2020年12月 1日 (火)

20201201a_5▲6六歩に対し、西山女流王座は48分の考慮に沈みます。指したのは△6六同歩でした。先手の注文通りであまり検討されていない手でしたが、▲同角△6五歩▲7七角に△8四歩が気づきにくい受けです。20201201b_2タダのところに歩を突いたのです。狙いは▲8四同飛に△8三銀と端を強化することで、▲9四歩△同香▲8六桂も△8三銀▲9四桂△同銀▲9五香△8五銀で簡単ではありません。
「先手持ちだったんですか、検討してみるとかなり難しいです。すっきり攻めが決まりません」と伊藤真五段。△8四歩に今度は里見女流四冠が手を止めています。里見女流四冠の▲6六歩と西山女流王座の△8四歩は、お互いに相手の読みにない一手をひねり出した可能性が高いといえます。ねじり合いの展開です。

Dsc_5288(日本経済新聞解説・YouTube解説を務める伊藤真吾五段。YouTube解説は終局後、リコー公式YouTubeチャンネルで配信される。関係者に勧められて、撮影に用意された里見女流四冠の柿を手に取った)

Dsc_5290(すかさず?撮影する中村太七段)

Dsc_5293(中村太七段はショートケーキ。イチゴは最後に食べる派とのこと)

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以下△5四歩に▲9五歩△同歩▲9三歩△6五歩と進んでいます。△5四歩から△6五歩は9三の地点をにらんでいる角をどかして攻めを緩和する狙いで、△5四歩を省いて△6五歩は▲5五角と玉をにらまれました。

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△9三同香に▲8五桂や▲9五香△9四歩▲同香△同香▲9五歩が控室の候補手でしたが、実戦は▲6六歩でした。

20201201c△6六同歩▲同角で、次は▲8五桂が厳しいです。▲6六同角に△6五歩と角を追えば、▲7七角で▲9四歩△同香▲8六桂を狙います。後手は端をただ攻められると、大駒2枚が中途半端なので形勢を損ねます。現局面は△4五歩や△7三桂とし、先手の角道が止まったのを逆用できれば後手が面白いです。

対局者の昼食は陣屋カレー(ビーフ)。そのほかに西山女流王座はアップルジュース、里見女流四冠はホットカフェラテ、ショートケーキ、柿を追加しています。
陣屋カレーは名物のひとつ。もともとはメニューになかったのですが、中村太七段の師匠・米長邦雄永世棋聖が注文したのが始まりだったといわれています。

※対局者とは別に注文したものを撮影しています。

Dsc_5265(西山女流王座の昼食)

Dsc_5261(里見女流四冠の昼食)

Dsc_5256(豊富なトッピングも楽しみのひとつ)

Dsc_5247(昼食休憩時の対局室)

Dsc_5249(大山康晴永世十五世名人の書が歴戦を見守ってきた)

Dsc_5239(現局面)

Dsc_5243(里見女流四冠の玉将)

Dsc_5242(西山女流王座の王将)

Dsc_5244_2(クリスタル製の碁盤が飾られている)

里見女流四冠の初手▲5六歩から相振り飛車に進んでいます。初手▲5六歩は第1局でも指され、相中飛車から先手が居飛車に戻す展開でした。本局は後手の西山女流王座が三間飛車に構え、里見女流四冠は向かい飛車に振り直しています。

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△7四歩は11時過ぎの局面です。立会人の中村太地七段に話を聞きました。

「先手は居玉ながら攻撃態勢に手をかける意欲的な駒組みです。後手はがっちり受け止めようとしていますね。まだ序盤ですが、一手でもミスすると急にバランスが崩れるので、神経を使う将棋だと思います。指したい手が多いのは後手で、高美濃や石田流に組み、左銀を活用したいところです。先手は▲4九玉から▲3九玉と指したいですが、そこまで玉は堅くならないので、動ける形を作れるかどうかでしょう。ポイントのひとつは先手の角で、いま気になるのは△5四歩ですね。次に△6五歩▲同桂△6四金と角をいじめる狙いですが、▲8五飛△7五歩▲同角で受かっているかもしれない。しかし、これは先手玉の位置が戦いに大きく影響するので、成立するかはケースバイケースです」

午前のおやつは、里見女流四冠がホットカフェラテです。西山女流王座には、対局前からアイスコーヒーが出されています。

Dsc_5230(ホットカフェラテ)