2022年8月の記事
山崎八段の構想を探る
22手目から33手目まで
△6二銀▲8八玉△3二金▲9八香△5四歩▲9九玉
△4一飛▲8八銀△4二角▲6六歩△7四歩▲6七金
22手目△6二銀が珍しい手でした。山崎八段の構想が注目されます。控室では図から△9一飛を実現させる順を検討していますがどうなるでしょうか。後手は4二角の利きを止めたくありません。したがって△6四歩から△6三銀のような駒組みは選びづらいです。▲5九角から▲3七角(間接的に角で9一をにらむ)にも注意したいところです。
ほかには△7一金でエルモ囲い風に指す構想もあるかもしれませんが、△4一飛と引いた手との関連が薄いという意見もあります。
戦型は後手四間飛車
初手から21手目まで
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△3二銀
▲6八玉△9四歩▲5八金右△3三角▲2五歩△9五歩
▲3六歩△4二飛▲5六歩△6二玉▲7八玉△7二玉
▲5七銀△4三銀▲7七角
戦型は先手居飛車、後手四間飛車の対抗形になりました。最近の山崎八段は、2手目△3四歩、4手目△4四歩、6手目△9四歩の出だしをよく指しています。居飛車と振り飛車のどちらも天秤にかける指し方ですが、結果的に四間飛車になったのは意外でした。振り飛車自体は最近も指していますが、角道を止めたノーマルな四間飛車を指すのは四段時代以来のようです。
山崎八段が振り飛車にした理由について、観戦記を担当する上村亘五段は(1)△9五歩と端を突き越せたこと、(2)▲3六歩を先手が選んだことの2点を挙げます。
「通常の振り飛車の出だしだと△9四歩に▲9六歩と受けられることが多いです。本局は端の突き越しが振り飛車の主張です。また、▲3六歩は居飛車穴熊にする場合は不急の一手です。それで山崎八段は振り飛車にしたのではないでしょうか。一方、居飛車側の視点からすると、最近は▲3六歩を突いてから穴熊に組んでも大丈夫という認識があります。広瀬八段としては、居飛車党の山崎八段の飛車を振らせたという考え方もできます」(上村五段)
過去の挑決三番勝負
挑戦者決定トーナメントが現在の形になったのは第19期からです。前期までの挑戦者決定三番勝負の結果をまとめました。(1優)は1組優勝、(13)は1組3位、(22)は2組2位を示しています。○や●は左側の棋士からみた勝敗です。
第19期 丸山忠久九段(1優)●● 佐藤康光棋聖(13)
第20期 木村一基八段(1優)●○● 佐藤康光二冠(12)
第21期 羽生善治名人(15)○●○ 木村一基八段(12)
第22期 深浦康市王位(1優)○●● 森内俊之名人(2優)
第23期 久保利明二冠(14)●● 羽生善治名人(13)
第24期 丸山忠久九段(1優)●○○ 久保利明二冠(12)
第25期 丸山忠久九段(14)○●○ 山崎隆之七段(12)
第26期 郷田真隆九段(14)○●● 森内俊之名人(12)
第27期 羽生善治名人(1優)●○● 糸谷哲郎六段(3優)
第28期 永瀬拓矢六段(4優)●○● 渡辺 明棋王(22)
第29期 丸山忠久九段(1優)○●● 三浦弘行九段(13)
第30期 松尾 歩八段(1優)●○● 羽生善治三冠(12)
第31期 広瀬章人八段(1優)●○○ 深浦康市九段(22)
第32期 豊島将之名人(14)○●○ 木村一基九段(13)
第33期 羽生善治九段(1優)●○○ 丸山忠久九段(22)
第34期 永瀬拓矢王座(1優)●● 藤井聡太二冠(2優)
今回の山崎八段と同じ1組4位の挑決は過去に4回あり、挑戦権獲得は2回。広瀬八段と同じ2組優勝は2回あり、挑戦権獲得は2回です。
過去16期のうち、トーナメントの左山を勝ち抜いた棋士(上記リストの左側)の挑戦権獲得は6回で38%。第1局に勝った棋士の挑戦権獲得は10回で63%。初戦から連勝は3回で19%。フルセットが多いのも挑決三番勝負の特徴です。(記事内の段位や肩書は当時)
対局開始
ABEMA配信
本局は9時50分からABEMAで動画配信されます。解説者は屋敷伸之九段、佐々木慎七段、井出隼平五段。聞き手は貞升南女流二段、中村桃子女流二段。
【ABEMA番組表】
https://abema.tv/channels/shogi/slots/DjdNAJxi6umyAP
【ABEMAオンエア】
https://abema.tv/now-on-air/shogi
読売新聞
主催の読売新聞社では紙面のほか、読売オンラインやツイッターでも情報を発信しています。ぜひご覧ください。
【竜王戦|読売オンライン】
https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/ryuoh/
【観戦記|読売オンライン】
https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/ryuoh/kansenki/
【本戦出場者の群像|読売オンライン】
https://www.yomiuri.co.jp/s/ims/35ryuoh11kishi/
【読売竜王戦 公式|ツイッター】
https://twitter.com/yomiuri_ryuo
挑決三番勝負第2局
第35期竜王戦決勝の挑戦者決定三番勝負第2局を中継します。勝ち上がったのは山崎隆之八段(1組4位)と広瀬章人八段(2組優勝)。広瀬八段は第2局を制すれば2勝0敗で挑戦権を獲得します。山崎八段が勝てば決着は第3局に持ち越されます。
2022年8月23日(火)10時から東京・将棋会館の特別対局室で指されます。持ち時間は各5時間。第1局とは先後を入れ替えて広瀬八段の先手です。
棋譜は読売オンラインの動く棋譜から見られます。将棋連盟ライブ中継アプリの棋譜コメントは銀杏、ブログは牛蒡が更新いたします。よろしくお願いいたします。
【竜王戦挑決第2局、山崎隆之八段×広瀬章人八段「動く棋譜」速報】
https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/ryuoh/20220823-SYT8T3275519/
【主催=読売新聞社】
https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/ryuoh/
【特別協賛=野村ホールディングス株式会社】
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【協賛=東急グループ】
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【協賛=株式会社UACJ】
https://www.uacj.co.jp/
【協賛=一般財団法人あんしん財団】
https://www.anshin-zaidan.or.jp/
感想戦
終局直後
(勝った広瀬八段は終盤のミスを認める)
── 一局を振り返って。
広瀬 こちらの陣形はバランスを取るのが大変なので、△8六歩(50手目)~△7六歩と取り込んだのがどうだったか。なんとか互角の均衡を保って終盤を迎えたのですが、恥ずかしいレベルの見落としで負けにしてしまいました。
── 見落としは▲6三馬(107手目)と引かれた局面?
広瀬 そうですね。▲4一飛から竜を取られるのをうっかりして。分かっていれば、それまでに違う指し方があったかと思いますが、本譜はいきなり負けにしてしまったので、最後は勝負するしかなくなりました。
── 次戦に向けて。
広瀬 この将棋は拾った形になりましたが、最終盤のミスは致命的なので、次局以降はその辺に気をつけて頑張りたいと思います。
山崎 序盤は相変わらず面白くない出だしでしたが、中盤で駒がぶつかってから、夕食休憩のあたりは少し指せるかなと思っていました。そのあと誤算があって受けに回ってしまい、チグハグだったなと。最初から、ゆっくりやればよかったのにと後悔していました。最後は負けかなと思っていた局面で大チャンスをいただいたのですが、最後の最後まで踏み込めなくて、情けない負け方をしてしまったなと。こちらが安全なときに寄せにいったほうがよかったと思いますが、具体的な順が分からなくて、中途半端なことをやってしまいましたね。寄せにいくよりは負けないうように指さないといけなかったです。
── 次戦に向けて。
山崎 さすがに大チャンスはものにしないといけないので、もう少し読みの精度と決断力を上げないと勝つチャンスがないかなと思います。その2つを少しでもよくして、いい将棋を指したいと思います。
(書き起こし:夏芽)