カテゴリ「第22期竜王戦七番勝負第3局」の記事 Feed

2009年11月11日 (水)

Photo

本局、一番のインパクトは96手目△7九銀(図)です。
 寄せに入る場合、銀、桂、歩と持っているなら、普通銀はとどめに残し、桂と歩で何か手を作ってと組み立てるのがセオリーです。△7九銀は全くの逆ですし、しかも自玉が裸ならなおさらです。3三角が迫っているうえ、さらに銀を渡してしまいます。そんな状況でこの一気の寄せはすごいとしか言いようがありません。部分的に筋は見えたとしても、この局面では・・とつい打ち切ってしまいそうです。さすがの森内九段もこの銀打ちには一発KOだったのではないでしょうか。
 玉の堅さに差があり先手有望かと思ってましたが…。竜王の正確な読みには脱帽です。
 森内九段は追い込まれましたが、去年の再現なるか…。3連敗3連勝の最終局まで楽しめることを期待したいです。

(安用寺孝功六段)

Photo_3  Ryuou20091110_5

本局は渡辺竜王が反撃に出るまでずっと森内九段が良いのではと思ってみていました。
全体としての内容も濃く全くといっていいほど指し手が当たらず、異次元の世界を見ているようでした。
指し手の中で自分では「とても指せそうもないなあ」と感心させられた手が88手目の△5五馬(図)と引いた手です。この手は詰ましている飛車をどうぞお逃げくださいと言っている手で、しかもその前の手が△3九歩成ですからなおさらです。
この手では△2二銀ぐらいしか浮かばず、以下▲2四銀成△2九と▲2三歩△同銀▲同成銀△3一玉(参考図)でその後は先手が攻め切るか、間を見ての後手の反撃がどうなるかと思っていました。
改めて渡辺竜王の懐の広さ、鋭さを見せつけられた思いです。

(大野八一雄七段)

Photo_2

お互いの研究がぶつかり合い、1日目から激しい戦いとなりました。これは双方の研究の見解が違っていたからこそ生じた事です。つまりこの対局はずっと前からお互いの頭の中では始まっていて、この一局の濃密さはそこまで鑑みるとすごいものがあります。
 図が封じ手の局面ですが、ここが82手目。全104手ですから、前例から外れて僅か20手少しで終了しました。これをどう捉えるかは意見が分かれるところでしょうが、「本当の勝負」という意味をぜひ感じ取っていただければと思います。

 この角換わり同型の後手番を持つ棋士は非常に少なく、それはよほど研究していないと一発で負かされる危険があるからです。それを承知で受けて立ち、そして勝ち切った事は素晴らしいと思います。また名手△7九銀はもちろん研究ではないでしょうが、この形に対する認識を深い所まで突き詰めていたからこそ放たれた一着だったと思います。
 本局は渡辺竜王にとって会心の一局と言えるでしょう。

(遠山雄亮四段)

「やってみたい形だったのですが、自玉がずっと怖い形なので形勢は難しかったです。定跡化されているので、こういう形になるかと思っていたのですが。△7九銀の寄せが見えて、良くなったかなと思いました。次も、一生懸命やるだけです。」(渡辺明竜王)

「封じ手あたりで間違えたのかもしれません。▲2四歩と打っていった方が良かったかもしれませんが…よくわからないですね。興味がある形だったのですが、正しく指せませんでした。」(森内俊之九段)

(烏)

Ryuou2009111099_3     Ryuou20091110_4

自宅解説陣では図から△7四桂▲7七銀△6九角成が厳しいと見ています。その後▲2三歩には△8七金▲同玉(▲同金は△同馬で詰み)に△8六飛(参考図)が好手で、▲同銀△7八馬▲同玉△8六桂以下の詰みとなります。

(大野七段、安用寺六段、遠山四段)