(藤井棋王は初防衛を達成。タイトル通算21期)
――△6二銀(8手目)から力戦形になったのは予定通りか。
藤井 作戦ではありましたが、本譜のように進むと1歩損の形なので、悪くならないようにできるかどうか、きわどいところだと思っていました。
――△1三角から△5五歩(48手目)のあたりは。
藤井 こちらの玉形が薄いので、激しい展開にならないようにして、厚みを主張できるような展開になるかどうかと考えていました。
――よくなったと感じた局面。
藤井 飛車と角銀を取り合ったあたりで(85手目▲7六同金)。いや、よくなっているかどうかはわからなかったですけど、こちらの玉が堅い形で攻めていけそうなので、展開としては割といい感じなのかなと思いました。
――本局全体の感想。
藤井 あまり公式戦では指したことのない形で、こちらが常に歩損ではあったので、どういうふうに進めればバランスを取れるか、苦心するところが多かったと思います。
――シリーズ全体の感想。
藤井 どの将棋も中盤が難しくてミスが出てしまったところもありました。そこは課題が残ったかなと思います。一方で前期の五番勝負は、早い段階で時間がなくなってしまうことが多かったのですが、今期はそういうことは比較的少なかった。そこは改善できたところかなと思います。持ち時間が各4時間の将棋だと時間配分も大事だと思うので意識しました。
――初防衛を決めた。
藤井 終わったばかりで実感はないのですが、大変なシリーズだったので防衛できたのはうれしく思っています。
――昨年の王座戦第2局からタイトル戦では14連勝している。これは歴代2位の記録。(1位は大山康晴十五世名人の17連勝)
藤井 五番勝負、七番勝負でセットと考えているので、その記録は意識していません。
――これで本年度の公式戦を終えた。
藤井 逆転勝ちが多く、課題が残る部分もありましたが、自分が思っていたよりもよい結果を残せたかなと思っています。
――序盤の形は予想していたか。
伊藤 予想はしていなくて、あまり考えたことのない展開になりました。棒銀から1歩得になったあとは、一手一手、手探りで指していました。
――控室では▲2六銀(47手目)に代えて▲3四銀も検討されていた。
伊藤 ▲3四銀には△3五銀から押さえ込まれる展開になると思って、あまり考えませんでした。ただ、▲2六銀も抵抗のある形で、不満のわかれなのかなと感じていました。
――本局全体について。
伊藤 こちらが歩得ではあるのですが、かなり陣形差があって、まとめるのに苦心した展開でした。中盤でバランスを崩してしまったのかなという印象です。
――シリーズ全体について。
伊藤 中盤でバランスを崩してしまう展開が多く、そこは前期の竜王戦七番勝負から課題ではあったのですが、なかなか修正できなかったのかなという印象です。
――本年度全体について。
伊藤 多くの経験をさせていただいた一年でしたが、力不足も痛感しました。