2014年10月の記事

2014年10月16日 (木)

指導対局の傍ら、日本将棋連盟ホノルル支部の野田支部長に取材を行った。井道女流初段とは、2010年に鈴木環那女流二段とハワイに来たときに交流があったそうだ。

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「私は1994年から2年会社の駐在員としてハワイにいました。そして、98年に移住しました。20年中で18年ハワイで暮らしていることになります。ハワイでは過去に将棋連盟の支部はなかったと思います。2008年5月にアロハ将棋まつりを開催しました。それを契機にハワイ支部を結成しました。このときは島朗九段にお越しくださいました。現在は支部の師範をされています。翌年も開催しまして、島九段と佐藤康光九段にお越しくださり盛り上げてくださいました。
2010年には井道さんと鈴木環那さんが来られて、指導会を開きました。大震災のあった2011年には、ご家族と来られた佐藤九段と北浜健介八段がチャリティーイベントをニューオータニで開き、募金をつのりました。佐藤九段は今回で3回目のハワイになります。
太平洋戦争の前は将棋も盛んだったと聞いています。当時は日系一世や二世が多かったですから。昭和30年ごろからは三世や四世の方が増え、普段は英語ですから、日本語を話せる方が少なくなってきました。そういうこともあり、チェスの人口はあるのですが、将棋のなじみは薄くなり、愛好者がかなり減ってしまいました。ワイキキのビーチでチェスは盛んです。以前は縁台将棋をやっていたこともあったのですが。
支部会員は現在十数人です。駐在人の方が多かったのですが、近年は事務所が減ってしまいました。50代から70代中心で活動しています。白人のアメリカ人がいます。
子供たちに教える教室も始めています。日系人の他、ハワイアンの人や中国人もいます。英語で伝え、矢印のついた駒を利用しています。しかし、受験を控えてくると勉強で離れてしまいます。大会がないので切磋琢磨する機会が少ないこともあります」

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「今回の竜王戦ハワイ対局の機会を利用して、関心を持ってもらい、巻き返していきたいですね。今回の対局の話があったときはうれしかったです。2月に将棋会館へいき、『実現できるなら、お手伝いしたい』と申し出ました。5月には主催側の方が来られ、こちらで打ち合わせしました。半年かけて準備しました」

(書き起こし=銀杏)

10時過ぎからは対局室隣に設けられたイベントスペースで指導対局が始まった。指導を担当したのは佐藤康九段、野月七段、石田四段、井道女流初段。中には自ら盤駒を持ち込んで指導を受け、棋譜を書き残している熱心な方も。

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(撮影:銀杏)

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ハワイ時間の15日、対局前日は検分や前夜祭が行われる。午前中、ハレクラニ2階では対局室の設営が始まっていた。使われる盤や駒も対局室に運ばれる。どちらもホノルル支部から持ち込まれたもので、駒は富月師作菱湖書、大竹竹風師作昇龍書の2組が用意された。

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2014年10月15日 (水)

18時から在ホノルル日本国総領事館で歓迎夕食会が開かれた。両対局者らは重枝豊英総領事夫妻の歓迎を受け、総領事館入口でしばらくの間歓談。入口には日本にまつわるさまざまな贈り物が所狭しと飾られていた。歓談を終えて夕食会会場に移ると、そこで重枝総領事へ初段免状授与のサプライズ。記念撮影を行った。

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記念撮影を終えた糸谷七段は、数名の関係者をともなってワイキキの散策に繰り出した。目当てはパンケーキ屋。そこでは思わぬ出会いが待っていた。

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それは日本からハワイに来た関西の棋士との合流。船江恒平五段、西川和宏五段、宮本広志四段、香川愛生女流王将がテーブルに加わった。

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(糸谷七段と肩を組む船江五段=左)

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(西川和宏五段=右、宮本広志四段)

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(香川女流王将=右もテーブルに)

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ランチの後に指導対局が行われました。「太閤将棋」を指しているところもありました。太閤将棋は2七の歩を落とし、駒落ちだからと先に指すといきなり▲2三飛成と歩を取りながら飛車が成り込めます。将棋が好きだけど、うまくはなかった太閤秀吉が楽しめるように考案されたものといわれています。指導対局では珍しい光景でした。

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記者会見終了後は、対局関係者とメディア関係者でランチをとりながらの歓談。棋士に直接話を聞いて取材もでき、森内竜王と糸谷七段は地元テレビ局の取材にも応じていた。その一環として、両対局者が駒を並べるシーンの撮影も。検分以外で対局前に盤を挟むのは非常に珍しい光景だ。駒を並べ終えて森内竜王が駒を片付ける。糸谷七段は片付けやすいように自陣の駒を揃えていた。

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(テレビカメラの前でインタビューを受ける両対局者。インタビュアーは日本将棋連盟ホノルル支部広報担当の谷生洋介さん)

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12時になり記者会見が始まった。まず谷川九段があいさつをし、両対局者が意気込みを語る。その後、質疑応答に入っていった。ハワイ対局開催については、小田尚英専門委員から説明がされた。

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■日本将棋連盟会長 谷川浩司九段
「竜王戦は今年で27期になります。主催の読売新聞社の皆さま、ハワイ対局におけるハレクラニ関係者の皆さま、日本将棋連盟ハワイ支部の皆さまには大変お世話になりました。御礼申し上げます。
これまで海外対局はおよそ20回行われたと思います。初めて行われたのはハワイでした。約40年をへてハワイに戻ってきました。
今回の竜王戦は、森内竜王と糸谷七段の対戦になりました。お二人は今月誕生日を迎えました。森内竜王は44歳、糸谷七段は26歳です。将棋界は40代の世代が非常に強い。20年にわたって、この世代の棋士が時代を築いてきましたが、糸谷七段を中心に20代の棋士がタイトル登場するようになりました。年齢差は18歳ですから、およそ二世代離れていますが、世代対決ということで注目を集めています。
糸谷七段は七大タイトル戦で初めて挑戦者になりました。二人がどのような将棋を指すか楽しみです。多くの方にご覧いただいて、竜王戦の対局によって、ハワイでの将棋熱がますます盛んになることを願っております」

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■森内俊之竜王
「昨日、ハワイに到着しました。環境がよくて、素晴らしいところで、快適に過ごしております。対局があさってから始まります。イベントも催されます。私は対局者として来ましたので、対局に集中していい内容を見せられればと思っています」

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■糸谷哲郎七段
「昨日よりハワイの方に入りました。素晴らしい景勝、人々、歴史を目にして、このようなところで初めてのタイトル戦を指させていただけるということで、誠に感謝しております。対局者としましては、自然にハワイの気候のようにリラックスして、ゆったりとした気持ちで指せればと思っています」

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――「谷川九段の話にありましたが、今月で森内竜王は44歳、糸谷七段は26歳になられました。森内竜王はこれから40代半ばにさしかかって大事な時期、糸谷七段は20後半に入りタイトル戦に初めて出ることになりました。お二人は今回のタイトル戦を通じて、どのような意義を持って戦われるつもりでしょうか」

森内「いままでタイトル戦を多く経験し、これまでは先輩や同世代との戦いが多かったですが、最近は後輩が出てきて、これからは増えてくると思います。
糸谷さんはまだ26歳。いままでの対戦の経験も少なく、糸谷さんの考え方をまだ理解できているわけではないので、七番勝負を通じて理解を深められれば。また、糸谷さんはとても独創的な将棋を指しますので、どういう展開になるかまだ分からないことが自分でも楽しみ。
少しでも相手の将棋を取り入れて、自分自身をさらに強くできればと思っています」

糸谷「世代間ということですと、今は20代の広瀬(章人)八段、豊島(将之)七段、中村(太地)六段が次々にタイトル戦に出るようになり、私は少し遅れてタイトル戦の挑戦者になりました。
世代間だけでなく、世代内でも競争があります。私は20代後半として競争に遅れず、そして、上の先生方の将棋を学びつつ、それを超えていかねばならないと思います」

――「今回のハワイの対局を指すという連絡を受けたときに、どのような印象を持たれましたか」

森内「実はハワイが初めてでして、映像などを見てイメージはありましたが、実際来てみないと分からないことがありますので、来ることができてうれしく思います。すばらしい環境です。
初めて聞いたときはびっくりしたのが正直なところです。今は穏やかな気持ちで過ごせています。あまりバカンス気分が強くなるのも緊張感が薄くなってよくないので、対局が近づいたら、少しずつ高めていって臨めればと思います」

糸谷「ハワイという話を聞いていたときは、まだ挑戦者に確定していませんでした。ハワイに行けることになったときはよかったと思いました。
景勝もいいところですし、自分の故郷であります日本三景の厳島に似ているような雰囲気を感じて、懐かしさを覚えました」

――「リラックスしている、気持ちを緩めているというところから、対局に向けてどのように気を高めていくのか教えてくださればと思います」

森内「私は具体的な方法はないのですが、対局までまだ2日あるので少しずつ気持ちを高めていきたいですし、実際始まってしまえば嫌でも緊張感が自然に高まっていくものですので、いまは少しのんびりして、皆さんと交流を深められればと思います」

糸谷「始まれば、否が応でも緊張していくと思いますが、基本的に私はリラックスしている方がいい結果につながると思っています。深呼吸や、一度席を外して、局面を見つめ直すなど、自分を自然な形に持って行けるようにしています」

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――「直近の対戦は、どのような形で結果はどうでしたか」

森内「いままで公式戦で3回、非公式戦で1回やっていますが、それからは数年たっています。テレビの早指し戦が多く、持ち時間の長い将棋を指すのは初めてです。ですので、初対局のような気持ちで臨みたいと思っています」

糸谷「公式戦3局のいずれもテレビの早指しでして、今回8時間の将棋です。そういう意味では、これまでと関係なく戦うことになります。データや雰囲気を捨てて、考えを組み立てて臨みたいと思います」

――「谷川九段にお聞きしますが、ハワイの対局が決まって感じられたことはありましたか」

谷川「私は会長という立場と現役棋士という立場があります。最初にハワイで竜王戦が行われると聞いたときは、挑戦者のチャンスがあったのですが途中で負けてしまいました。それで、対局者でなく会長という形で寄せていただくことになりました。
ハワイは日本人や日系人も多いです。海外で初めて行われた地でもあります。大げさかもしれませんが、海外普及の原点とも言えるのがハワイです。
将棋は日本古来の伝統文化ですが、最近はネットの普及により、どこでも指せて、プロの将棋もリアルタイムで観戦できるようになりました。
余談になりますが、12月に静岡で将棋国際フォーラムを3日間開催しまして、38か国の外国人の将棋の強い人を招待して、国際的なトーナメントを行います。外国人でもアマ四段、五段の人もいらっしゃいます」

――「服装が対照的ですが、どのように選ばれましたか」

森内「昨日、ハワイに着いてからプレゼントしていただきました。皆さんこういう服装で来られるとお聞きしたので、スーツだと硬いかなと思いましたが合わなかったですね」

糸谷「竜王戦用にスーツを仕立てたので、ちょっとせっかくですから着て来ようかと思いまして。しかし、気候に合わないですね。ちょっと暑い格好でして、これからはアロハで過ごさせていただこうかと思います。失礼いたしました」

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■読売新聞社 小田尚英 専門委員
「将棋は日本では新聞社がスポンサーの伝統がありまして、読売新聞も80年くらいかかわっています。竜王戦はできて26年になりますが、海外対局は15回目になります。読売としては固有の文化、世界的に誰でも楽しめるゲームの将棋を海外の方に知っていただく機会を貢献できることを誇りにして開催しています。
最近、ペースがにぶりましたが、今回6年ぶりに海外対局を開催できました。アメリカは今回で4回目、最初の海外対局が棋王戦のハワイ。久しぶりでいい。囲碁でも棋聖戦でハワイをやっており、ハワイいいなと皆さんに楽しんでいただければと思っています。
もう1点、ホテルグループと数局同時に開催できないかということで、当地はハレクラニですが、運営が帝国ホテルでして、第1局はハワイ、第2局は大阪、第3局は東京で開催すると。ハワイ素晴らしい、ぜひぜひ開催したいということになりました。ホテル側は文化事業に関心がおありで、ホテルのイメージも非常にいいところですので、双方の目標が一致しました。それで初めて3局続けて同一系列のホテルで開催する企画になりました。
ハワイは竜王戦では初めて。アメリカ本土で行われた、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコで当時お世話になった方も集まっていただけます。アメリカ将棋界の皆さんとの再会も個人的に楽しみにしております」

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(書き起こし=銀杏)