2014年10月の記事

2014年10月16日 (木)

盛況だった前夜祭も閉幕。明日から始まる第1局について、三人の棋士に展望をうかがった。

Img_9714001

佐藤「糸谷七段は初挑戦で初めての海外ということがあり、緊張もあるが、物おじしないタイプなので普段通り指されるのでは。世代間対決で、接戦になるのではないかと思う。森内さんは腰が重いがっちり受けるタイプ。糸谷さんは薄い陣形のときに修復や手入れがうまい。早指しだったが、最近は時間を使っている。どういう配分にするかがポイントだと思う。二人とも慎重に一歩ずつ進むタイプ。戦型は相居飛車が多いが、前例の少ない将棋になりやすいと思います」

Img_9699

野月「角換わり系が本線。横歩取りもあるかも。糸谷七段が得意なのでそうなりやすいでしょう。少し前に森内さんに会ったときは糸谷七段のことを『ほとんど分からない』と話していました。糸谷ペースにしたくないと考えているのでは。第1局で外していくのかどうか、どういう立場で向かうか注目したい」

Img_9712

稲葉「糸谷七段は角換わりや一手損角換わりを得意にしています。森内竜王は何でもやります。
二人とも受けの棋風ですが、森内竜王はずっと受けることのできるタイプです。糸谷七段はバランスが取れている。糸谷七段が攻める展開になりやすいと思います」

(取材・書き起こし=銀杏)

Img_9692

■森内俊之竜王
「皆さん、アローハ。私は2日前にこちらに入りましたが、環境もいいところで快適にすごさせていただいております。時差も直って、いい状態で明日を迎えられるのではないかと思います。ハワイ対局で注目を集めて盛り上がっておりますので、皆さんの期待にこたえられるように内容の濃い将棋を指したいと思っています。
タイトル戦は普段はよく知った相手と対戦することが多いですが、糸谷さんとはこれまで対戦したことがほとんどなく、どうなるか分からないということは自分でも楽しみですし、指しながら理解を深めていければと思います。海外対局の機会ですので、地元の皆さんに少しでも将棋を知ってもらえればと思います」

Img_9694

■糸谷哲郎七段
「皆さんアローハ。私はあいさつに入ると、長くて分かりにくいと言われるので手短にしたいと思います。
昨日、領事館にうかがわせていただきました。そこで一つ啓示的な話をいただきました。母の実家が鎌倉でして、鎌倉とハワイはある共通点という話をいただきました。話を縮めますと、日本とハワイは精霊信仰、シャーマニズムという点において共通しています。父方が宮島が実家でして、宗教と縁があるのですが、一神教とシャーマニズムの違いとして、観客に語りかけるか、神に交信するかという話をいただきました。私は中高をカトリック系の学校にいましたが、ミサなどにおいて神父は聴衆に話しかけますが、ハワイや鎌倉に行こうというのは神そのものに話しかける。一種の交信儀式を行うわけです。これは将棋と近しいのではないかと。将棋は哲学では神、世界、真理、存在とある程度同一視される、というと怒られるかもしれませんが。一つの世界そのものが神の代わりである。ニーチェは『神は死んだ』と申しましたが、そういった意味での存在、真理、ただ一つのくつがえしがたいものを神などと隠喩する風習があります。そういう点で将棋はある程度真理を目指す、神の存在ですね。神のメタファーになると思いますが、どこか真理を目指しながら、しかし、神にたどり着かない。ただ、対局者同士は神を目指すという行為ですね。シャーマンも神にたどり着くという行為自体はなしえないわけです。交信することにおきまして、ただ、それを目指す。
というわけで、真理=神に近づけますように将棋を指していきたいと思います」

(書き起こし=銀杏)

香川女流王将と井道女流初段が司会となり、ケーキの上にある詰将棋の解答発表が行われた。解答を知りたい方は、下の部分をドラッグで反転していただきたい。

▲2二銀打 △1四玉 ▲2三竜 △同 玉 ▲1三金まで 5手詰

詰将棋を解いたあとは、盤に入刀。参加者にケーキが配られた。

Img_9686

Img_9689

Img_9691

歓談に入ると、盤を模したケーキを撮影しようと人だかりができた。中庭ではさまざまな料理が出されていたが、一際人気を集めていたのは天ぷらの手巻き寿司。海苔の上にごはんをのせ、とびことわさびが入ったマヨネーズソースを塗り、エビ・カニ・野菜の天ぷらを巻くというものだ。

Img_9637

Img_9639

Img_9640

Img_9641

Img_9643

Img_9648

Img_9655

Img_9652

Img_9664

Img_9679

Img_9673

ガーデンテラスに入っていよいよ前夜祭が開幕。あいさつが続き、乾杯の段になってサプライズがあった。竜王戦開催を記念してつくられた、盤駒を模したケーキだ。盤の上にあるのは詰将棋。腕自慢の方は挑戦してみてはいかがだろうか。

Img_9605

Img_9600

■日本将棋連盟会長 谷川浩司九段
「重枝総領事夫妻もお越しくださり、盛大に開催されることをうれしく思います。九段戦、十段戦、竜王戦と長年にわたりまして、将棋界を盛り上げてくださっている読売新聞社に御礼申し上げます。ハレクラニさんは創業30周年ということで誠におめでとうございます。ハワイ対局ではハワイ支部の方々に大変お世話になりました。野田支部長にはアロハをプレゼントいただきました。
両対局者には、昨日まではイベントに参加していただきましたが、今日一日はフリーで対局に備えられました。18歳差でして、対戦はまだ3局、それも時間の短い将棋ばかりです。長い持ち時間の対局では初手合いのようなものです。不安であり、楽しみな気持ちで臨まれるのではないでしょうか」

Img_9611

■在ホノルル日本国総領事館 重枝豊英 総領事
「昨日はいろんな将棋の話を聞いて、感銘を受けました。初段の免状をいただきました。2006年以来ハワイの対局は久々と承知しています。将棋界の最高峰の竜王戦が開催されること、当地をはじめ、アメリカ在住の将棋愛好家や日本文化に興味を持った方にとって、待ちに待った貴重な機会であります。当地での竜王戦開催をきっかけに、日本将棋をより広く認知され、将棋、文化への興味、理解が深まればと、一人でも多くの将棋ファン、日本ファンが増えますことを期待しています」

Img_9618_2

■シニアライフ協会 坂井諒三 会長
「2008年からハワイ支部の活動に協力して普及の手伝いをしています。微力ですが、協力できること光栄に思います。シニアにとって、いかにスマートに年を取るかが課題です。体の老朽化は防ぐ方法が多くありますが、頭の方を防ぐには将棋や囲碁などが必要かなと。ハワイで将棋を楽しむ人が一人でも増えることを期待しています」

Img_9622

■日本将棋連盟ホノルル支部 野田省三 支部長
「明日からの対局では、ハワイのさわやかな風を皮膚で感じていただきながら、リラックスしていただき集中力を高められ、名局を作ってくださると期待しています。忙しい日程でゆったりしていただけないのが残念ですが、ハワイのよさを味わってくださっていただければ幸いです。国内では、ロサンゼルス、シカゴ、ニューヨークから支部会員の方が駆けつけてくださいました。少しでもご滞在をお楽しみいただきたく思います」

Img_9623

■乾杯
ハレクラニコーポレーション 前田芳則 上席副社長

Img_9627

Img_9632

Img_9633

Img_9635

(書き起こし=銀杏)

18時からはガーデンテラスと中庭を会場にして前夜祭が行われる。棋士が続々と集まる中、ある一角では人だかりが。香川女流王将と井道女流初段がムームーに着替えて来場していた。ムームーはハワイにおいて女性の正装とされるドレス。佐藤康九段も撮影の輪に加わっていた。

Img_9543

Img_9552

(大石直嗣六段=中央は糸谷七段と同じ森門下)

Img_9555

Img_9556

(稲葉陽七段)

Img_9558

Img_9567

Img_9569

Img_9568

Img_9576

Img_9581

Img_9579

17時からは検分が予定されている。早めに対局室に入った糸谷七段は、谷川九段から封じ手のやり方について説明を受けていた。やがて森内竜王が入室。検分が始まった。森内竜王が駒を数枚盤上に出し、並べて具合を確かめる。使う駒は富月師作菱湖書の盛上駒に決定。ブラインドを下ろした状態での明るさを確かめて、検分は終了した。

Img_9468

Img_9470

Img_9473

Img_9475

Img_9480

Img_9488

Img_9493

Img_9496

Img_9506

Img_9511

Img_9513

Img_9519

Img_9527

指導対局を終え、関係者はハレクラニの近くにあるアウトリガーホテルへ移動。レストラン「ショアバード(Shore Bird)」でビュッフェスタイルの昼食をとった。

Img_9466

Img_9465

Img_9453

Img_9455

Img_9463

Img_9457

Img_9461

(ピナ・コラーダ。ラムとココナッツ・ミルク、パイナップルジュースを用いたカクテルだ。村上春樹氏の小説『ダンス・ダンス・ダンス』ではハレクラニでピナ・コラーダを飲むシーンがある。今回はフローズンスタイルのものが出てきた)

ハレクラニからカラカウア通りに出て10分ほど歩くと、クヒオ・ビーチが見えてくる。今日はさわやかに晴れていることもあって、海の美しさが格別だ。近くにはデューク・カハモナク像が建てられており、有名な観光スポットになっている。デューク・カハモナクはホノルルのあるオアフ島出身の水泳選手。水泳・アウトリガー・カヌーの達人で、1912年と1920年のオリンピックで金メダルを獲得している。

Img_9389

Img_9439

Img_9431

Img_9436

Img_9399

Img_9402

Img_9406

Img_9408

Img_9415

Img_9409

Img_9422

Img_9420

Img_9423

Img_9429