決戦突入
里見女流王座が中央から動いて決戦に突入しました。銀をさばく▲5五同銀(35手目)に△5八歩▲同飛△6九角が手筋の反撃です。以下▲4四銀△5八角成▲同金△4四歩▲7一角△8四飛▲6六角(A図)と自然に進むと振り飛車ペースになることが予想されました。
左美濃なので▲7一角~▲4四角成の筋が急所を捉えています。仮によく見る舟囲い系の囲いであれば、▲7一角の筋にも対応しやすい面がありました(B図が参考図)。
もう一度A図を見ると、8筋の突き捨てが入っていれば▲7一角に△8六飛と走れるため後手の得になることがわかります。そこで、控室では神谷八段が△4四歩と銀を取り返すところで△8六歩はどうかと検討していました。理にかなっているのですが、取れる銀を無視するのは抵抗のある順です。果たして、加藤女流三段は熟考して△8六歩(42手目)を指しました。
YouTubeの映像を見ていた神谷八段は「あっ、指したよ!」とうれしそう。前提として▲8六同歩は△4四歩▲7一角△8六飛で後手不満なし。先手とするとこの歩は悔しくて取れないところです。よって▲5五銀△8七歩成▲8三歩△同飛▲8四歩△同飛▲6六角△7八と▲8四角△7七とと銀得を主張する順を菅井八段は予想していますが、「振り飛車が粘りにいっている感じがします。居飛車に工夫の余地が多いですね」との見解。「午前中は加藤さんがうまくやりました」とここまでの戦いを総括しました。
序盤の駆け引き
本局は先手番を得た里見女流王座が中飛車に構え、加藤女流三段は居飛車で対抗形に進んでいます。今シリーズはすべて先手番が勝っているため、対局開始前の控室では菅井八段が「振り駒、めちゃくちゃ大きいですよ」と話していました。里見女流王座に追い風が吹く状況で加藤女流三段の対策が注目されますが、△5四歩(10手目)と位を保つ指し方を選びました。先手も5筋の位を取るタイミングはあったため、里見女流王座の様子見に加藤女流三段が決断した形といえます。
菅井八段は▲5九飛(15手目)に「相当に珍しい」と注目しています。よくあるのは▲3八玉~▲2八玉~▲3八銀と囲ってから攻撃陣に手をかける指し方。本譜は「形を決めすぎという見方もある」というのが菅井八段の見解です。ここからしばらく進んで△2四歩(30手目)まで進むと主張が見えてきます。
よくある▲6六銀ではなく、▲4六銀と玉側に銀を使っているのが振り飛車の主張です。状況次第では△3五歩と玉頭に圧力をかける形が嫌になりますが、そうした玉頭戦の変化に備えている意味があります。加藤女流三段もよく見るバランス型の△6四銀ではなく、△4四銀から左美濃に構えて堅さ重視にしたところが珍しい選択。猛スピードで進んだ序盤でしたが、興味深い駆け引きがありました。

















