カテゴリ「第21期 初心者のための第5局解説」の記事 Feed

2008年12月 5日 (金)

081204_91_2いよいよ終盤戦に差し掛かってきました。
後手玉は▲6三銀成のあと、飛車が入れば▲3二成桂△同玉▲2二飛△4三玉▲2三飛成△3三銀▲3四金△4二玉▲3三龍以下の即詰みが生じます。どこかで▲8三香と打っていく手もあります。
先手玉は△4八飛(△5八飛)のあと、△6六歩▲同金(▲6八金引は△2二金▲同と△7六桂がある)△7七歩▲同桂△7六歩が寄せの一例。
ただ△4八飛だと▲7五角が、△5八飛だと▲6八金引が飛車取りになるネックもあります。

( 翔@白浜)

11時から40分ほど、福崎九段と矢内女王・女流名人による大盤解説が行われました。

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081204_64 福崎「△1二同玉は放送(BS)で矢内さんも言っていましたね。顔面受けと言って玉で受ける手です。将棋の本質は攻めですが、受けて駒を手に入れたり、玉を安定させたりして攻めに回ろうということです。あれ? 矢内さん聞いてる? ぼやーっとしてない?」
矢内「いえいえ。ああ、なるほどなーって聞いていました」
福崎「放送で自分で言っていましたよね」
矢内「△1二同香の変化をずーっとやっていて先手が良さそうということだったので、じゃあ△同玉だとどうなるのかなって思ったんです」

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081204_65福崎「▲3四銀(65手目)は取られる銀をえいっと出たわけですが、これはわかりやすいですね」
矢内「玉に近いところですね」
福崎「そう。銀が出る場所は3か所ありますが、後の▲2六桂があって攻めが続きます」

081204_69 福崎「▲2六桂(69手目)に△2五銀とすれば駒を取り返せますが、▲3四桂△同銀▲1五香と進んで…、これは攻めが続きますね。後手は攻め続けられるのはいけません」

081204_71_2 福崎「▲1四桂(71手目)の局面は歩以外の損得がありません。こういう将棋は歩も大きいんですが、先手も歩切れではないのでね。
 ▲1四桂に(1)△1三銀は(A)▲2一歩(△1四銀は▲1三銀の一手詰)△2四歩▲2一銀△2三玉▲3二銀不成△同玉▲2一歩成△同玉(参考1図)と、攻めても攻めてもヒラヒラと受けられてしまいます」
矢内「3八飛が使えていないですね」

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081204_71_1 福崎「そうですね。(1)△1三銀のところで(2)△2四銀もありますが、受けただけで桂馬に当たってないから、景気が悪いですね
 ここ数手は難しい手が続いているので、羽生さんも簡単には指せないですね。将棋は待ったができないので、指した手は全責任を負わないといけません」

081204_72_2 福崎「(2)△2四銀(参考2図)は安心感のある手です。△1三玉~△1四玉となればしっかりしています。でも先手にゆっくり指されます。(1)△1三銀は受けているけど攻めてもいる手。さっきの変化でのらりくらりと決まっていない。『よほどの実力を持っていないと攻めきるのは…』と思うんですが、ふたりとも実力があるので、そこは心配しなくていいですね」
矢内「(1)△1三銀に(B)▲6四歩はありますか?」
福崎「▲6三歩成とされてはいけませんから、これは入りそうですね。△同歩▲2八飛△1四銀▲1三銀△2一玉…。攻めあぐねているかもしれませんね」

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081204_89 福崎「(Aの変化の)△2一同玉に▲6四歩△同歩▲1五香という手もありそうです。以下△1五同金▲2四角(△同銀は▲2二金の一手詰)△1四金▲4二角成△同飛▲3三金(参考3図)。攻めきるのは大変でしょうか。羽生さんは長考になりそうです」

(翔@白浜)

2008年12月 4日 (木)

081204_48 久保八段に48手目の局面を解説していただきました。
「過去の例では(1)▲5七角と(2)▲6六銀が指されており、本局もこのどちらかだと思います。
 (1)▲5七角には△6四歩か△8四角。△8四角▲同角△同飛とお互い角を手持ちにすると、千日手になりやすく、渡辺竜王も過去に先手を持って千日手を経験しています(2003年の王位戦・森内現九段戦)。
 (2)▲6六銀は、渡辺竜王の棋風的には指さないような気がします。▲6六銀には△4五歩が多いですね。以下▲同桂△同桂▲同銀△5三桂で銀損になるんですが、この場合は桂馬を5三に使わせているので、それほど損ではないですね」

081204_48_2 「▲3四銀△同金▲5五歩(参考図)で角道を止めてから▲3五歩と突いて、何か取り返せそうな形です。
 (1)▲5七角に△4五歩は、▲6六角と覗く筋がある(2二玉をにらんでいる)ので指しづらいです」

081204_48_2_2 「(2)▲6六銀に△2一玉(参考2図)と引いたのが最新の実戦例で、後手は宮田敦史五段でした。先手がゆっくりしていると△3一銀と引いて堅いですね。▲5五歩や▲7五歩として動いていきたいです」

081204_46_4 「46手目の△3三桂は、戻れない駒なので跳ねづらいですが、こちら(右辺)を受け止めてしまえば、ということですね。▲2五歩を△同桂と取れるようにもなっています。桂馬を跳ねると進展性がなくなるということもありますけれども、参考2図の△2一玉は進展性を求めた手と言えるかもしれません。
 封じ手まではあと2~3手進むのではないでしょうか」

(翔@白浜)

081204_43 福崎九段に解説していただきました。
「先手は矢倉が完成して、ここから攻めていくことになります。『攻めは飛角銀桂』と言いますから。
 ここからは読みの世界。駒がぶつかると変化が多いので考えることになりますね。
 ここで羽生さんがおそらく守りの手を指して、渡辺さんが攻めの手を指すことになるでしょう。攻めの手というのはすなわち歩を突くことです。例えば▲3五歩△同歩▲2五桂。飛角桂が3五に虫眼鏡のように集中しています。
 でも後手も全軍で守っているので大変です。駒を渡すと反撃を受けますから。攻めたら駒得するとか駒が成れるとかプラス面を見出さないと、ただやみくもに攻めてもいけません」

081204_44「あ、△4二銀と引きましたねー。これで渡辺さんが▲3五歩といくかどうか。今やるのか、それとももっといいことが起こる…自分のほうが堅くなる、相手の陣形が崩れるとかなら、待ったほうがいいですね。単純そうに見えて、駆け引きがあるんですよ。人間同士がやっていますから。じゃんけんでも単純だけど、結構考えるでしょ?
 待つなら▲9六歩か▲9八香。▲9六歩は懐が広くなりますが、後手からの端攻めも生じるので、▲9八香でしょうか。
 完成した家にいくら色を塗っても変わらないのと同じで、局面もこれ以上よくはならない飽和状態があります。飽和状態になったら▲3五歩ですね」

(翔@白浜)

081204_25_2 久保八段に現局面を解説していただきました。
久保「先手はここから▲3五歩△同歩▲同角~▲3六銀~▲3七桂と組むのが理想形です。▲6八角と上がる一手を省略して玉を囲えるのが大きいですね。例えばここ(左図)で△4三金右なら▲3五歩△同歩▲同角(参考図)と進行します」

081204_29
久保「これ(参考図)は先手の作戦勝ちですね。後手はこの形を阻止するために、(上図から)△6四角と上がって、▲3五歩を防ぎます。先手は▲4六銀~▲3七桂と駒組みを進めます。後手は同じことをしようとしても、後手の上に△8四歩と突いているので間に合いませんから、先手の駒組みをけん制する感じの指し方になりますね」

081204_32
△6四角に▲3五歩は、△同歩▲同角に△3六歩▲4六銀△4五歩(参考2図)と、角のラインを生かして攻められる手が残ります。

(翔@白浜)