2021年9月17日 (金)

2021091747

午後に入って戦いが本格化してきました。

図は先手が▲5五歩と突いたところ。後手の要駒である角を目標に切り返しました。タダの歩で△5五同銀と取れますが、攻め駒が先手玉から離れて浮き駒になってしまうのが嫌みです。例えば▲5五歩△同銀▲8四歩△同歩▲同銀△8七歩と進んだときに、▲7三銀成(A図)の取り方が悩ましくなります。△同金は▲5八飛が銀取り。△同玉は▲7八飛と王手で逃げることができます。

A

本譜は▲5五歩に△4五角と逃げ、▲5八金上△3六歩に▲8四歩と進みました(下図)。角の利きが8筋から外れたため、△8七歩と飛車の頭を押さえる筋が消えています。

2021091751

8 (里見香女流四冠)

2021091746_2

12時40分、対局は定刻どおりに再開されました。

伊藤女流三段は再開からさらに13分使い、△3五歩(図)と突いて先手陣に攻めかかりました。角の利きを8筋に維持しつつ、腰の入った攻めを目指す本筋の一手です。▲同歩は△同銀が継続手で、▲同銀は△2七角成が決まります。

△3五歩にどう対応するのか、今度は先手が考える番。里見香女流四冠が時間を使っています。

71 (両者とも再開の10分前にはすでに対局室に戻っていた)

72

73 (伊藤女流三段)

2021091745_2

午前中は駒組みで終わるかと思われましたが、後手が飛車先を切ったタイミングで先手も動いていきました。▲6六銀~▲7五歩が早繰り銀のような仕掛け。飛車を追って▲7五銀に△5四角(44手目)が狙いの切り返しです。▲8四歩△同歩▲同銀に△8七歩の受けを用意しつつ、次に△3五銀の攻めも見た攻防手です。 先手がどう切り返すか注目されましたが、里見香女流四冠の着手は▲3六歩(図)でした。△同角と取らせて角の利きを限定し、▲8四歩の筋を実現する狙いです。一気に戦いになだれ込んでいく危険性もあるため、どう対応すべきか、考えどころの局面です。

▲3六歩の局面で伊藤女流三段が考慮中に12時となり、そのまま昼食休憩に入りました。消費時間は▲里見香53分、△伊藤1時間6分。対局は12時40分に再開されます。

昼食の注文は里見香女流四冠が「鳩やぐら」の「肉豆腐(キムチ)弁当」で、糸こんにゃくとキノコからキノコを選択。伊藤女流三段の注文はありませんでした。

62 (休憩時の「特別対局室」)

63 (本局で使用されているのは香月師作、菱湖書の盛上駒)

61 (里見香女流四冠が注文したものと同じ「鳩やぐら」の「肉豆腐(キムチ)弁当(キノコ)」

2021091728_3

里見香女流四冠の中飛車に、伊藤女流三段は三間飛車で対抗。盤上は相振り飛車に進みました。居飛車党の伊藤女流三段ですが、対振り飛車では対抗形にせずに自らも飛車を振ることが多い印象です。里見香-伊藤戦では13局目の相振り飛車となりました。

図は11時ごろの局面。28手目△7四歩に里見香女流四冠が手を止めています。

11 (朝の里見香女流四冠)

伊藤 沙恵(いとう さえ)女流三段

32


 女流棋士番号: 52
 生年月日  : 1993年10月6日
 出身地   : 東京都武蔵野市
 師匠    : 屋敷伸之九段

 <昇段履歴>
   2014年10月   女流初段
   2015年9月   女流二段
   2019年4月   女流三段











<タイトル履歴>
  獲得合計: 0期
  登場回数: 8回
   マイナビ女子オープン  1回 (第14期)
   女流王座戦       1回 (第5期)
   女流名人戦       2回 (第44、45期)
   女流王位戦       1回 (第28期)
   女流王将戦       1回 (第39期)
   倉敷藤花戦       2回 (第25、27期)

<将棋大賞>
  第45回(2017年度): 優秀女流棋士賞、女流最多対局賞
  第46回(2018年度): 女流最多対局賞
  第47回(2019年度): 優秀女流棋士賞、女流最多対局賞


【女流棋士データベース】
https://www.shogi.or.jp/player/lady/52.html

里見 香奈(さとみ かな)女流四冠(清麗・女流名人・女流王位・倉敷藤花)

31


 女流棋士番号: 33
 生年月日  : 1992年3月2日
 出身地   : 島根県出雲市
 師匠    : 森けい二九段

 <昇段履歴>
   2004年10月   女流2級
   2006年4月   女流1級
   2007年2月   女流初段
   2008年9月   女流二段
   2009年4月   女流三段
   2010年2月   女流四段
   2011年10月   女流五段
   2020年4月   女流六段






<タイトル履歴>
  獲得合計: 44期
   清麗    2期 (第1~2期)
   女王    1期 (第6期)
   女流王座  4期 (第3期、6~8期)
   女流名人  12期 (第36~47期)         ※クイーン名人
   女流王位  7期 (第23期、26~28期、30~32期) ※クイーン王位
   女流王将  7期 (第32~34期、37~40期)    ※クイーン王将
   倉敷藤花  11期 (第16~20期、23~28期)    ※クイーン倉敷藤花
  登場回数: 53回

<将棋大賞>
  第34回(2006年度): 女流棋士賞
  第36回(2008年度): 女流棋士賞
  第37回(2009年度): 最優秀女流棋士賞
  第38回(2010年度): 最優秀女流棋士賞
  第39回(2011年度): 最優秀女流棋士賞
  第40回(2012年度): 最優秀女流棋士賞、名局賞特別賞
  第41回(2013年度): 最優秀女流棋士賞
  第43回(2015年度): 最優秀女流棋士賞
  第44回(2016年度): 最優秀女流棋士賞、名局賞特別賞
  第45回(2017年度): 最優秀女流棋士賞
  第46回(2018年度): 最優秀女流棋士賞、女流名局賞
  第47回(2019年度): 最優秀女流棋士賞、女流名局賞
  第48回(2020年度): 最優秀女流棋士賞、女流名局賞

<その他表彰>
  2007年3月   島根県文化活動特別奨励賞
  2010年3月   島根県功労者表彰
  2020年3月   島根県県民栄誉賞


【女流棋士データベース】
https://www.shogi.or.jp/player/lady/33.html

202109171_2

対局は定刻どおり10時に開始されました。

注目の振り駒は歩が3枚。先手番は里見香女流四冠となりました。

21 (注目の初手は▲5六歩。中飛車は里見の得意戦法である)

22_2 (里見香女流四冠)

23 (伊藤女流三段)

13 (対局は10時ちょうどの開始。「特別対局室」には関係者が詰めかけた)

5月に開幕した第11期リコー杯女流王座戦もいよいよ大詰め。挑戦者決定戦は昨年と同じカードになりました。里見香奈女流四冠が2年連続で挑戦を決めるのか、それとも伊藤沙恵女流三段がリベンジを果たすのか。注目の一戦は10時に始まります。
場所は東京・将棋会館。持ち時間はチェスクロック方式の各3時間。先後は振り駒で決定されます。

棋譜コメントは吟、ブログと写真撮影を若葉が担当します。


0 (今日の千駄ヶ谷は曇り。夕方からは雨の予報も出ている)