので、その中でも、自分のやれることはぶれずに続けていきたいと思っています。
―― 今日の将棋は結果的に居飛車になりました。女流棋界だと振り飛車が多く、一般の棋士だとタイトル戦だと相居飛車が多いと。里見さん自身も男性プロの将棋を参考にすることはあると思うのですが。戦型の幅について教えていただきたいと。
里見 居飛車を指せることには、常にあこがれがあります。今回は、流れの上で居飛車になったということになって。大きな一番なので、採用を迷っていたのですが、そういうことよりも、自分のやりたいというのが先行して、そういった気持ちは大事にしたいなと思っています。柔軟性や新しいことに挑戦したいというのは持っていますが、そのためにはいろいろ準備が必要なので、日々、頑張りたいと思います。
―― たとえば、最近見た将棋で刺激を受けた将棋は。
里見 びっくりした将棋は佐藤先生(康光九段)の棋王戦の郷田真隆九段戦です。銀が……、8二から9三に出ていって。大一番で指されるという、すべてに感動しました。自分は指せませんが。刺激になるというと失礼になりますが。もっと自分の将棋、楽しいと思えるような要素も入れていきたいと。
―― 今年は最多タイトル獲得で、新たな気持ちでとありましたが。年明けは伊藤沙恵女流三段との女流名人戦がありますが。
里見 タイトル数が増えたことは光栄なのですが、反省点も多いので、修正できるように精進していけたらと思っています。来年までに少し猶予があるので、自分の中で消化して。伊藤さんは独特な棋風ではありますが、自分の将棋を指せたらと思いますし、しっかり対応できるよう準備したいと思います。