2016年2月21日 (日)

渡辺棋王と佐藤八段は対局翌日、北國新聞会館で行われる第20回ジュニア棋王戦の開会式に出席しました。ジュニア棋王戦は北國新聞社が主催する大会。今年も多くの子どもたちが集まっていました。参加者は対局の前に、渡辺棋王、佐藤八段、橋本八段と握手をしました。

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■主催者あいさつ

北國新聞社 小竹由則・営業事業局事業部部長

「皆さん、おはようございます。渡辺棋王、佐藤八段におかれましては、遠路はるばるお越しいただきましてありがとうございました。昨日も熱戦が、この北國新聞社で繰り広げられました。皆さんも今日は第20回を記念すべき大会でございます。北陸3県からお越しいただいている、明日のプロ棋士を目指す皆さんには、最後まで熱戦を期待しております。
さて話は変わりますが、プロ棋士と接させていただく中でひとつ感じたことがあります。それは何かと申しますと、高い技術力や多様な戦術はいうまでもありませんけれども、高い人間力です。一挙手一投足の丁寧な振る舞い、そして礼節正しい態度など、本当に見習うべきところが多々ありました。皆さんも将棋力の向上は人間力の向上だと思って、相手を敬う気持ち、そして勝負に負けないという自分との戦い、というものをいまのうちから身につけていただきたいと思います。それでは熱戦を期待しております」

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■歓迎あいさつ

金沢市教育委員会 宮下毅・教育次長

「皆さんおはようございます。第20回ジュニア棋王戦が開催されますことを、心よりお喜び申し上げます。昨日、この会場で棋王戦が行われました。大変な熱戦だったと聞いております。将棋は日本古来の伝統的なスポーツで、駒を取り、それを使う独自の文化が発達してきました。いくつもの読み、思考力、忍耐力といったものが必要になるともうかがっています。今日は友だちと仲よくなるとともに、自分の可能性に挑戦してください」

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■渡辺明棋王

「皆さん、おはようございます。今日は北陸ジュニア棋王戦ということで、明日の新聞にも載るような非常に大きな大会です。緊張するかとは思いますけれども、ぜひ普段の力を発揮して頑張っていただきたいと思います。
私は小学生のころから将棋をやっていて、20年前くらいですかね、そのときもこうした大会で大勢の将棋を指す子どもがいたんですけれども、いまもこのように100人を超えるお子さんたちが将棋を指しに集まってくれるのは大変うれしく思っています。
小さいころから将棋をやるといいことがたくさんあると思うんですけども、いくつか挙げますと、将棋は自分の頭で考えるゲームですので、考える習慣がつきます。いまは皆さんパソコンをやったり、中学生以上の皆さんは携帯電話を持っていたりすると思いますが、そうすると漢字をなかなか自分で書かない。私が小学生の頃は携帯電話やパソコンがなくて、作文などの文章も自分の手で書いていましたけど、大人になってパソコンを使うようになったら漢字を書けなくなって。本当に書けなくなりますから、皆さん気をつけないと。だから書くときに必要な自分の頭で考えること、そういう習慣をつける意味でも将棋は非常にいいものだと思っています。
あと将棋はいわゆる『待った』ができないんですね。やり直しができない。これも大事なことで、例えばゲームとかで、やってダメだったら戻して、ということをやっていますと、ひとつのことを決定する力がつかないです。やり直しが利かないからこそ一生懸命考えて、決定する力がつくんだと思います。勉強にも役立つと思います。将棋はいろいろな力がつくものですので、プロ棋士を目指す人もそうでない人も、ぜひ将棋を楽しんで続けていってもらいたいなと思います。
今日は将棋を指すわけですが、勝つ人、負ける人は出てきてしまいますけれども、今日は一生懸命やって、楽しく指して帰ってください。あとは、学校の勉強も忘れないように頑張ってください。将棋だけをやっているというのはよくありませんので(笑)。学校の勉強、できれば家のお手伝いとかもやると、お父さん、お母さんもうれしいんじゃないかなと思います。それでは今日は頑張ってください」

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■佐藤天彦八段

「皆さん、おはようございます。今日はたくさんの子どもたちが集まっていてすごい壮観だなと、ここから見て思います。僕は福岡県出身で、子どものころにこういう大会に出ていたんですが、当時はここまで大きな大会は見たことがなかったです。今日は同じ年くらいの子と指せるということで、将棋は指す前は知らない人でも、指したら一局を通して相手のことがわかってきて、感想戦の中で友だちになれたりすることもありますので、そういうところでも楽しんでいただけたらなと思います。
将棋では勝つことがいちばんうれしいことで、負けるのは悔しいことです。今日は頑張るぞという気持ちで来ている人が多いと思いますが、そこで負けると『あーあ……』という気持ちになってしまうでしょうが、今日は一日ありますから、たくさん指せると思いますので、一局一局の負けは気にせずに楽しんでもらって、今日がいい思い出になればいいなと思います。今日は皆さん頑張ってください。どうもありがとうございました」

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(書き起こし=虹、写真=文)

2016年2月20日 (土)

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■佐藤天彦八段

――今日は序盤から難しい戦いだったと思うのですが、いかがでしたか。
佐藤 似たような形は前例でもあるんですけど、何かあったら終わりというか、すぐ悪くなってしまう形なので、ずっと気を使うところが多い勝負だった気がします。
――途中で誤算があったようなところはありましたか。
佐藤 △6六桂(40手目)に▲同歩はあまり読んでなかったんですけど……。
――そのあと▲5九玉(43手目)と落ちる形になりました。
佐藤 あまり考えてない変化だったので、読み直しという形にはなりました。
――優勢を意識された局面は。
佐藤 最後に△9二角(60手目)と打ったところで何もなければという読みだったので、それが実現して勝ちになったのかな、というように思いました。
――これで1勝1敗になりました。第3局以降の意気込みをお聞かせください。
佐藤 まずは1勝することができたので、次局以降も頑張っていきたいと思います。

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■渡辺明棋王

――今日はずっと難解な戦いと思っていたのですが、いかがでしたか。
渡辺 そうですね。すぐ終盤戦になるような将棋になったんですが、ちょっと認識が甘かったところがあって、気がついたら修正できなくなっちゃったな、という感じでしたかね。
――序盤から苦しかったのでしょうか。
渡辺 あまり想定していない変化だったんですけど、進んでみるとどうにもならなかったというか、そういう将棋だったような気がします。
――控室では△6六桂(40手目)に▲同歩と取ったあたりでは驚いていたのですが。
渡辺 しょうがないと思って。桂を3枚持って大変なところがあればと思ったんですが、思ったより悪かったですね。
――これで1勝1敗になりました。次は新潟の第3局になります。
渡辺 また改めてという格好になったので、残りの3局を頑張りたいと思います。

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(文)

Kiou201602200101_66第41期棋王戦五番勝負第2局は、66手で佐藤天八段の勝ちとなりました。終局時刻は18時2分。消費時間は▲渡辺明3時間35分、△佐藤天3時間54分(持ち時間各4時間)。五番勝負第3局は、3月6日(日)に新潟県新潟市「新潟グランドホテル」で行われます。

(虹)

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佐藤八段の打った△4四角(図)は「名手」という評判です。ニコニコ生放送に電話出演した村山七段は、「△6二玉~△4四角が受けの強い天彦さんらしいさすがの手順で、後手ペースという気がします」と話しています。

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(文)

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▲6四桂の王手に佐藤八段が△6二玉(図)と寄ったところで、渡辺棋王の手が止まりました。16時45分の時点で、渡辺棋王の考慮時間は32分ほど。現地では▲8三角△6四歩▲6一角成△同玉(A図)で寄せを目指す順が調べられています。

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A図から控室の橋本八段は▲7二金、大盤解説会の村山七段は▲6三桂を示していました。後手玉は怖い形ですが、△5二玉~△6三玉で上に逃げる含みがあり、先手も寄せるのは簡単ではなさそうです。橋本八段は「後手がよさそう」、村山七段は「先手がよさそう」と、見解が割れています。
ちなみに、後手からは△3七角!という狙い筋があります(一例=B図)。

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詰将棋のような焦点の捨て駒。B図で▲3七同銀は△6九金▲4八玉△6八竜▲5八歩△5七角▲3八玉△2七銀で詰み。ただ、▲3七同桂ならば詰みはない模様。すぐに決行するのはうまくいかないようです。

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(文)

兼六園は「宏大・幽邃、人力・蒼古、水泉・眺望」の六勝を兼備するという意味で、李格非の書いた「洛陽名園記」の文中にある言葉から命名されたもの。徽軫(ことじ)灯篭のある霞ヶ池の眺めが有名です。週末ということで、あいにくの天気にもかかわらず、多くの入園者でにぎわっていました。

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(文)