五番勝負開催にあたって、対局者の記者会見が行われました。
【専務理事 島朗九段】
「みなさんこんばんは。リコーさんの、この女流王座戦、今日挑戦者決定戦が行われまして、本当に実績のある甲斐さんを、新鋭の伊藤さんが見事に撃破されて、挑戦権をつかまれました。女流棋界は非常に各世代、争いが激化しておりますけれども、男性棋界と同様に若い方が――チャンピオンも若いですけど、伊藤さんも伸び盛りということで、奨励会でも何度も対戦している間柄でもありますし、手の内を知り尽くした戦いになると思いますけれども、加藤さんにとっては、いずれは戦わなければいけない相手が出て来たなと思います。伊藤さんはやはり、非常に実力がありながら、なかなかタイトル戦に出る機会が――実際にそれを実現することは大変なことで、今日そのチャンスをつかまれたことは、本当に素晴らしいことだと思います。特に今回、こういう言い方が正しいかどうかわかりませんが、トーナメントで里見さん(里見香奈女流名人・女流王位)という凄く大きな山、壁を、伊藤さん乗り越えてきたので、そういう意味ではですね、本当の挑戦するのにふさわしい、強敵を続々と破ってきたということもありまして、加藤さんもですね、最強の挑戦者を迎えたなと。今期の女流王座戦に限らず、この二人の戦いはこれから必ずずっと続いていくことだと思いますので、その第一幕がこの大舞台で展開されるのだと思います。加藤さんも本当に風格が出てきましたので、若い二人なんですけど、若くて勢いがあって、なお非常に風格のある番勝負になるのではないかと期待しております」
【伊藤沙恵女流二段】
「まず、今期の女流王座戦は結構苦しい対局が多くて、精神的にもつらい部分があったのですが。里見さんと指して――以前、リコー杯で里見さんと指したことがあったので、まさか勝てるとは思っていなかったのですが、全力で指さなければいけないと思って、それがいい結果につながったのかなと。私の将棋は、ちょっと変わっていると思うんですね。今期の女流王座戦は玉が上部、相手陣に行くようなことが多くて、苦しい状況の中にあって、そこを勝ち切れてここまでこれたなと思います。五番勝負は、加藤さんということで、奨励会でも何度も対戦してきたのですが、私が女流棋士になったことで、こういう場でしか指すことができなくなってしまったのは残念に思っているのですが、このような形で、また加藤さんと指すことができて、嬉しく思っています。本当に手の内を知られてしまっている相手なので、そうですね、私もこのままじゃいけないなと思っています。精一杯、熱戦になるように頑張りたいと思います」
【加藤桃子女流王座】
「まず、伊藤さんへの印象ですが、伊藤さんとは小学生の頃からとてもお世話になっていて、奨励会でもたくさん対戦してきた中で、お互いに、将棋もですし、性格もいろんなことがわかっている仲なんですけど、そういう方を挑戦者に迎えるということは初めてなので、どう振る舞っていいのかなということはありますけれども、ただ五番勝負ではやっぱり勝負師として戦うべきなので、ひたすらやるしかないかなと思っております」
【質疑応答】
――伊藤さん、終局直後の談話の際に、ちょっと涙ぐまれたと思うのですが、あの涙はどういった思いがあったのでしょうか。
伊藤「まさか自分がこの場に立てるとは思っていなかったので、それを質問されたりとかして、挑戦したんだなということや、いろいろいままでの対局のことが込み上げてきてしまいました」
――加藤さん、(伊藤さんとは)奨励会時代たくさん指されていたと思うのですが、当時の戦績はいかがでしたか。
加藤「うーんと、たぶんですけど、五分といいたいのですが、私のほうが負け越していたような気がします」
伊藤「すみません、私は(自分が)負け越していると思うので、ちょっとびっくりしたのですが。あの、1級ぐらいで結構、桃子ちゃんとは、結構当たりましたよね? そのときに、結構負けた記憶しかない……。それで初段に上がられてからは、対戦がなくなったので、負け越しているかと思います(笑)」
――いまの続きですが、(お二人は)ざっと何局ぐらい対戦されているのですか。
加藤「たぶん……20局は指してますよね。30指してるかな? 20から30ぐらいだと思います」
――伊藤さんは、加藤さん同様にプロ棋士を目指していて、23歳という年齢で女流棋士になられたわけですが、その辺で女流としての決意のようなものはあったのでしょうか。
伊藤「そうですね、女流棋士になったからには、いつかタイトルに挑戦できたらいいなとは思っていたのですが、まさかこんなに早くできるとは自分でも思っていなかったので、自分でも驚いています。女流棋士になったひとつの理由として、やっぱりたくさん勝つと男性棋戦にも参加することができるので、そういう目標も持って女流棋士になりました」
――伊藤さん、小学生名人戦で、佐々木勇気君とかと同時期に指されていて、彼はいまプロで活躍していますが、そのへんはどういうふうに感じていますか。
「そうですね、小学生のときは、本当に佐々木君とはたくさん指していて、勝ったり負けたりだったんですが、いまはだいぶ差をつけられてしまいましたね。少しでも、プロに近づけたらなと思っています」
最後に花束贈呈と記念撮影が行われて記者会見が終了した。
【五番勝負日程】
加藤桃子女流王座に伊藤沙恵女流二段が挑戦する、第5期リコー杯女流王座戦五番勝負は以下の日程で行われます。
第1局 10月22日(木) 宮城県仙台市「ホテルメトロポリタン」
第2局 11月7日(土) 静岡県静岡市「浮月楼」
第3局 11月28日(土) 大阪府大阪市「芝苑」
第4局 12月11日(金) 東京都渋谷区「東京・将棋会館」
第5局 12月25日(金) 東京都渋谷区「東京・将棋会館」
以上で本日の中継を終了いたします。
ご観戦誠にありがとうございました。